実咲凜音の魅力
(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ
近年のトップ娘役の中では抜群の歌唱力の持ち主で、エトワールは4度も経験し、ショーでも一人で歌う場面が多かったです。中でも、『シトラスの風』や、実咲凜音ミュージック・サロン『Million Carat!』で披露した『ジャンニ・スキッキ』のアリア、「O mio babbino caro」の伸びやかな歌声は、鳥肌が立つほど素晴らしいものでした。
役に合わせて歌声のトーンを変えたり、台詞から歌へのチェンジも自然。自由自在に音を奏で、どんな高音を出しても、歌っている顔は涼しく美しく、まさに歌姫。『王家に捧ぐ歌』や『エリザベート―愛と死の輪舞―』といった、娘役が歌う比重のとても高い作品が上演できたのも、実咲さんの歌唱力あってのことでしょう。
宝塚では男役が主演をすると決まっていますが、原作では、または外部の舞台では主役となるマリー・アントワネット、アイーダ、エリザベートなどの大役を次々と演じたのも、特筆すべき点。スレンダーな体形ながら凛とした姿で、堂々とパワーあふれる舞台を作り上げました。
明るくて爽やかで、可愛らしい役から大人の役まで何でもござれの娘役ですが、演じるどの女性にも、優しさと気品がありました。そしていつも感じるのが、丁寧できめ細やかな演技。だからこそ男役たちが、より豪快に演じる事ができるのでしょう。
花組時代に芽を出し、演技巧者、凰稀かなめさんに育てられ、旧知の仲、朝夏まなとさんと共に大きい花を咲かせた実咲凜音さん。誠実に咲かせた花は実となり、後進という若い芽も育てました。
清く正しく美しく――。実咲凜音。そのままの娘役でした。