ヒップホップを知りたいときに見てほしい名作たち

英語を勉強したいなら、英語の映画を観るように、ヒップホップの映画を観るのもヒップホップを知る良い方法の一つ。とは言え、数多くあるヒップホップ映画の中からどれを観るべきかわからない……という方のために、私がオススメしたい作品の中から10タイトルを選んでみました。シリアスな問題をテーマにしたドラマから、コメディー、ドキュメンタリーなど、タイプは様々。まだ観たことのない方はぜひこの機会にチェックしてみてください。


「ワイルド・スタイル」(Wild Style/1983年)

今もなお、多くの人々に愛され続けるヒップホップ映画の元祖


言わずと知れたヒップホップ映画の元祖「ワイルド・スタイル」。ヒップホップの誕生の地、サウス・ブロンクスに住むグラフィティーライター、レイモンドのアーティストとしての成長過程に起こる出来事を描いた物語。レイモンド役のリー・キュノネス、その彼女役を務めたレディー・ピンクは実際に名を馳せたグラフィティーライターのレジェンドたち。他にもファブ・5・フレディーザ・コールド・クラッシュ・ブラザーズなど、当時のヒップホップ界のパイオニアたちが多く出演しています。撮影はサウス・ブロンクスで行われ、当時の街や人々の様子が存分にわかり、作品のハイライトとなるパーティーシーンからは、まだ生まれて間もないヒップホップが当時の若者たちの心を掴んでいたかが伝わってくるでしょう。この作品に影響を受けたアーティストたちも多く、ナズア・トライブ・コールド・クエストコモンなどが、作中の音声を曲中に使用しています。



「ビート・ストリート」(Beat Street/1984年)

ヒップホップの四大要素を十分に満喫

ブロンクスに住むDJのケニーと、その弟のブレイクダンサー、リーを中心に、彼らの友達や家族、恋人との絆を描いたドラマ。ヒップホップの四大要素である、DJ、MC(ラップ)、グラフィティー、ブレイクダンスが作品にたっぷりと盛り込まれ、当時のファッションや、ヒップホップのパーティー、NYの地下鉄のアートをリアルに感じることができます。ヒップホップの生みの親、クール・ハークアフリカ・バンバータの若かりし姿や、クレイジー・レッグス含む、ロック・ステディ・クルーニューヨーク・シティ・ブレイカーズのブレイクダンサーたちのバトルも必見。これを観たら、80年代のNYにタイムトリップしたくなること間違いなし!


「ドゥ・ザ・ライト・シング」(Do the Right Thing/1989年)

人種差別などの社会的な問題をテーマにした名作


人種差別などの社会的な問題をテーマに、クールかつユニークな作品を作ることで知られるスパイク・リー監督の2作目。リー監督は、自身の作品に役者としても登場することが多いですが、今作品には主役のムーキー役で出演しています。ブルックリンのベッド・スタイバソンという地区を舞台に、ムーキーの友達や恋人、近所に住む人たちに起こる日常と、同じ町に同居する異人種間の問題から生じる事件を描いたドラマ。登場人物はニューヨーカーだけにキャラクターの濃い者が多く、笑える場面もたくさんありますが、最後はアメリカで現実に起こる深刻な問題に向き合うこととなります。エンディングに出てくるマーティン・ルーサー・キング牧師マルコム・Xの言葉もぜひ胸に刻んでいただきたい。


「ハウス・パーティー」(House Party/1990年)

キッド・イン・プレイらが繰り広げるキックステップのダンスバトルに要注目!

80年代後半から活躍したラッパーデュオ、キッド・イン・プレイが主演を務め、大人気を博したコメディードラマ。90年に初回が公開され、その後、2012年の「House Party: Tonight's the Night」まで5回に渡るシリーズとして続いていることからも、根強いHouse Partyファンがいることがわかるでしょう(*キッド・イン・プレイが主役を務めたのは3回目まで)。作品を通して、当時の音楽はもちろんのこと、ダンス、ファッション、ライフスタイルが楽しめます。中でも、パーティーシーンでキッドとプレイの二人と、女友達が繰り広げるキックステップのダンスバトルは要注目。「これぞコメディー!」といった演出も、コメディー映画好きにとってはたまりません!


「ボーイズ・イン・ザ・フッド」(Boyz n the Hood/1991年)

キューバ・グッディング・ジュニアの名演技に涙


キューバ・グッディング・ジュニア
が演ずるトレが、LAのサウスセントラル地区というギャングはびこるタフな環境の中、父の教えを元に真面目に生きようとする様を描いた物語。監督、脚本はジョン・シングルトン。第64回アカデミー賞で監督賞と脚本賞にノミネートされ、史上最年少のアフリカ系アメリカ人監督のノミネートとなりました(当時シングルトンは24歳)。この作品を通して、日本という恵まれた国で生きる我々日本人からは想像するのが難しいであろう、アメリカのストリートで起こっている悲しい現実を垣間見ることができるでしょう。また、キューバ・グッディング・ジュニアの名演技には引き込まれずにはいられません。今作品でスクリーンデビューを果たしたアイス・キューブの姿にも注目です。



「ジュース」(Juice/1992年)

リスペクトは誰の手に!?


