大きく使いやすい人気の“ファミリーカー”
海外では「カントリーマン」という、“昔ながら”の名前で呼ばれているミニのクロスオーバー。由緒ある、そして、響きのいい名前を日本で使うことができない、というのは甚だ残念なハナシ。“クロスオーバー”だなんて、味も素っ気もないネーミングだけれど、今やミニラインナップの主力を張る名前として、すっかりお馴染みになった。11年の日本発売以来、この“家族で使える”ミニは、一躍、人気モデルとなった。好きというだけでは買えなかった存在であったのが、より高い実用性を手に入れて、購入へのハードルもグッと下がったからだった。もっとも、この先代は、あくまでも当時のR50系ミニの拡大版(R60)で、ベースとなったミニよりもビックだったとはいうけれど、欧州のセグメント的にはB+の領域に留まっていた。
ボディサイズは全長4315mm×全幅1820mm×全高1595mm。ラインナップはFFのクーパーD(393万円)、4WDのクーパーD ALL4(421万円)とクーパーSD ALL4(493万円)、プラグイン・ハイブリッドのクーパーS E ALL4(479万円)、ハイパフォーマンスモデルのジョン・クーパー・ワークス(556万円)
新型クロスオーバーは、“大きなミニ”だった先代よりも、さらに長く(195mm)、高く(45mm)、幅広く(30mm)、そしてホイールベース(75mm)も広がった。結果、ディメンジョン的にもみても今や立派な欧州Cセグカー、つまり、VWゴルフと同等のクラスとなっている。もちろん、ミニ史上最大級(笑)だ。
17年3月に日本で発表された新型クロスオーバー。日本仕様としては4つのグレードがラインナップされている。注目すべきは、プラグイン・ハイブリッドのオール4(4WD)モデルを設定したことと、それ以外はディーゼルエンジン搭載車のみとしたこと、だろう。前者についての詳細な報告は、秋の日本本格導入まで待たなければならないが、後者の、最も売れセンになるであろうFFのクーパーDを、今回、ひとまず試してみることに。ちなみに、その他のグレードは、いずれもオール4で、150馬力のクーパーDと190馬力のクーパーSDがある。トランスミッションは全グレード、8ATだ。
いわゆる“MINIの走り”ではないけれど…
DとSDには2Lディーゼルターボを搭載、Dは最高出力150ps/最大トルク330Nm、SDは190ps/400Nmとなる。プラグイン・ハイブリッドは136ps/220Nmの1.5Lターボに88ps/165Nmのモーターを組み合わせている
はたして、その力強い走りはホレボレとするものだった。8ATとの組み合わせも抜群で、大きくなったカラダをものともせず、ぐいぐい加速する。しかも、荒っぽさは微塵もなく、スムースだ。アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで、もう十分。あまり踏み込まずに走れるあたりも、ディーゼルの魅力。大きくなって、いろいろと対策ができたのだろう、静粛性も格段に高まった。
要するに、煩い音や煩わしい振動といったディーゼルのネガはまるでない、それでいて、過去のマルチシリンダーガソリン車級の動的パフォーマンスをみせてくれるのだから、文句のつけようもない。
全体的な走りもまた、最新のハッチバックモデルと肩を並べるもの。適度なロールをともなって、ドライバーにクルマの状況をハッキリと伝えてくれる。実に頼もしい。BMWのFFも経験を積んでずいぶんと洗練されてきたようにも感じられた。
JC08モード燃費はクーパーD 21.2km/l、クーパーD ALL4 21.3km/l、クーパーSD ALL4 20.8km/l、クーパーS E ALL4 17.3km/l(EV走行は最大約40km)