ロングステイ/ロングステイの形・スタイル

リタイアメント後の海外移住・ロングステイ(2ページ目)

ハッピーリタイアをして海外で悠々自適に暮らしたい。そうした中高年層が増えています。定年後の自由時間をより豊かに「リタイアメント後の海外移住・ロングステイ」を特集します。

千葉 千枝子

執筆者:千葉 千枝子

旅行ガイド

リタイアメントビザを取得して海外に長期で暮らす

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ビザ(査証)は入国のための「推薦状」
海外には、外国人リタイアリーを対象に退職者査証=リタイアメントビザを発給し、積極的に移住を奨励・誘致する国や地域もあります。数次査証(マルチプルエントリービザ)が一般的で、滞在許可期間中は何度でも出入国が可能です。季節を選び、日本と海外とを往ったり来たりする、渡り鳥的な滞在方法をとるひともいます。

許可される滞在期間やビザ名称は、国や地域によっておのおの異なります。例えば、台湾のリタイアメントビザは180日間、タイのロングステイビザは1年間、マレーシアのマイ・セカンドホーム・プログラムは10年間というように、最長期間が定められています。それぞれ延長更新を受け付けており、途中完全帰国もかまいません。こうしたリタイアメントビザ制度を、かつては導入していたが、現在は廃止している国や地域もあります。また、取得のための諸条件は、予告なしに変更されるのが一般的です。

 

リタイアメントビザの取得条件と財政条件

リタイアメントビザの取得にはさまざまな条件があり、いずれもハードルが高いのが通例です。受け入れる国側に不利益を与えないよう、健康面や労働条件、無犯罪性、そしてなにより資金面で厳しい基準を設けています。申請にあたっては、相当の準備期間が必要になります。

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リタイアメントビザ制度のない韓国には医療を目的にした長期滞在ビザがある
スポンサー(身元保証人)ならびに保証金が必要なマレーシア、債券投資を条件にするオーストラリアなど、国や地域によって取得条件には違いがあります。健康診断書や預金残高証明書、所得証明書、無犯罪証明書などの提出を義務付けているほか、現地私費保険(プライベート保険)の加入や政府指定銀行への預金義務など、条件も多岐にわたります。いずれにしても退職者を受け入れるにあたり、最重要視されるのが財政条件です。

リタイアメント・ビザを取得しても、原則、現地で就労することはできません。例外的に、オーストラリアのリタイアメント投資家ビザ、ならびにマレーシアのマイ・セカンドホーム・プログラムは、週20時間までの労働を許可しています。ただし、職種等で制限があります。働かなくても暮らすことができる経済的余裕がある外国人を受け入れるのが、リタイアメントビザの基本ポリシーにあるからです。

【リタイアメント・ビザ制度のある国とその財政条件】(一例)
■マレーシア(マレーシア・マイ・セカンドホーム・プログラム)
50歳以上の場合:保証金15万RMの預金もしくは月1万RMの所得証明
滞在許可期間:10年

■タイ(ロングステイビザ)
50歳以上の場合:保証金80万バーツの預金
もしくは月6万5千バーツないしは年80万バーツの所得証明
滞在許可期間:1年

■フィリピン(リタイアメントビザ)
50歳以上で月800米ドル以上の年金等所得がある場合:保証金1万米$の預金
滞在許可期間:無制限

■オーストラリア(リタイアメント投資家ビザ)
55歳以上で、75万オーストラリアドルの資産提示ならびに6万5千豪$の所得証明、さらに75万オーストラリアドルの債券投資(都市圏の場合)
滞在許可期間:4年

■台湾
55歳以上で、5万米ドル以上の資産提示
滞在許可期間:180日

※(2009年6月現在)リタイアメント・ビザの取得条件は予告なしに変更されることがあります。詳しくは、各国大使館査証課もしくは政府観光局のホームページを参照してください。

ノービザや観光ビザで滞在するロングステイ

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ハワイのコンドミニアムで90日以内の暮らしを楽しむ
一般には、観光や短期商用目的の無査証(ノービザ)滞在や、観光ビザを取得して海外でロングステイをするひとが大半です。査証相互免除協定の締結国であればノービザ滞在となり、それ以外の国や地域では観光ビザを取得して滞在することをさします。いずれも入国審査時に、パスポートのほか復路航空券を提示するのが条件で、一般の海外旅行の入国審査と同じ手続きをとります。

なかにはタイのように、いったんノービザ(30日間)で入国し、後日、現地で観光ビザの申請をして90日間の連続滞在をするひとや、最長6ヵ月のノービザ滞在が可能なカナダの場合、予め十分な滞在資金があることを書面で証明して滞在許可を得るケースもあります。リタイアメント・ビザの制度がない米国ハワイ州の場合、90日間を上限にノービザ滞在をするのが一般的で、税法上の理由から年間183日を超えない範囲で、日本と往き来をしています。移住や永住ではなく、ロングステイで暮らしを楽しむスタイルです。

ノービザや観光ビザでの滞在は、ツーリスト(旅行者)というビザ・ステイタスになるため、一般の賃貸物件が契約しづらいなど、一部制約もあります。ローカルのひとたちが得られるサービスが受けられなくても、付加価値税の還付請求(リタックス)が可能になるなど、ツーリストとしての恩恵を受けることができます。とりわけ高額な資産の移動や提示、当地での納税義務などをともなわない点で、気軽な滞在ができるのです。
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