むやみな馬力競争よりも、操る速さと楽しみを
ランボルギーニウラカンペルフォルマンテは、最高のパフォーマンス(イタリア語でペルフォルマンテ)を誇る、ウラカンの最新バージョン。先代ガヤルドのスーパーレジェーラに相当するモデルだ。ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェにおけるラップタイム『6分52秒01』。それが、この最新レイジングブルのすべてを物語っている。コンセプトは、むやみな馬力競争よりも、操る速さと楽しみ重視。
ミッドに積まれた5.2L V10自然吸気エンジンの最高出力は、“わずかに”640psだ。ライバルたちが軒並み700ps前後を謳い、ハイパワーサルーンでさえ600psを軽々と超えてくる昨今、スーパーカーの高性能仕様としては控えめな数字だと言っていい。けれども、自然吸気(NA)エンジンであることを忘れてほしくない。NAながら実に420Nmものトルクをわずか1000回転から発するようチューンアップ(ちなみに最大トルクは600Nm)。7速DCTも、そのパフォーマンスに見合うよう最適化されている。
注目は最新空力デバイス“ALA”
もっとも、ウラカン・ペルフォルマンテの見どころは、そんなパワートレーンだけじゃない。空力デバイスにも注目したい。新開発のALA=アエロディナミカ・ランボルギーニ・アッティーバ、アクティヴ・エアロダイナミクス・システムが、空力のキーテクノロジーだ。これは、前後スポイラーに設けられたフラップ(導風板)を動かすことで、空気の流れを大きく変えて、ダウンフォースやドラッグをコントロールするというもの。
外部ダクトがリアウイングのインナーチャンネルに直結、チャンネル内のフラップで空気の流れを制御する。ALAをオフにし、フラップが閉じた状態で発生する最大垂直ダウンフォースはベースモデルの750%増となる
リアスポイラーはもう少し複雑だ。エンジンカウル後端から取り込んだエアをウイングステーの根元にある左右それぞれのフラップを開くことでウイング内に取り込み、ウイング板裏面から吐き出させることができる。リアのフラップはそれぞれがモーターを擁し、左右独立して動かせる。
フラップの起動タイミングは、ハンドル、アクセル、ブレーキからセンシングされた情報をマシンの頭脳にあたる統合制御システムLPI(ランボルギーニ・ピアッタフォルマ・イネルツィアーレ)によって常時解析されており、自動的に決められている。これらを総称してALA(イタリア語で“翼”の意)と名付けた。
ALAオフ=前後のフラップが閉じている場合、スポイラーの働きはその形状どおり、設計最大値のダウンフォースを得る。より安定した高速コーナリングやフルブレーキングが必要なときに、ALAは自動的にオフとなる。
ALAオンでは前後のフラップが開きフロントスポイラーのダウンフォースが減る。インナーチャネルから導かれたエアはというと、車体裏を抜ける。リアではエアがリアウィングステー内のチャネルからウイング裏面へと抜けていく。そうすることでドラッグが劇的に低減され、加速性能が増し、最高速度への到達時間も短くなる、という理屈だ。
リアウイングのフラップが独立制御されていると、さきに書いた。これを積極利用すれば、流行りのトルクベクタリングとして使える。コーナリング中にイン側ホイールのフラップを閉じアウター側を開けることで、より旋回性能を高めることもできるというわけだ。ランボルギーニではこれを“エアロ・ベクタリング”と呼んでいる。
その他、“フォージド・コンポジット”というランボルギーニ独自のSMC成形を採用したCFRP(炭素繊維強化樹脂)を多用して40kgのダイエットを実現したことや、大幅に剛性アップした前後サスペンションシステム、専用チューニングの施された可変ギア比電動パワーステアリング・LDS(ランボルギーニ・ダイレクト・ステアリング)+磁性流体パッシブダンパー、最新世代のESC、専用設計のピレリPゼロコルサ、望めばセンターロック仕様も選べる20インチ鍛造アロイホイール、クロルドリルタイプのカーボンセラミックディスクを持つ強化ブレーキシステム、などなど、ノーマルのウラカンとの違いは山ほどあるから、これくらいにしておいて……。
“エアロ・ベクタリング”を体感。段違いに楽しくて速い
ウラカン・ペルフォルマンテの性能は、いったいぜんたい、どんなものなのだったか。高性能ウラカンを存分に試す舞台として選ばれたのは、世界でも屈指の高速トラック、イタリアのイモラ=エンツォ・エ・ディノ・フェラーリサーキット、だった。アルカンターラとフォージド・コンポジットCFRPで埋め尽くされたコクピットに座る。カーボンシェルの専用バケットシート(オプション)の着座位置は明らかに低く、地面に近い。ハンドルにあるANIMAスイッチを使ってストラーダ(ノーマル)、スポーツ、コルサ(サーキット)とモードを変えてみれば、それに応じてTFT液晶メーターのグラフィックスが変わり、エンジンサウンドも変化する。新デザインの専用エグゾーストシステムはパイプの全長がぐんと短く、まるでレーシングカーのようにリアランプの間から後方へと突き出ている。ほとんど直管仕様に近く、スポーツもしくはコルサで走行中は、劇的なサウンドを高らかに響かせた。
乗り心地はノーマルより明らかに硬め。コンフォートシート仕様では多少マシ、とはいうものの、それでもデートカー向きでは決してないだろう。
コルサ・モードで走り出す。加速フィールは、はっきりとノーマルより強烈だ。軽さを肌で感じる。ブレーキフィールも強力。だからこそ、安心してかっ飛ばせそる。
なにより加速の安定感がすさまじい。みるみる速度をあげ、コーナー手前でフルブレーキをかけると、ぐっと車体が沈み込んだ。ダウンフォースが効いている。面白いのはそこからで、そのままコーナリングを続けていくと、アウト側のオシリを前へ前へと押される、と同時に、イン側だけしっかりとホールドされるような感覚を、自分の腰に感じることができた。その勢いを借りて、コーナー出口に向かってアクセルペダルを踏み始めると、こんどは嫌みのない程度に四輪駆動がパッシブに制御される。ドライバーの意欲を削がない頃合いで、前輪へより多めに、かつ適切な駆動力が配分され、脱出速度がいっそう早まる。
これまで、アヴェンタドールやウラカンに採用されてきたコルサ・モードとは段違いに楽しくて速い。これならもう、テールハッピー系のスポーツ・モードなど要らない、とさえ思った。実際、ウラカン・ペルフォルマンテの場合、サーキットでスポーツ・モードは逆にちょっと危なっかしい。ワインディングロードを控えめの速度でちょっと楽しむ、といった使い方がベストだろう。
ストラーダ・モードでは、すべての応答が素直で扱い易い。それでも、ノーマルウラカンに比べれば十分に速いし、コントロールも楽しめる。
ドライビングモードはストラーダ/スポルト(スポーツ)/コルサの3種類が選択可能。ストラーダはトラクションと安定性を優先、スポルトは後輪駆動よりでオーバーステア気味の挙動に、コルサはサーキット走行でのトップパフォーマンス&ハンドリングを実現する