アドバイス1 「貯められない時期」と割り切ることも大切
現状、思いどおりに貯蓄できていないことが今回のご相談の理由かと思いますが、まずそのことはあまり気にしなくても構いません。貯蓄できない時期は、ほぼ、どの世帯にもあるものです。しかも、もっとも多いパターンが、ご相談者のナナツボシさんのように、出産により妻が働けなくなるというもの。今後、妻がパートに出ても、幼稚園ないし保育園費用に半分近くが消えてしまう。貯蓄がきびしい典型的なケースです。ナナツボシさんの場合、パートで働き始めるまでの数年は、現状維持でよしと割り切ってください。実際、児童手当分は貯められているのですから、それで十分。また、食費も工夫は確かに必要ですが、家族がよく食べるならば、ある程度かかるのは仕方がありません。食べないよりよほど健全ですし、高くてもそれは意味のある支出です。
帰省についても同様。コストがかかることはあまり気にせず、ぜひ継続してください。お子さんとともに長い時間、のんびりと田舎で過ごすことは、おそらく今しかできないでしょう。
一方、お子さん2人とも小学校に上がり、教育費が下がってくると、家計としては貯蓄に大きくアクセルを踏める時期です。夫婦共に働くことで家計に余裕が生まれますから、今までと同様に家計管理をしていけば、十分貯められます。
したがって、焦る必要はありません。ちょうど今、貯めるのが難しい数年間に当たっているだけのことです。
アドバイス2 住宅ローンは無理がないが大規模修繕費には注意を
住宅ローンについて言えば、さほど問題はありません。借入額も大きくなく、ボーナス併用の返済もしていない。毎月の返済額は、管理費と修繕積立金を加算して、ちょうど現在の家賃程度。その他、固定資産税が発生しますが、奥様が働くことで問題なく返済できます。また、返済期間20年ですから完済はご主人62歳のとき。定年後も働く、もしくは貯蓄があれば定年後2年間の支払いもさほど大きな負担にはならないでしょう。
ただし、相談文にあるように、繰上返済はできればしたいところ。例えば、5年後に150万円を繰上返済すれば、返済期間は2年1カ月短縮され(支払い利息は約16万円)、60歳前の完済が可能となります。退職金で完済してしまうという方法もありますが、支払利息や今後の金利上昇リスクなどを考慮すれば、早い時期の繰上返済が望ましいということになります。
注意点としては、繰上返済は確かに効果的ですが、それを優先させると手持ち資金が減ってしまうということ。無理をせず、教育資金など、しっかり確保した上で行うようにしてください。
不安要素とすれば、住宅ローンよりも、購入されたマンションがすでに築32年ということ。事前に「一時金の徴収、修繕積立金の値上がり等の可能性」の説明を受けているようですが、その時期や金額などは不確定であり、だからこそ、その備えとして一定額を用意しておくことも必要と考えるべきでしょう。
アドバイス3 子どもの進路に合わせてしっかり貯蓄していこう
マネープランとしては今後、教育資金が気になります。先に「小学校に上がれば、そこからは貯めどき」と言いましたが、その後の進路によっては、その貯めどきも短期間になってしまいます。ご主人加入の低解約型終身保険を2024年に解約すると解約返戻金が300万円とのことですが、それは上のお子さんが12歳のとき。
もしも私立中学の入学を意識されているとすれば、高校も私立となり、大学の費用と合わせて、学費だけでトータル1100~1200万円は見積もっておく必要があります。この金額は、先の解約返戻金と児童手当全額を貯蓄したとしても700万~800万円足りません。
さらに、下のお子さんの学費もあります。高校まで公立であれば、計画的に準備するのは大学費用だけ(高校までは家計から捻出)ですが、それでも平均で私立文系なら390万円、私立理系で520万円ほど。中学、高校から私立なら当然、上積みされます。
もちろん進路はまだ未定でしょうが、もし中学、高校で私立にというご希望、あるいは可能性があるのなら、今から計画的に準備をしておくべき。今後、ナナツボシさんが働くようになれば、その収入のほとんどは貯蓄に回せます。仮に正社員ならば、月20万円超の貯蓄も可能でしょう。その際、きっちり目的別に積み立てていくことがポイント。また、保険商品は使わず、流動性のある貯蓄商品で積み立てることをおスメメします。
最後に、ナナツボシさんが働くタイミングで死亡保障を確保したいところ。いわゆる掛け捨ての定期タイプで死亡保障1000万円、保険期間10年。今の年齢で加入されるとすれば、保険料は1000円台前半です。
相談者「ナナツボシ」さんから寄せられた感想
この度は深野先生にアドバイスをいただけて大変嬉しく思っております。他の相談者の方への回答を参考にしたく、いろいろな相談事例を拝見しておりましたが、深野先生のアドバイスは、単にお金の損得の部分へのご指摘ではなく、相談者の気持ちに寄り添ったご回答で、大変励みになります。今回、貯蓄のために、いかに食費を節約できるか、帰省費用を減らすべきかといった部分ばかり気にしていましたが、よく食べてくれるのは健全なことで、意味のある出費、帰省費用にお金をかけられるのも今のうちとご指摘があり、ハッとさせられました。貯めるのが難しい時期と割り切ることも必要なのですね。今後は、築年数がかなり経過したマンションを購入したので、建て替えの可能性や修繕費の負担など、不測の事態を予測しながら、少しでも手持ちの資金を増やせるように私が働き出したらすぐにでも貯蓄を始めるようにしたいです。この度は本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
取材・文/清水京武 イラスト/モリナガ・ヨウ
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