カフェ/三軒茶屋・駒沢・下北沢・荻窪のカフェ

東京茶寮で日本茶ハンドドリップを初体験(三軒茶屋)

2017年1月、三軒茶屋という地名にふさわしい、日本茶の愉しみを革新的なスタイルで提案するカフェが誕生しました。スペシャルティコーヒーの世界観を日本茶に導入し、独自に開発したドリッパーを用いて、バリスタがお客さまの目の前で一杯ずつ煎茶を淹れ、日本各地の茶葉の豊かな個性を楽しませてくれます。

川口 葉子

執筆者:川口 葉子

カフェガイド

 世界初、バリスタが日本各地の煎茶をハンドドリップする「東京茶寮」

日本茶用ドリッパーを独自に開発

日本茶用ドリッパーを独自に開発


2017年1月、三軒茶屋という地名にふさわしい、日本茶の愉しみを革新的なスタイルで提案するカフェが誕生しました。スペシャルティコーヒーの世界観を日本茶に導入し、独自に開発したドリッパーを用いて、バリスタがお客さまの目の前で一杯ずつ煎茶を淹れてくれます。

伝わってくるのは日本各地の茶葉の豊かな個性と、新たな視点で捉えられた日常のお茶の楽しみかた。

二極化するお茶の世界。両極をつなぐ存在として

メニューとドリッパー

メニューとドリッパー


LUCY ALTER DESIGN取締役、クリエイティブディレクターの谷本幹人さんは「お茶は毎日ひろく飲まれるものですが、ペットボトルか茶道かに二極化している」と指摘します。たしかに、自宅に急須を持たない人々が増えていますね。

「二極化した真ん中の部分にあたる『日常にお茶を淹れて楽しむという上質な体験』に可能性を感じ、デザイン会社としてできることがあると考えました」

東京茶寮の斬新な提案は、従来のお茶のルールや常識にとらわれていないからこそ発想できたもの。日本茶業界の反応も良く、異なるフィールドからお茶の世界を拡げる新たな試みとして期待されているようです。

インテリアや抽出器具は国産の自然素材

東京茶寮店内

ミニマルな茶室の美にも通じる東京茶寮の店内


シンプルでスタイリッシュな空間の主役は、北海道産の無垢材で造られたコの字型カウンター。その中心にバリスタが立ち、わずか9席だけの椅子に座ったお客さまのために、一杯ずつ湯温と抽出秒数を注意深くコントロールしながら煎茶を淹れていきます。

メニューは潔くひとつに絞られており、選べる煎茶2種類とお茶菓子のセットを提供。対照的な2種類を飲み比べることで、個性の違いがくっきりと認識できるのです。

7種類ほど用意されている茶葉は、日本各地から仕入れた単一農園、単一品種のシングルオリジン煎茶。「はるもえぎ」や「こいしずく」など、イメージをかきたてる名前に惹かれて選ぶお客さまも少なくないそうですが、私はバリスタにおまかせしてみました。
バリスタとのコミュニケーションも楽しみのひとつ

バリスタとのコミュニケーションも楽しみのひとつ


最初にトレイの上にセットされたのは、茶葉の名称に説明を添えた2枚のカードでした。浅蒸しですっきりした味わいの静岡県・本山の「香駿」と、力強い鹿児島県の「香蘭」。このカードは持ち帰ることもできます。煎茶とのペアリングを重視して揃えたお茶菓子は、3種類の中からドライフルーツを練り込んだ羊羮をチョイス。

1煎ごとに湯温を変え、うつわも変えて

煎茶2種類とお菓子のセット

煎茶2種類とお菓子のセット、1煎目。


バリスタが円錐形のドリッパーにお湯を細く注ぎ入れる光景は、さながらコーヒー専門店。しかし、日本茶にはコーヒーとはまた異なる愉しみがあります。それは1煎目、2煎目、3煎目と盃を重ねるにつれて香りや味わい、水色が変化して多彩な表情が表れること。トレイの上で煎のストーリーの序破急が展開していきます。

1煎目に用いるのは70度のお湯。1分20秒という抽出時間を正確に、しかも無音で計測するために、なんと砂時計まで特注するというこだわり。アラームの「ピーッ」という無粋な電子音をお客さまの耳に響かせないための繊細な心遣いです。

小さなドリッパーとスタンドに日本各地の素材と技術が結集。茶濾し部分は新潟・燕三条、磁器は長崎・波佐見、木は北海道のタモ材、スタンドは滋賀で溶接と曲げをおこない、表面の塗装仕上げは大阪、パッケージは富山。

小さなドリッパーとスタンドに日本各地の素材と技術が結集。茶濾し部分は新潟・燕三条、磁器は長崎・波佐見、木は北海道のタモ材、スタンドは滋賀で溶接と曲げをおこない、表面の塗装仕上げは大阪、パッケージは富山。


「お茶には3つの成分が含まれています。アミノ酸の旨味や甘味、カテキンの渋味、カフェインの苦味。カテキンやカフェインやは温度が低いと抽出されないので、1煎目を70度という低めの湯温で淹れると香りや甘味が際立ちます。それをより一層楽しんでいただくために、器をワイングラス型にしました」

ワインを楽しむときのように器に鼻を近づけて、ふわりとたちのぼる芳香を満喫しました。
1煎目と2煎目では水色もこんなに変化!

1煎目と2煎目では水色もこんなに変化!


2煎目は温度を上げて80度で抽出し、カフェインやカテキンのすっきりした味わいを主役にします。このときは多少熱くても持ちやすいように、コーヒーマグのような取っ手付きの器が選ばれていました。

そして3煎目は茶葉に香ばしい玄米を加え、ほうじ茶のような風味に。「最後の締めくくりに、ほっこりして帰っていただけたら」とバリスタは語ります。
3煎目はまた趣向を変えて

3煎目はまた趣向を変えて


産地や品種、蒸し方、焙煎、淹れ方によって、味も香りも万華鏡のように変化する煎茶。バリスタが一杯ずつ目の前の人のために淹れるお茶は、まさに一期一会なのです。

週末は混雑することがあるので、来店時間と人数が確実に決まっている場合はお店のWebサイトから予約をどうぞ。

茶葉は購入可能

茶葉は購入可能


menu

煎茶2種飲み比べ+お茶菓子 1300円


shop data

東京茶寮(とうきょうさりょう)
【住所】東京都世田谷区上馬1-34-15
【OPEN】13:00~20:00、土日祝11:00~20:00
【CLOSE】月(祝日の場合は営業、翌休)
【最寄り駅】東急田園都市線「三軒茶屋」駅・南口B出口より徒歩7分
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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