MT-09をベースにネオレトロスタイルを採用したXSR900
バイク業界の動向やデータを掲載している二輪車新聞によると2016年最も売れた400cc以上のバイクは、1位 ハーレーダビッドソン XL1200シリーズ
2位 カワサキ ZRX1200DAEG
3位 XSR900
というラインナップになっています。XL1200シリーズでも人気を牽引しているのはカフェレーサースタイルのXL1200CXロードスターや、ボバースタイルのXL1200Xフォーティーエイトという車両が売れています。
ヤマハでいえばMT-09トレーサーとMT-09を同じシリーズとしてカウントしているようなものなので、一括りにしてしまうのはどうかと思うし、ZRX1200DAEGは生産終了が発表されたことで駆け込み需要に火が付いたと言えます。
そう考えると2016年度に自力で販売台数を伸ばして3位にランクインしたXSR900の人気の高さが伺えます。
シリーズで考えてもベースモデルのMT-09は8位にランクインしていますし、MT-09のバリエーションモデル・MT-09トレーサーも10位にランクインしているので、XL1200シリーズ同様にMT-09シリーズで一括りにしてしまえば、2016年はブッチギリでMT-09シリーズが1位という事になったでしょう。
過去には初期型MT-09、MT-09トレーサー、2017年モデルのMT-09の試乗経験がありますが、MT-09はリリースから時間が立っていることもあり熟成され初期型のスパルタンなイメージを残しつつ乗りやすくなっていました。
今回試乗したXSR900は、ストリートファイタースタイルのMT-09をベースにネオレトロスタイルに作り変えられた車両です。
2014年4月にMT-09が発売開始となり、2015年2月にバリエーションモデルのMT-09トレーサー、2016年4月にXSR900、2017年2月にはMT-09のマイナーチェンジなどMT-09シリーズは毎年何らかの発表をしてユーザーを喜ばせてくれています。
正直、初期型のMT-09とMT-09トレーサーはスパルタンすぎる印象がありましたが、マイナーチェンジした2017年モデルのMT-09は使い勝手が向上している印象がありました。
果たして2016年に登場したXSR900は街中での操作性はいかがなものか?他のMT-09シリーズ同様に一週間通勤で試乗してインプレッションします。
XSR900はクラシックな外観に最先端の装備を採用
XSR900は最近では珍しくなった丸目一灯のヘッドライトを採用し、デザイン的にはクラシックなバイクの部類に入ると思いますが、装備は最先端の装備を纏っています。特に電子制御系の装備は充実しています。
ブレーキをかけたときに車輪のロックを抑制するABS、タイヤがスリップするのを抑制するトラクションコントロールシステム、ワイヤーではなくコンピューターでアクセルの開度を制御する電子制御スロットル、クラッチを軽くしてシフトダウン時に過度なエンジンブレーキを制御してホッピング(リアタイヤがロックする直前に起こる跳ねるような動き)を防ぐアシスト&スリッパークラッチなど、ライダーの操作をアシストしてくれる装備が充実しています。
更に3つのエンジン特性を選択できるD-mode機能は、3つの走行モードを選択することが可能で走行するシチュエーションや、ライダーの好みに合わせることができます。
他のMT-09シリーズにもD-modeは搭載されていますが、それぞれ足回りのセッティングや装備が細かくことなり、若干エンジンのセッティングも変わっているのでXSR900とMT-09では各モードの印象が異なりました。
最近の大型バイクは昔のバイクに比べてクラッチも軽くなってきているので、正直に言えばアシスト&スリッパークラッチの恩恵はあまり感じませんでした。
XSR900のフロントフォークはMT-09と同様に倒立タイプ、リアサスペンションはプリロードと伸び側のダンパー調整ができるようになっていますが、セッティングはMT-09とは異なるようです。
主要装備面で言えばセッティングの変更のみ行われている印象ですが、走った印象はどうか? 他のMT-09シリーズ同様に一週間通勤で試乗しました。
XSR900の走りは硬質でスポーティー
走り出してすぐに感じたのは、前後のサスペンションの硬さ。前後共にMT-09やMT-09トレーサーと比べて硬い印象を受けました。XSR900のリアサスペンションはプリロードの調整が可能だったので、一番柔らかいセッティングにもしてみましたが、それでもやはり他のMT-09シリーズよりも硬く感じます。
シート高が830mmと比較的高めで、ライダーが乗車した状態でもサスペンションが沈み込まないので足つき性はあまりよくありません。車両重量が195kgでこの排気量にしては軽いので不安はありませんでしたが、ストップ&ゴーが多い街中では少々しんどい印象でした。
加速のパンチ感に関しては初期型のMT-09やMT-09トレーサーと比べると若干穏やかな感じです。初期型のMT-09やMT-09トレーサーのAモードやSTDモードは、アクセルを開け始めた時と加速の立ち上がりに若干のタイムラグがあり唐突に始まる加速がスパルタンな印象を強く印象付けていました。
しかし、XSR900や新型のMT-09ではこのタイムラグが無くなりスムーズに加速するため、唐突に立ち上がるような加速感はなく操りやすい印象となりました。
ただ軽量なボディに110PS/9000rpmを出力する3気筒エンジンを搭載していますので、スパルタンなAモードで少しアクセルを強めに開ければ勢いよく加速するので、扱いやすくなったもののエンジンのパワフルさは変わっていません。
サスペンションが前後共に硬いので加速、旋回、制動のどのタイミングでもMT-09と比べると姿勢の変化が少なくシャープに動きます。
新型のMT-09があらゆるシチュエーションで走りやすく進化したのに対して、XSR900は若干スポーティーな走りに重きを置いているといっても良いでしょう。
ただアクセルワークは扱いやすくなりましたし、前後サスペンションのバネレートは街中で許容できないほど硬いわけではないのでご安心を。
XSR900は細かいパーツにもコダワリを感じる
2014年にMT-09がリリースされた際の販売価格は84万9960円、ABS付でも89万9640円でした。MT-09が爆発的にヒットした一因は、このクラスの車両にしてはかなり価格が安かったことが上げられます。しかし外装面など細かいパーツを見ていくと若干チープに見える部分があったのも事実です。
XSR900はそれに対して外装類の素材感にも力を入れているバイクです。アルミ製のタンクカバーは磨きあとをそのまま生かしたヘアライン加工が施され、ボルトやナットのデザインにも拘っています。
結果的にXSR900の価格は104万2200円と高くなってしまいましたが、追加で実装された装備や細かいパーツをじっくりと見てみればむしろ安いと感じるでしょう。
トータルで使い勝手が良くなった進化した新型MT-09、ツーリング性能が高いMT-09TRACER、オーセンティックなデザインとスポーティーな走行性能を持ち合わせたXSR900。
街中を走ることも多い私としては新型MT-09が一番しっくりきますが、MT-09シリーズは主要な用途にあわせて特化した機能を備えた車両が選べるようになったといえるでしょう。
XSR900関連リンク
■XSR900のエンジン音、マフラー音はこちら■MT-09試乗インプレッション
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