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都市計画の変更で、本人が知らないうちに大損する!?

住宅や土地の利用に影響する都市計画は、現在の内容がそのまま将来も続くとはかぎりません。都市計画の変更によって不動産の市場価値が変わることもあるため、地域の行政に関心をもつことが大切です。

執筆者:平野 雅之


もうだいぶ前のことになりますが、平成16年6月に実施された都市計画の変更により、東京都内では目黒区、世田谷区、中野区、杉並区、江戸川区のほか、三鷹市、武蔵野市など多摩地域の9市で「敷地面積の最低限度」が導入されました。

この制限は、敷地の細分化による環境悪化を防ぐことを目的に、これから分割しようとする土地は指定面積を下回ることができないという内容で、基準となる面積はそれぞれの区市によって異なっています。

たとえば、159平方メートルの土地があるとしましょう。敷地面積に関する制限がなかったときには、この土地を不動産業者が購入し、ふたつの敷地に分割したうえで売地、または建売住宅として販売することが普通に行なわれていました。

ところが、ここに80平方メートルの敷地面積最低限度が定められると、この土地は分割することができず、ひとつの土地として購入者を探すしかないことになります。

比較的広い面積の土地需要が旺盛なエリアなら、あまり問題が生じることはないかもしれませんが、そうでないエリアでは、とくに売却を急ぐ場合の換金性や流動性が極端に落ちた土地もあるでしょう。

公的な土地評価などは従来とまったく変わらなくても、分割ができるのかどうか、たった1平方メートルの違いで、数百万円の差が出るケースも考えられます。しかし、それによって損をすることになった当事者も、それに気づいていないケースが多いのではないでしょうか。

よりよい環境を保全していくために敷地の細分化を防ぐことは大切であり、敷地面積に関する規制導入が悪いわけではありませんが……。

道路計画をはじめ、他の都市計画の場合も同様です。後から制限が加わることにより、いま住んでいる住宅が「既存不適格建築物」になるなど、その資産性が損なわれることもあります。今後は「立地適正化計画」による都市構造の変化にも注意が必要です。

いずれにしても、自治体担当者のエンピツ1本で不動産の市場価値が変わることもある、ということを理解しておかなければなりません。

都市計画を変更する際には、あらかじめ自治体の広報や説明会などで周知もされますが、それらに関心を持っていなければ「何も知らないうちに変わっていた」ということもあるでしょう。

自分が住んでいる地域の行政に、普段から興味をもつことも大切です。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2006年12月公開の「不動産百考 vol.6」をもとに再構成したものです)


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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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