NYのハーレムで育つ4人の青年の日常と夢、友情と別れを描いた犯罪サスペンス。今は亡き90年代のラッパー、2パックは今作でデビューを飾り、血の気ほとばしるビショップ役を演じています。主演はオマー・エプスで、クイーン・ラティファやブラック映画にはおなじみのサミュエル・L・ジャクソン、当時のMTVの人気番組「Yo! MTV Raps」のホスト、ファブ・5・フレディーらも出演しています。作品を通して、エリック・B&ラキムによる主題歌「ジュース」を始めとする当時の音楽や、90年代のヒップホップファッション、ヘアースタイル等を楽しむことができます。白熱したターンテーブリストたちによるDJさばきも見ものです。ちなみに、タイトルの「ジュース」はリスペクトを意味しますが、最後にリスペクトを勝ち得るのは果たして誰なのか!?


「8マイル」(8 Mile/2002年)

フリースタイルバトルで栄光をつかめ


99年にアルバム「The Slim Shady」でメジャーデビューを果たし、一躍大スターとなったエミネムが主演(ジミー役)を務めた「8 Mile」。エミネムの出身地でもあるミシガン州デトロイトを舞台に、貧困地区で暮らすジミーの厳しい現実と、ラッパーとして名声を得るため、命をかけてフリースタイルバトルに挑む姿が描かれています。今作品の世界興業収入は、2億4280万ドル以上にも及び、日本国内でも2003年の洋画興業収入で堂々の1位を取りました。2002年にアカデミー賞歌曲賞を受賞した主題歌「Lose Yourself」のイントロを聴くと、この映画でバトルに挑むエミネムの姿を思い出す人も多いでしょう。エミネム自身が持つダークサイドな部分と魂の叫びを感じる演技に心を打たれる作品です。



「ナズ:タイム・イズ・イルマティック」(NAS: Time Is Ilmacit/2014年)

名曲ぞろいの「イルマティック」でナズワールドを体感


90年を代表するラッパー、ナズのデビューアルバム「イルマティック」のリリース20周年を記念して制作されたドキュメンタリー映画。ナズはもちろん、ナズの家族や交流の深い友人らが出演し、ナズの半生についてを語っています。ジャズのトランペッターである父、オル・ダラの影響で、小さい頃から文学や哲学の世界に視野を広げ、ラップを始めたナズ。鋭い観点から捉えたリアリティーや真意をリリックに落とし込み、突如現れた若干18歳の才能に度肝を抜かれた者は多く、ナズは一目置かれる存在となっていきました。今後もヒップホップのクラシックアルバムの一枚として生き続けるであろう「イルマティック」に入っている曲はどれも素晴らしく、今聴いても鳥肌が立つほど。ちなみにアルバムの冒頭曲「The Genesis」は最初に挙げた「ワイルド・スタイル」のあるシーンから始まります。ぜひこの作品を通してナズワールドを体感してください!



「ストレイト・アウタ・コンプトン」(Straight Outta Compton/2015年)

史上最高の興行収入を記録したN.W.Aの音楽伝記映画


80年代半ばに登場し、90年代頭までギャングスタラップの代表的存在として活躍したグループ、N.W.Aの音楽伝記映画。当時、N.W.Aはストリートで起こっているリアリティー、人種差別や警察による虐待などをラップし、大きな社会問題として世間に取り上げられました。92年のロサンゼルス暴動のシーンからは、悲しい記憶や怒りが蘇った人も多いことでしょう。今作品の監督を務めたのは、N.W.Aのメンバー、ドクター・ドレーアイス・キューブ始め、TLCジェイ・Zなど多くのヒップホップアーティストのMV、「フライデー」や「ミニミニ大作戦」などの映画を手がけたF・ゲイリー・グレイ。ドレーとキューブはプロデューサーとして制作に深く携わっており、作品を通して彼らのルーツであるN.W.Aに対する想いが伝わってきます。世界興行収入は201億ドル以上、音楽伝記映画としての興行収入は史上1位を記録し、歴史的作品となりました。



「フレッシュに着こなせ」(Fresh Dressed/2015年)

貴重な写真や映像、アイコンたちの証言とともにヒップホップファッションの歴史を振り返る

Fresh Dressed from Fresh Dressed Movie on Vimeo.

ヒップホップファッションの歴史を知りたいなら、この作品。ディレクターは90年初期にBeat DownやEgo Tripなどのヒップホップ雑誌を創刊し、ラッパー、50セントの ドキュメンタリー映像「50 Cent: The Origin of Me」や、他テレビ番組などのプロデュースを手掛けたサーシャ・ジェンキンス。アフリカ系アメリカ人が奴隷だった時代から最近のファッショントレンドまで、貴重な写真や映像と、その時々で活躍したデザイナー、カニエ・ウエストファレル・ウィリアムスなどのファッションアイコンらの証言を元に、ファッションの移り変わりを知ることができます。カラフルなイラストやコラージュにもこだわりが感じられ、ビジュアル面も多いに楽しめる作品です。ヒップホップを愛するものたちのファッションへの異常なこだわりに対する理解も深まることでしょう。
*「フレッシュに着こなせ」はネットフリックスで視聴可能です。





以上、私がオススメしたい10のヒップホップ映画でした。年代順に並べましたが、是非ご自身の好きなタイプの映画からチェックしてみてください。すでに観たことがある作品でも、また観直してみると、新たな気づきがあるかと思います。この他もオススメしたい映画はたくさんありますが、それはまた次の機会に!
 


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。