名付けで「咲」を「サ」と読ませるのは変?
咲をサと読ませてもOK?
A: 一般に当て字とは、間違った読み方の名前をさします。咲は訓読みで「さく」ですから「サ」と読むこと自体は間違いではありません。
ただ名前は、読み方が正しいことはもちろん最低必要ですが、正しくても他人に読みにくい名前もあるということもお気をつけ下さい。
名前は漢字の訓読みも使えるが、咲は特殊な字である
咲の字が名前に使われる頻度は、2016年は25位で、かなり人気のある漢字と言えます。数年前までは1字名前で使われることが多かったのですが、最近は他の字と組み合わせる2字名前が多くなっています。ただこの字はある意味で特殊な字です。まず漢字でありながら中国人は使わず、辞典にも載っていません。日本では日常よく使われ、誰しも花がさくことだとわかりますが、音読みはあまり知られておらず、載せていない辞典もあります。いったいどういうことなのでしょうか?
実は咲の字の右の部分は「笑」の変化したものです。口と笑を合わせた咲の字は、本来は口をあけて笑うことだったのです。ただし日本でも中国でも、わらうと言えば口の無い「笑」の字ばかりが使われてきました。
咲の字は中国ではとうの昔に廃れ、日本では古代に「花わらふ」などという表現があったため、混同が起きて咲の字が「花がさく」という別の意味になってしまったのです。ちなみに中国では花がさくことは「開」と書くわけですが、開の字のほうは日本でもその意味でよく使われます。
つまり咲の字の本来の意味は「わらう」「えむ」で、音読みは笑の字と同じ「ショウ」です。ただ今の日本の辞典では本来の音や意味を載せていないものも多いのです。ちなみに武井咲(えみ)さんというタレントの名は、今の日本の辞典には無い読み方ですが、古代の意味は表しているわけです。
漢字の読み方は意外なこともある
名付けの際には正規の辞典で漢字の読み方を調べることは大事で、意外なことにもよくぶつかります。名前でよく使われる字を例にあげますと、たとえば「佳」は誰しもケイと読みたくなる字ですが、辞典にその読み方はありません。また「大」でト、「清」でサヤ、「柊」でトウという読み方も辞典には載っていません。
ところでこの数年、「大翔」と書いてヒロトと読む名が大人気ですが、この翔は本当にトと読むのでしょうか? この字はかつて「翔ぶが如く」という小説、「かもめが翔んだ日」という歌、「翔んでる寅次郎」という映画などが広く知られた後に、昭和56年に人名用漢字に加えられ、多くの人が「とぶ」と読む字だと思いこんでしまったものです。
ただ字の意味は確かに派手に飛ぶことであり、今は一部の辞典では「とぶ」という訓読みも載せています。