子供の病気

保育園や幼稚園でも多い「とびひ」とは…夏には集団感染も

【小児科医が解説】正式には「伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)」という「とびひ」。特に夏、乳幼児に多くみられ、保育園や幼稚園でもよく見られる感染症です。水ぶくれができるタイプと、季節や年齢を問わずにみられるかさぶたができるタイプがあります。とびひの症状と治療法、そして家庭でできる予防法について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

「とびひ」とは…火の粉のように水ぶくれやただれが広がる伝染性膿痂疹

床で遊ぶ赤ちゃん

とびひは保育園や幼稚園で感染する恐れがありますが、出席停止措置はありません。ただし、受診した上で感染予防は確実に行いましょう

乳幼児によくみられる皮膚の感染症に「とびひ(飛び火)」があります。この病気は正式には伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といい、皮膚に細菌感染が起こることで発症します。

特徴的なのは、その症状です。感染すると、皮膚に水ぶくれやただれが現れ、これを本人がかきむしることにより、手指を介して水ぶくれやただれがあっという間に全身に広がります。その様子が、まるで火の粉が飛び散って火事が広がるようであることから、「とびひ」と呼ばれているのです。

とびひは、汗疹(あせも)を引っかいたり、虫刺されなどでできた皮膚の小さな傷から細菌が入り込んだりすることで感染します。感染を引き起こす原因菌は、主に黄色ブドウ球菌と化膿レンサ球菌(A群β溶血性レンサ球菌)です。これらの細菌は、いずれも健康な人の皮膚や鼻の穴、喉などにいるごくありふれた常在菌ですが、様々な病気を引き起こすことがあります。特にこれらが傷口から皮膚に入ると、とびひの原因になってしまうのです。
 

水ぶくれ・かさぶた……とびひには2つのタイプがあります

とびひには、水ぶくれができるタイプとかさぶたができるタイプの2種類があります。水ぶくれができるタイプは、水疱性膿痂疹と呼ばれるもので、主に乳幼児に多いです。虫刺されや小さな傷、湿疹などに黄色ブドウ球菌が入り込み、小さな水ぶくれが生じます。水ぶくれはかゆみを伴って次第に大きくなり、それが破れてただれます。水ぶくれが破れると、原因菌を含んだ内容物が皮膚に広がり、新たな水疱となることで広がってしまうのです。このタイプのとびひは、夏に保育園や幼稚園などで集団発生しやすいので注意が必要です。

かさぶたができるタイプのとびひは、痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)と呼ばれます。こちらはA群β溶血性レンサ球菌や黄色ブドウ球菌が、皮膚の角層下に感染することで起こります。水疱性膿痂疹に比べると水ぶくれは少なく、膿胞が黄褐色のかさぶたとなって広がります。喉の痛みや発熱、リンパ節が腫れるような症状もみられ、年齢や季節に関わらず突然発症するのも特徴です。近年では、アトピー性皮膚炎の患者に増えているともいわれています。
 

とびひ治療法・対策法……飲み薬・塗り薬、家庭ではこまめにシャワーを

とびひかなと思ったら、早めに皮膚科や小児科の診察を受け、症状が広がる前に治療を受けることが大切です。治療では、飲み薬や塗り薬などの抗菌薬で原因菌を退治するとともに、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬でかゆみを和らげるなど、症状に合わせた薬物療法が行われます。

日常生活では、こまめにシャワーを浴びて皮膚を清潔に保ちましょう。水ぶくれやただれたところは強くこすらず、石鹸の泡でやさしく洗ってください。入浴後に使うタオルは、家族でも共用しないこと。大人へ感染する可能性は低いものですが、アトピーの人や皮膚のバリア機能が低下している時は注意したほうがいいでしょう。

とびひは患部を掻いた手指で触れたところに広がるので、患部にはできるだけ触らないようにし、爪も短く切っておくようにしましょう。また、こまめに手洗いをすることも重要です。

とびひは感染力が強い病気なので、日頃から子どもの清潔を保つように心がけ、虫刺されや汗疹は早く治すようにして、感染のリスクを低くすることが大切です。乳幼児のなかには、自分の鼻の中を指でいじるクセのある子どももいます。鼻の穴には、とびひの原因となる細菌が数多く存在しています。予防のためにも、ふだんから子どもが鼻をいじらないように注意することも、有効なとびひ予防法の一つなのです。
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