細菌が引き起こすマイコプラズマ肺炎
咳が続く場合、ただの風邪だと見過ごさず、早めに病院を受診しましょう
マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられる病気で、晩秋から早春にかけての寒い時期に増加する傾向があります。この病気はかつて、「オリンピック病」などといわれることがありました。これは4年周期で流行が繰り返されてきたためで、1980年代では1984年(昭和59年)と1988年(昭和63年)に、比較的大きな流行がありました。1990年代以降は、かつてのような大流行はなくなりましたが、2000年からは、少しずつ患者の数が増えています。
潜伏期間も病気の期間も長いのが特徴
マイコプラズマ肺炎の感染経路は、病気に感染した患者の咳やくしゃみで病原菌がとびちる飛沫感染と、患者と身近に接することでうつる接触感染があります。ただし、感染にはかなり濃厚な接触が必要と考えられており、家庭や学校など、地域での感染拡大の速度は遅いことが知られています。学校などでクラスメイトとの接触が短時間であれば、感染拡大の可能性はそれほど高くありません。しかし、いつも一緒に遊ぶ仲良しの友人同士や家族間の濃厚な接触による感染には注意が必要です。この病気は潜伏期が長いのも特徴で、感染してから症状が出るまで2~3週間もかかります。初期の症状は発熱や全身の倦怠感、頭痛などで、これらの症状が表れてから3~5日後から、咳が出はじめるのが一般的です。はじめ、咳は乾いた軽いのもので、痰は出ません。症状が進むとともに咳は強くなり、熱が下がった後も3~4週間ほど続きます。なかでも年長児や青年期の若者では、病気の後期には痰の多い湿性の咳となることが多くみられます。幼児では鼻炎の症状のほか、耳や喉の痛み、吐き気や下痢、胸痛や皮膚に湿疹が表れることもあります。こうした症状には個人差があり、2~3日で治る人もいれば、1カ月以上続く人もいます。
マイコプラズマ肺炎にかかっても、多くの場合は軽症ですみますが、まれに重症化するケースがあります。重症化した場合は、病院に入院して専門的な治療が必要になることもあります。
従来の抗菌薬が効かない耐性菌も出現
マイコプラズマ肺炎の治療では、マクロライド系の抗菌薬(抗生物質)による薬物療法が用いられます。このような抗菌薬が効かない「耐性菌」が問題になっており、一旦増えていましたが、徐々に減少していました。しかし、2024年においてはマクロライド系抗菌薬の耐性菌が増えております。耐性菌に感染した場合には、テトラサイクリン系やニューキノロン系などの抗菌薬での治療が行われます。予防法については、マイコプラズマ肺炎に対するワクチンは現時点でありません。私たちができることは、一般的な風邪やインフルエンザと同様の対策をすることです。マイコプラズマ肺炎が流行しやすい寒い時期には、こまめに手洗いやうがいなどを行い、患者との濃厚な接触を避けることが大切です。また自分が感染してしまった場合は、周りの人にうつさないように注意してください。飛沫感染も経路の一つなので、外出時にはマスクを着けるなどの咳エチケットを守りましょう。詳しくは、「マイコプラズマ肺炎の症状・治療・予防法」「新生児・子ども・妊婦がマイコプラズマにかかったら…」もあわせてご覧ください。