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月9『コード・ブルー』が高視聴率を維持するワケ

視聴者から大きく支持される人気ドラマ『コード・ブルー』の新シリーズ『コード・ブルー THE THIRD SEASON』、物語はいよいよ後半です。視聴率は回を重ねるごとに下がっているものの夏ドラマのトップを維持。読者が作品に求める魅力やファンの意見が賛否両論に分かれる背景、作品への期待とこれからを考えます。

竹本 道子

執筆者:竹本 道子

ドラマガイド

視聴率から見るTHE THIRD SEASON

ドクターヘリ

 

2008年7月にSEASON1がスタートした『コード・ブルー ードクターヘリ緊急救命ーTHE THIRD SEASON』、たくさんのひとに愛されている素晴らしい作品だからこそ、続編をつくる難しさも見えてきます。物語はいよいよ後半、救命救急センターは、どう成長していくのでしょう。

16.8%のスタートは月9久々の高い数字、回を重ねるごとに少し下がってはいるものの、夏ドラマのトップを維持しながら、期待度、満足度ともに高得点をマークしています。1st SEASONの平均視聴率15.9%や2st SEASONの16.6%と比べると第4話と第5話の13.8%、第6話の13.7%は低い印象ですが、録画やネット配信などで視聴スタイルが変化していることを考えると、過去の作品と比べて視聴率を判断することは、少し違うかもしれません。


THE THIRD SEASONに視聴者は何を求めているのか

「もう一度見たい」の想いにこたえて制作されるのが”続編”。しかし同じ医療ドラマでも視聴者が求めるものは違うようです。

視聴者が医療ドラマを観る理由は、大きく2つ。
(1)ストレスフルな毎日だから、あり得ないドラマを楽しみたい。
(2)忙しいからと日ごろ目を背けている現実や考えるべきテーマを、しっかり受け止めたい。

たとえば『ドクターX ~外科医・大門未知子~』や『ナースのお仕事』はもちろん(1)、あり得ないおもしろさが爽快です。一方『救命病棟24時』や『コード・ブルー』は(2)、生きることに向き合う貴重なドラマを視聴者はじっくり見たいのです。

コードブルーの意味

 

「コードブルー」とは患者の容態急変などで緊急事態が発生した場合に用いられる救急コールを意味します。シリーズが変わっても、コードブルーに直面した現場の緊張感や臨場感が作品の命であることは変わりません。続編であっても、見たいのは医療の現場と、そこで活躍する救命チームの姿です。

前作までは判断を仰ぐ立場だった5人、藍沢耕作(山下智久)、白石恵(新垣結衣)、緋山美帆子(戸田恵梨香)、藤川一男(浅利陽介)、冴島はるか(比嘉愛未)は判断する立場へ。彼らがそれぞれの専門性をさらに充実させ、緊急救命の現場をリードする存在となったたくましい姿に感動し、成長した彼らに訪れる新たな苦悩や迷い、それを乗り越える姿に今を生きるわたしたちは共感する。感動と共感を求めて、続編への想いは膨らみます。

 

物足りない感動と共感

視聴者が期待する「感動」や「共感」は前作に比べてどうでしょう。前作で描かれた医師としての迷い、悔しさ、そして葛藤といった心模様は描かれているものの、掘り下げがやや浅くなり、その代わりなのか、前半では、担当する患者・緒方博嗣(丸山智己)に対する緋山先生(戸田)の恋心や、携帯電話を触る、美容器具を常用するなどマイペースすぎるフェローたちが描かれました。

イマドキの若者として描かれる頼りない灰谷先生(成田凌)、やる気のない名取先生(有岡大貴)、軽さが気になる横峯先生(新木優子)。彼らに知性を感じる部分が見られないことが、視聴者の物足りなさ、違和感に結びついているのかもしれません。未熟だとしても、彼らは医療の現場に立つまでの長い過程を経ているわけで、その軌跡を感じられないのは残念です。

20代、30代、それぞれの年齢につきつけられる問題はたしかにあって、医師としではないところで抱える心の揺れが描かれることは自然なことです。しかし、治療中の患者に対して「タイプ」とこぼしたり、その患者の離婚届けの証人欄にサインするなど、プロの医師としては、やや不用意である印象は否めません。本来なら「医師だって恋もする」と共感できる場面でも、らしくない行動や発言で、視聴者の共感を得るタイミングを失ってしまっては、せっかくの作品が台無しです。

 

それでも「高視聴率」を維持するコード・ブルー

信頼関係は確立しているものの近すぎないメンバー同士の距離感、主題歌、ナレーションなど、コード・ブルーらしい空気にグッときたりホッとしたりできるのが、続編の醍醐味。災害現場や事故現場を支える救命救急チーム以外の活躍が描かれることもコード・ブルーらしさです。

初回、混乱する現場で、藍沢先生(山下)が白石先生(新垣)に「リーダーになれ」と言った言葉が、私は好きでした。教授戦に躍起になっている男たちや足の引っ張り合いなど、リーダーばかりが重要視される風潮のなか、フラットに考えられるチームに若さと新しさを感じるからです。天才ピアニストの天野奏(田鍋梨々花)に対する藍沢先生の躊躇と言葉の選び方は、年月を重ね、見えてきたものの多さから。これも一つの成長と言えそうです。

第6話の臓器摘出の現場では、緋山先生(戸田)が名取先生(有岡)に「この6行は匠くんが17年間生きた証。この一行一行にこれから生きる6人の未来が書かれてる」と担当する書類作成への想いを語りました。歳月の重みと人間として医師として成熟する尊さを感じました。

患者に寄り添えることがうらやましいと言う名取先生に「ひと それぞれでいいんだと思う」と静かに言った緋山先生(戸田)、先輩ナースの冴島(比嘉)の的確な仕事ぶりを目の当たりにし、どこか落ち込む自信家の新人ナース雪村(馬場ふみか)に「倒す相手として不足はないよね。がんばれ」と言った藤川先生(浅利)、頭ごなしではなく、否定するわけでもない、彼ららしいフェローへの接し方、そのエピソードの数々に、いつか、彼ららしい救命救急センターが確立するはずと期待を高める視聴者が多いのではないでしょうか。

 

後半の展開にも期待!

フェローのへっぴり腰やアタフタ具合にいら立つとの意見も多いのですが、それは彼らのフレッシュな演技が素晴らしいから。想えば灰谷先生(成田)のように患者に寄り添うやさしい医師の声を聞いたことがありませんし、横峯先生(新木)のように天真爛漫な笑顔で患者の家族に向き合う医師も見たことがありません。患者や患者の家族に寄り添えるのがうらやましいと言う名取先生(有岡)の素直なことばには、彼の未来が見えます。3人だけが持つ医師としての、キラリと光る何かは、いら立ちを予感に変えています。

好きな作品だから最後までちゃんと見ておきたい、見守りたいと思う気持ちはみんな同じ。視聴率は後半に入っても安定するのではないでしょうか。

物語は、さらに厳しい試練があるでしょう。山下智久、新垣結衣、戸田恵梨香、比嘉愛未、浅利陽介……俳優として実力をつけてきた彼らが全力で演じるコード・ブルーの「今」に、共感し感動できる景色を期待しています。

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