一物多価の代表格ともいえる土地価格。公示地価に基準地価、路線価、固定資産税評価額、そして売買の相場価格。すべてがバラバラの状態になっています。

公示地価や基準地価、路線価などは土地価格の「傾向」をみるのに役立つもので、私自身も毎回記事で取り上げていますが、これらは実際の売買相場を表すものではありません。

いうまでもなく土地は個別性の強いものであり、売買価格を評価する際にもさまざまな要因を勘案することが必要です。

とくに、近年は土地の二極化や個別化が顕著になり、同じ限られたエリア内でも価格が上がる土地と下がる土地が存在するなど、価格形成要因はますます複雑化しているといえるでしょう。

「土地価格は公示地価と路線価に売買事例を組み合わせた計算式で、誰にでも簡単に導き出すことができる」というような説明がされる場合もありますが、実際のところはどうでしょうか。

確かに売買事例が少ないエリアでは公示地価や路線価も参考にしますが、机上の計算による価格ではなかなか売れないのが土地の世界。回りの土地が「この価格で売れた」からといって、それがストレートに反映されるものでもありません。

たとえば、近くの土地が1坪あたり100万円で売れたとしても、これから売ろうとする土地のお隣が、今にも○○の出そうな環境だったり、小さな地震でも倒れかかってきそうなほど老朽化した家屋だったりすれば、坪50万円でも買い手が現れないことも考えられます。

売り出す土地そのものには問題がなくても、隣地が崩れてきそうな地勢であれば、そのリスクや対策費用を見込んだ減価も必要でしょう。

「誰にでも明快に分かる土地価格」というのが理想であることに間違いはないとしても、現状では回りがすべて平坦で、道路条件も同じで、土地の形も同じで、周囲の環境なども同じであって初めて成り立つことでしかないのかもしれません。

もちろん「勘」だけに頼ることがあってはなりませんが、個別の条件による価格(売買が成立する価格)に修正していくためには、ある程度の経験とそれなりの「勘」が必要なケースもあるでしょう。残念ながら「土地価格は誰にでも分かる」というわけにはいかないようです。

その一方で、近年は不動産価格の分析にもIT技術の活用が急速に進んでいます。近い将来には「勘」の出番がなくなることも考えられるでしょう。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年9月公開の「不動産百考 vol.3」をもとに再構成したものです)


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