熱中症が原因の死亡リスク……なぜ脳梗塞・心筋梗塞・腎不全が起きるのか

熱中症リスク・車内に残された子供

寝ている間にスーパーに? どんなに短時間であっても子どもの車内放置は厳禁です(イメージ写真)

熱中症とは、気温の高い環境などが原因で、体内の水分・塩分のバランスが崩れてしまうことで、体温調節やイオン調節をする機能が破たんしまい、様々な症状が表れる状態です。毎年のように車中での乳幼児の死亡事故などが報道されますが、重症になれば死に至る可能性があります。一方で、これらはほんの少しの工夫で防げる事故です。

詳しくは「熱中症の症状・治療・応急処置」でも解説していますが、熱中症が重症になり、III度の状態になると、血液中の塩分バランスが崩れ、意識がなくなる意識障害、手足が意識と関係なく震えるけいれん、自力で歩けなくなるなどの手足の運動障害が起こってきます。

また、血液中の水分が少なくなることで、血の塊である「血栓」が作られやすくなり、血栓が血管に詰まってしまうと、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、肺塞栓症を起こすリスクも高まります。これらはいずれも命にかかわる病気です。さらに血栓ができることで血液中の凝固因子が消費されて少なくなり、出血傾向を示す播種性血管内凝固症候群を起こすと、様々な臓器に出血を起こし、やはり死に至ることがあります。
 

熱中症の危険レベル……気温だけでなく「WBGT」指数の意識を

太陽

気温が高いと熱中症の危険性が高くなります

熱中症の危険レベルは「WBGT(暑さ指数)」という指数で評価されます。WBGTの正式名称は「湿球黒球温度」と言い、気温、湿度、日差しやその地面での反射したときの熱である輻射熱を取り入れた温度です。
  • WBGT 31℃以上 危険
  • WBGT 28~31℃ 厳重警戒
  • WBGT 25~28℃ 警戒
  • WBGT 21~25℃ 注意
  • WBGT 21℃未満 安全
つまり、WBGT21℃(湿球温 18℃、乾球温 24℃)以上になると、熱中症に死亡事故が起こる可能性が出てきます。そこまで暑い日でなく、まだ許容できるような気温であっても死亡リスクがある、ということはぜひ知っておくべきことでしょう。
 

子どもの車内放置が短時間でも危険なわけ……乳幼児・小学生

走行中、エアコンを使ったり、窓を開けたりしていると気づきにくいかもしれませんが、締め切った車内の温度は、想像以上に短時間で非常に高くなります。

1997年に行われた自動車内の熱中症に関する実験(※1)によると、晴れた日に車の窓を閉め切ると、車外の気温が25~27度の時でも車内の気温はすぐに50度まで上昇し、1時間後に58度、2時間後に62度まで上がったと報告されています。成人が車内座席に座って体温を測ると、平熱の36度は1時間で約38度になり、最も上昇した人で38.7度になったとされています(※1:1997年に行われた阿部裕一先生による実験)。

気温が30度以下であっても、天気のよい日は特に短時間で車内温度が上昇する危険があるのです。大人でも容易に熱中症になることが予想されます。成人以上に体温調節機能が弱い子どもの場合、すぐに高体温になり、熱中症の重症度III度になりやすいことは、容易にイメージできるのではないかと思います。

とにかく、「短時間なら大丈夫」と過信しないことです。車内で子どもが自ら車が出られない状況になると、高温から逃れられずに重症の熱中症になり、死亡事故にもつながってしまうのです。もちろん車内で急激に具合が悪くなってしまった場合、乳幼児に限らず小学生などの少し大きな子供であっても自力で脱出ができなくなる可能性もあります。子供を一人で残さないことです。
 

実は屋外以上に多い室内の熱中症発生件数

熱中症は屋外でのスポーツや屋外での労働中はもちろん、日常生活の中でも、散歩中や自転車での移動中、バス待ち・電車待ちをしている場所などなどでも多く見られます。しかし実は屋内の方が、屋外より熱中症の発生数が多いのです。家の中にいて熱中症になるイメージはないかもしれませんが、熱中症が起こりやすい原因として、以下のような室内環境が挙げられます。
  • 気温が高い
  • 湿度が高い
  • 風が弱い
  • 日差しが強い
  • 照り返しが強い
  • 地面で反射する熱である輻射熱が強い
  • 急な気温の上昇がある
屋内は、ほぼ無風状態になったり、風が弱い環境になりやすいため、急な気温上昇や高温多湿な室内は危険だと考えましょう。
 

熱中症の予防法・対策法……環境づくり・水分補給・服装の工夫

当たり前ですが、暑さを避け、こまめに水分を補給し、服装に注意することです。暑さを避けるためには、屋外であれば、日陰を選んで歩いたり、日傘をさしたり、帽子をかぶったりするだけでも効果があります。屋内なら、ブラインドやすだれを窓に垂らしたり、扇風機やエアコンを使うなどして、快適な環境を保ちましょう。周りの環境の温度に注意するとともに、湿度にも注意しておきたいものです。

そして冒頭に述べた通り、炎天下の車内などは急激に高温になりやすいですので、車内ではエアコンをつける、窓を開けるなどして、車内温度を下げる工夫を忘れないようにしましょう。

また、汗をかくことで体内、血液の塩分は失われていきます。水分とあわせて塩分も合わせて補給するのがよいでしょう。特に運動時の熱中症対策として、塩分を含めた水分補給は重要です。長時間の運動で汗をたくさんかく場合には、0.1~0.2%程度の食塩水(1リットルの水に1~2gの食塩を入れる程度)がよいとされています。冷えた水は内臓の体温を下げてくれますし、胃にとどまる時間も短いので、運動などの水分補給に推奨されています。

服装は通気のよいスタイルで、素材は綿や麻などが勧められます。下着は、吸水性、速乾性のあるものがよいでしょう。

冷却グッズを使うのも1つの方法です。体温が上がってきたと感じたら、大きな血管がある首、脇、足の付け根を冷やしましょう。

また、外出自体の予定を考えることも、熱中症予防には大切です。急に気温の上がる予報がされている日や猛暑日は、不要不急の外出を控えたり、外出の時間帯を工夫するなどして、身体に負荷をかけすぎないようにしましょう。

そして体調が悪いときは熱中症になりやすいので、なるべく日常生活において規則正しい生活とバランスのよい食事、十分な睡眠を取るといった基本的な健康管理も大切です。
 

熱中症になったときの応急手当・対処法

熱中症になった人がいる現場に居合わせた場合、まずは以下の順で対処しましょう。
 
  1. 涼しい場所に移動させる……屋内ならクーラーの効いた部屋へ。屋外なら風通しのある日陰に
  2. 身体を冷やす……衣服を緩めたり脱がしたりして、首、脇、足の付け根を冷やしたり、身体に水をかけたり、団扇や扇子などで風を起こす
  3. 水分や塩分を補給する…スポーツドリンクなどの塩分を含む飲み物で水分補給させる

意識喪失やけいれんが表れるなどの重症な場合は、速やかに医療機関に搬送する必要があります。まずは予防を第一に。万一の場合は適切に対処して、熱中症から命を守りましょう。
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