建築家・設計事務所/建築家住宅の実例

光に溢れる3階建て4層の家[4層の家]

南北は隣家が迫りながらも東西に抜けの良い敷地に建つ狭小住宅です。3階建てのボリュームの中に天井裏収納設けて4層の空間を生み出しています。さらに、全体を北側に寄せて南側にトップライトのある階段室を造ることで、東西と上下の抜けの効果により豊かで快適な室内を生み出しています。

執筆者:川畑 博哉

この家の建て主のSさんは、建築設計会社でインテリアデザインを専門とするデザイナーです。今から8年前にマンション住まいから自邸を建てることを決め、道路を挟んで大きな団地と向かい合う正方形に近い約16坪の土地を購入しました。
希望を託せる建築家を探していたところ、共通の知り合いを介して建築家の余田正徳さんを知り、その作風に共感して自邸の設計を依頼されました。


天井高3mの玄関ホール

外観
モルタル塗装仕上げの黒壁とガルバリウム鋼板の組み合わせによるクールな印象の外観。ガレージの天井高は1.7m。
導入部
敷地の南側を走る御影石のアプローチ。奥の玄関は地面から50cm上がっている。
玄関
天井高約3mの玄関ホール。東側の洗面所の北側にユニットバスのバスルームが続く。
玄関
2階へ続く階段。踊り場の右手には、ガレージと2階のLDKとの間に天井高1.4m、広さ約8.7帖の広い収納スペースがある。
玄関
2階のLDKへ続く階段。上がりきった先には室内に光と風を呼び込む縦長の片開きのガラス戸が待っている。

西側の正面は世田谷通りの抜け道に面し、東側は桜の樹のある広い空き地、南北は同じ大きさの隣家が迫るという立地に、黒い壁と銀色のガルバリウム鋼板が印象的なSさんの家が建っています。家の全体を北側に寄せて南側に空きを生むことで、東西の抜けを最大限に活かした配置になっています。
玄関は南側のアプローチの奥にあります。室内に足を踏み入れてまず驚かされるのが玄関ホールの約3mという天井の高さです。西側は踊り場から折れ曲がって2階へ続く階段に、東側は洗面所とその奥は洗濯機置場とユニットのバスルームに続いています。
小さな住宅に快適に暮らすには大きな収納スペースの確保が課題になりますが、Sさんの家はガレージと2階のLDKとの間に挟まれた、天井高1.4m、約8.7帖の広い天井裏収納によりこの問題を解決しています。ここには西側の階段の踊り場から入ります。


2階はワンルームのLDK

階段
南側の階段室から入る自然光がリビングを明るく照らす。
居間
正面壁際にトップライトが付いている。北側の天井は折れ上げになっている。
居間
北側斜線で傾いた壁とその足元を走る高さ55cm、奥行き62.5cmの収納カウンター。上部は間接照明のついた折れ上げ天井になっている。

2階は約14帖のワンルームのLDKになっています。天井高は2.2m。収納力のある造り付けの低いカウンターが伸びる北側は、天井が折れ上げになっていて、圧迫感を視覚的に解消する効果を発揮しています。
ソファが置かれた西側の壁には防音のためにあえて窓を設けていません。ここは家族全員がいちばん寛げるスペースになっています。
階段室のある南側は、3階のトップライトを通して降注ぐ自然光が室内を明るく照らします。ソファの上の天井にも小さなトップライトがあり、ここからも自然光が室内に入り込んできます。


2階の室内の3割を占めるキッチン

台所
広い空き地に面した東側に大きく窓を空けたキッチン。シーリングエアコンが部屋のほぼ真ん中に設置されている。
台所
シンクが独立したアイランド型のキッチン。向かい合う窓際のカウンターの奥にはIHクッキングヒーターが付いている。
台所
冷蔵庫の隣の収納は、北側斜線で低くなった空間を活かしたパントリーになっている。床は磁器質タイル

キッチンは2階のほぼ3分の1を占める広さがあります。奥様が料理教室を開くことを想定して、東側のカウンターの向かいには独立したシンクのついたアイランド型のカウンターが造られています。
東側に大きくとられた窓からは自然光が入り込み室内を明るく照らします。さらにここからは裏手の駐車場の奥行きのある風景を眺めることができます。桜の季節には居ながらにして借景で花見を楽しむ事もできるのです。


ベッドが一列に並ぶ3階の寝室

階段
階段
柱には2人のお子さんの成長の記録がドットでデザインされている。
寝室
階段室のトップライトを見上げる。階段も抜けのある設計になっている。
寝室
南側に窓のあるサンルームのような3階の寝室。写真:power photo ? Ryota Atarashi
寝室
袖壁で仕切られた家族の寝室。天井に付けられたロールカーテンで間仕切ることもできる。写真:power photo ? Ryota Atarashi

3階は階段室の上部がトップライトになったサンルームのような部屋です。壁が傾いている北側は2枚の袖壁で3つに仕切られ、家族それぞれの寝室になっています。吹抜けの階段室に面した、明るく開放感に溢れた気持ちのよい空間です。
育ち盛りの2人子供達は、この家の中を遊び場のように走り回っています。Sさんの家はこれからも子供達の成長を見守るように、大切に住み続けられていくことでしょう。

[四層の家]

余田正徳+余田樹子[YODAアーキテクツ]プロフィール

「クライアントとのコミュニケーションを密にとり、敷地の周辺環境を充分に読み取り、街並みの風景に溶け込み、建築の内外の多様な関係性を考慮し、竣工後に起こり得る変化に充分に対応出来る懐の深い設計」をポリシーに、これまでに数多くの住宅を設計してきました。
     YODAアーキテクツ
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     余田正徳 [YodaMasanori] 余田樹子[Yoda Motoko]

所在地: 東京都世田谷区
構造・規模: 木造 地上3階
竣工年月: 2010年6月
敷地面積: 55.00m2
建築面積: 32.84m2
延床面積: 86.22m2
設計・監理: YODAアーキテクツ/余田正徳
Tel.03-5941-8587
http://yoda-archi.com
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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