親の「大丈夫?」という言葉は果たして有効なのか?
親の「大丈夫?」という質問に「大丈夫じゃない」と言える子は少ない…
いじめや自殺などのニュースが流れると、毎回のように、「なぜ親は気づけなかったのか」ということが話題になります。親の「大丈夫?」は、子どもの心の訴えを聞くのに有効なのでしょうか?
子供の家庭外での悩みが急増し、過去最多に!
文部科学省の「児童生徒の問題行動等 生徒指導上の諸問題に関する調査」によれば、2015年に全国の小学校が把握したいじめは、前年度より約2万8000件増え、約15万1000件。中学校、高校、特別支援学校も含めると、約3万6000件増の約22万5000件でした(1985年度以降で最多)。また、不登校だった小中学生は、約12万6千人(不登校の定義:年30日以上の欠席)。1千人あたりの不登校の人数は12.6人となり、1991年度以降で最多となりました。
これらのデータは、子供たちが学校や友人関係など、家庭外の場所について悩む傾向が、過去最大のレベルにまで達していることを示しています。
「大丈夫?」という声掛けに頼り過ぎてはいけない
いじめ、不登校、それを苦にした自殺……。これらの問題が明るみに出ると、「家庭でなぜ気づけなかったのか」という声が上がります。「もっと早く察知していれば」「親は何をしていたのか」と強い言葉も飛び交います。一方、親は、「大丈夫?」と聞いたら、子供が「大丈夫」と言っていたので、それを信じていたと言います。
たしかに、子供の気持ちを信じることはとても大切なことですが、大人が「優しい嘘」をつくように、子供も本音では話せないこともあります。実際には、「大丈夫?」と聞かれて、「大丈夫じゃない」と言える子の方が、少ないかもしれません。
2014年に起きた、仙台市の男子生徒のいじめを苦にした自殺。それを調査している専門委員会でも、「もし子供が『大丈夫』と言っても、周りの生徒にそれとなく話を聞くなどの対応をとる必要がある」という見解を示しています。学校側の対応もそうですが、親も、「大丈夫なの、何かあった?」だけで済ますのは危険です。とくに親は、自分が安心したいがための「大丈夫?」になっていることがあるので、その言葉に頼り過ぎないようにしたいところです。
こういう家庭環境だと子供は弱音を吐きにくくなる
「大丈夫?」を乱用しないことも大事ですが、それと並行し、子供が、「大丈夫じゃない」と弱音を吐ける家庭環境を作る心がけも大切です。子供の問題が深刻化してしまう大きな要因は、子供自身がそれを閉じ込めようとしてしまうから。
なぜなら、
「弱い自分を知られたくない」
「言っても解決にならない」
という心理が働くからです。とくに、親が子供に“いい子ちゃん”でいることを強調した子育てをし、その子の自己肯定感が十分発達していないと、この傾向が高まります。
「親が託す子供への期待感」というのは、時に皮肉に働きます。親は、自分の子が、出来がよくて、優しくて、協調性があって、リーダーシップがあって……といいところが満載だったら嬉しいものです。しかし、その思いが強くなり過ぎて、「いい子ならOK、悪い子はダメ」をインプットするようなほめ方や叱り方をしたり、子供の出来不出来で、あからさまに態度を変えたりするようになると、途端に子育ては悪循環に陥ります。子供は自分のことを二分化して考えるようになり、
「パパやママは、“いい子”のボクが好きなのだ」
「だから、親の前ではいい子でいなくてはいけない」
「悪い部分を見せたら、受け入れてもらえない」
と考えるようになってしまうのです。本来なら、親だけには、弱音を吐ける環境が望ましいのに……。
「大丈夫じゃない」と言うには、高い自己肯定感が必要
弱音を吐ける子というのは、自分のことを全体的に肯定しています。いいところ悪いところ、得意なこと苦手なこと、それがあって「ボクなんだ」という包括した自己感が育っていることが、こういう場面で非常に大事になってくるのです。親の接し方は、子供の自己肯定感に大きく影響を及ぼします。その子の頑固なところ、気が強いところ、いざというときに逃げてしまうところ、あきらめが早いところ……こんな「ちょっと困っちゃう…」というような部分こそ、親が受け止めてあげるべきポイントです。それを親が無理に抑圧したり、排除しようとしてしまうと、子供も自分の一部を蔑視するようになってしまいます。
親がその子の個性を丸ごと受け止めてあげることで、その子は自分の弱い部分も認めてあげられるようになり、“大丈夫じゃないこと”を素直に吐露しやすくなります。しっかりした自己肯定感を育むことが非常に大事なのです。
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