新たな商品戦略が実を結んだ大型SUV
新世代プラットフォームのSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を採用した3列7人乗りのフラッグシップSUV。プラグインハイブリッドのT8 ツインエンジンAWDインスペクション(1009万円 写真)、T6 AWDインスペクション(909万円)、T6 AWD R-DESIGN(879万円)、T5 AWDモメンタム(774万円)をラインナップ
フランスのDS、イギリスのジャガー&ランドローバー、イタリアのアルファロメオ&マセラティ、アメリカのキャデラック、日本のレクサス、あたりが“追っかける方”というわけだが、なかでも今、もっともドイツ勢に肉薄しうる商品力を整えつつあるのが、スウェーデンのボルボだ。1兆3000億円以上の投資を経て生まれた新たな商品戦略=新プラットフォーム+新デザイン+新パワートレーン、が、にわかに実を結び始めた。
第一弾が、大型SUVのXC90である。発売直後から世界中のSUV市場で話題となり、特にアメリカ市場において、これまでにない人気を博した。日本でも、昨年の発表以来、輸入される絶対数が少なかったとはいえ、品薄状況が続いているという。
しかも、輸入元の予想に反して、廉価グレードではなく、T6インスクリプションという上級グレードからまず売れていったという。要するに、ユーザーは、新型XC90のスタイリングや見映え質感を実際にみて、これはプレミアムカーだと自ら判断したということ。それだけ、XC90という商品に魅力があったということだろう。
途中からT8と呼ばれるプラグインハイブリッドモデルも加わった。昔ながらのボルボユーザーからすると、T6は6気筒で、T8は8気筒ということになるが、もはやそうではない。ボルボは今後、5気筒以上のエンジンを、ガソリン、ディーゼルを問わず造らない、と宣言した。つまり、T6にも、T8にも、4気筒エンジンが搭載されている。
ベースとなる4発に比べて、従来の5気筒級パフォーマンスを発揮するグレードがT5、同様に6気筒並みのT6、8気筒並みのT8、というわけだ。T8には、320ps&400Nmの4気筒ターボ&スーパーチャージャーエンジンに加えて、87ps&240Nmという大きなリアモーターアシストが加わっており、しかも燃費成績も大幅に向上しているから、正に“現代の高性能ラグジュアリー”を実現したと言っていい。
メーター部の12.3インチディスプレイと縦型タッチスクリーンのセンターディスプレイを用い、直感的操作が可能な独自システム(センサス)を採用。インテリアはスカンジナビアンラグジュアリーを体現したというクリーン&モダンなデザイン
ボルボの走りが生まれ変わった
新しいプラットフォームの仕上がりも素晴らしい。特にT6インスクロプションの乗り味が印象に残った。大型SUVであることを、さほど感じさせない塊感があって、操作性もいたって素直。全般的に北欧ブランドのイメージどおり、すっきりとクリーンな乗り味で、とても運転しやすい。ボルボの走りが生まれ変わった、と言っていい。同じT6のRデザインになると、ちょっと見映え重視で、足元にバタツキが見受けられた。これは、重いバッテリーを積むT8にも同じことがいえる。段差や凸凹がいくつか続くと、下半身で抑えきれず、車体全体がかすかにわななく。
SPAプラットフォームの採用などにより先代比120kgの軽量化を実現。北欧神話のトール神がもつハンマーをモチーフとしたT字型LEDポジションライト、シャープなショルダーラインなどをもつ新世代ボルボデザインを採用した
さらに、このクルマ造りが小型車部門へも生かされたとき、ボルボはドイツブランドのオルターナティブとして、世界的な人気を博するようになるに違いない。