築11年を経ても変わらない家
設計コア 越賀克郎さんの建築実例
2006年に東京・大田区に完成した、3階建ての集合住宅「パルマーレ」。東西に約30mに横たわる変形の敷地に建つ、2層の9戸の賃貸住戸と最上階にオーナーの住まいを併設したコンクリート造の堅牢な低層住宅です。今から11年前、オーナーのNさん夫妻は住み慣れたこの地に永く住み続ける事を考え、知り合いの不動産屋から設計コアの越賀克郎さんを紹介されました。そこで川崎市にある集合住宅「バナナコート」を見学され、越賀さんの作風に共感し設計を依頼されました。
生け垣の緑で地域に貢献する集合住宅
煉瓦タイルを敷き詰めたアプローチの奥に、高さ約10mのコンクリート打放しの壁が立ち上がる。 |
ガラスとコンクリート打放しによるシンプルなデザインの入口。 |
9戸の賃貸住戸のアプローチにはアイビーが敷き詰められている。2箇所あるスリット状の階段スペースから各住戸にアクセスする。 |
北側の隣地との間には背の高いシラカシの背生け垣が植えられている。 |
最寄りの私鉄の駅から、住宅地と商業地が混在する街角を10分ほど歩くと、道路に面したアプローチの奥に高いコンクリートの壁が立ち上がっているのが見えます。これは「パルマーレ」の東側の壁で、ここから西側に約13mの奥行きを持つ集合住宅が伸びています。
この壁は、越賀さんが左官業者と共同で「パルマーレ」のために開発した「リサイクルガラス骨材の洗い出し仕上げ」になっています。これは従来のコンクリート打放しよりも耐久性を伸ばし、打放しのコンクリート壁に同じ無機の透明感のある左官壁が合うことを意図した仕上げなのです。
敷地の北側は賃貸住戸のアプローチで、隣の公園との間には背の高いシラカシの生け垣が緑のフェンスとなって葉を繁らせています。これは公園からの住戸への視線を遮るだけでなく、工場等も多い羽田の地域に緑を提供する役割も担っています。
玄関を介して繋がる前庭と中庭
シャラやイロハモミジやミモツケなどの植栽に囲まれた玄関のアプローチ。 |
玄関からアプローチを見返す。足元の飛び石は以前の家のものを再利用している。 |
大きな収納と室内エレベーターのある玄関ホール。床は30cm×60cmの大判タイル張り。 |
玄関から見た中庭。足元は玄関ホールと同じ大判タイル張り。 |
中庭の北側からリビングを見る。屋根の上には太陽光発電のパネルが設置されている。 |
この建物の3階にオーナーのNさんの住まいがあります。エントランスポーチから外階段を昇りきると、やがて鉄の門扉の先に、豊かな植栽に囲まれた落ち着いた雰囲気の玄関アプローチが現れます。
室内用エレベーターのある広い玄関は大振りのタイル張りで、西側に続く中庭にそのまま続いています。大きなガラス窓を開けば中庭と一体の空間になります。
中庭にはシャラやサンショウやオリーブが植えられ、Nさん夫妻の目を楽しませてくれます。
生活の中心となるワンルームのLDK
リビングから中庭を見る。床はオーク三層フローリング。 |
ダイニングからリビングを見る。窓の上の庇状の張り出しが空間に奥行きを与える。テレビ台を兼ねた6mに渡るカウンターは厚さ1cmの強化ガラス製。 |
中庭からリビングを見る。アートが飾られた壁の裏には書庫が控えている。 |
南側のダイニングとキッチン。ダイニングテーブルはイギリスの建築家デビッド・チパーフィールドのデザイン。 |
厚さ25cmのコンクリートの構造壁で仕切られたキッチン。背後は造り付けの収納。 |
シンクとレンジとオーブンがコンパクトに納められた造り付けのキッチンカウンター。トップは厚さ1.2cmのコーリアン(人工大理石)。 |
Nさん夫妻が日常のほとんどの時間を過すのは、約30帖のワンルームのLDKです。天井高が約2.7mもあるフローリングの大空間で、イタリア製の大振りのリビングセットが北側の窓に沿ってゆったりと配置されています。ホテルのロビーのように、広くても落ち着ける空間になっています。
南側にはキッチンとダイニングが配され、窓から降注ぐ日射しが室内を明るく照らしています。
南向きの明るいサニタリー
ガラスの壁とドアが洗面室とバスルームを仕切る。 |
トップライトの付いた物干し場を兼ねたサンルーム。窓を開けるとバルコニーが現れる。 |
書庫の奥のトイレ。手洗いが付いた造り付けのカウンターが窓の前を横切る。 |
和室に至る廊下。窓には障子がはめ込まれている。床はヒノキのフローリング。 |
半畳の縁なし畳が敷かれた10帖の和室。床柱は桧材の絞り丸太。障子窓の下にはオイルヒーターが仕込まれている。 |
キッチンの奥にはバスルームが続いています。こちらも南側に窓のある明るい空間です。バスルームにはトップライトのある物干し場を兼ねたサンルームから洗面所を経て入ります。サンルームと洗面所とバスルームはガラスで仕切られていて、明るく清潔感にあふれた一室空間になっています。
玄関ホールの東側には障子のついた廊下が伸び、その奥に10帖の畳敷きの和室が控えています。ここは仏間とご主人の趣味室を兼ねた「離れ」なのです。
築11年を経ても完成当時と見間違えるほど美しく住み続けられておられるNさん夫妻。その変わらぬライフスタイルには、永く暮らせる豊かな生活の場を提供するべく全力で設計に当った越賀さんも、勇気づけられることでしょう。
[パルマーレ] | |
所在地: | 東京都太田区 |
構造・規模: | RC造 地上3階 |
竣工年月: | 2006年2月 |
敷地面積: | 422.67m2 |
建築面積: | 235.06m2 |
延床面積: | 573.62m2 |
設計・監理: | 設計コア/越賀克郎 |
設備設計: | セグ設計事務所 |
越賀克郎[設計コア]プロフィール
「限られた土地、建物又は既存のマンションでも、その中で色々な住まい方はできるはずです。同じ面積、同じ予算でも、楽しく健康に住まい続ける事ができるはずです。そんな工夫、提案をしていきたい」をモットーに、自分なりの生活を健康的に過せ、楽しく住み続けられる住宅の実現を目指して、設計活動に励むベテラン建築家です。・関連記事:越賀克郎[設計コア]
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越賀克郎 [Koshiga Katsuro] |