皮膚・爪・髪の病気

皮膚科医が解説!乾燥肌の原因と対策、保湿剤の選び方

【皮膚科医が解説】ガサガサ、かゆみ、粉ふき、湿疹など、乾燥する季節に増える肌トラブル。肌荒れが悪化して湿疹になってしまう前にできる、正しい予防法を知っておきましょう。乾燥肌の原因と、自宅で簡単にできる正しい乾燥肌のセルフケア方法をわかりやすくご紹介します。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

肌のガサガサ、かゆみ……冬の乾燥による肌トラブル

保湿

冬の乾燥を乗り切るには、マメな保湿が最も大事です。乾燥を防ぐコツを教えます

冬になると肌も乾燥しがち。腕や脚、背中などが粉をふいたようにガサガサになり、さらに保湿など対策をしないと赤くかゆくなり皮膚が炎症を起こすことがあります。夏は水虫、とびひ、水いぼといった細菌やカビ(真菌)の感染による皮膚症状が増えるので皮膚科は繁忙期なのですが、冬に皮膚科を受診される患者さんの訴えで多いのが、乾燥肌が原因の湿疹です。これは皮膚が炎症を起こした状態であり、皮膚の乾燥による湿疹を特に「皮脂欠乏性湿疹」と呼ぶこともあります。
 

乾燥肌になりやすい原因……アトピー性皮膚炎や年齢による影響

乾皮症、高齢者

高齢者の皮膚は特に乾燥しやすいです。乾燥して写真のように粉をふいたような状態が続く場合には、保湿剤を塗って対策しましょう

乾燥肌の原因には遺伝的なもの、年齢的なもの、そして過ごしている環境が関わっています。

■遺伝的要因による乾燥肌
肌質には生まれつきかなり個人差があり、乾燥しやすい人とそうでない人がいます。赤ちゃんのうちから乾燥しやすくすぐガサガサになってしまうお子さんと、そうでない子がいます。大人でも、冬に保湿剤を塗らなくても軽い乾燥肌ですむ方もいれば、数日保湿剤を塗らないだけですぐに赤く荒れてしまう人まで、肌のタイプはさまざまです。肌の乾燥が強く、広範囲が炎症を起こして赤くなるアトピー性皮膚炎も、親がこの病気だと子どももアトピー性皮膚炎になりやすいことが知られています。

子どもの頃にアトピー性皮膚炎があった場合には、乾燥しやすい肌質が大人になっても残ります。これは、たとえ子どもの頃のアトピー性皮膚炎が、大人になり治っていたしても同様のことがいえます。

その要因は、皮膚バリアの障害や皮膚表面にあるセラミドなどの脂質減少、また炎症を起こしやすいといった性質がそのまま残ってしまうためだと考えられています。この場合、保湿を毎日欠かさずにしなければ、すぐにガサガサしてきて、放っておくと赤く炎症を起こしてかゆくなってしまいます。秋以降、乾燥肌やそれによる湿疹の患者さんが増えていますが、「子どもの頃にアトピー性皮膚炎がありましたか?」と聞くと、多くの方が「はい」と答えます。

■年齢的要因による乾燥肌
乾燥肌は若い方に比べ、特に高齢者に多くみられます。これは、皮膚の一番表面にある角層に含まれている脂質や水分量が加齢と共に減少していくこと、また脂腺から分泌される皮脂量の減少が原因とされています。

■環境的要因による乾燥肌
湿度の低さなど、過ごしている環境も乾燥肌の大きな原因になります。冬の乾燥はもちろん、エアコンのかけ過ぎや石鹸での洗いすぎも乾燥肌の1つの原因になります。
 

皮膚の乾燥対策! 乾燥肌改善のための3つの予防策

加湿

保湿剤だけで乾燥肌を防げない場合には加湿も検討しましょう

肌が赤くなり炎症を起こしてしまうと、保湿剤だけで治すのは難しく、ステロイドの塗り薬を使わなければ通常抑えられません。荒れて湿疹になる前にスキンケアで上手に予防することはできないのでしょうか? 乾燥肌予防について、生活上の3つのポイントを押さえておきましょう。

■ポイント1:加湿器の湿度設定は45~60%に
まずは湿度を保つことが重要です。湿度が10%をきると、皮膚の一番外側にある角層から水分が失われて乾燥肌の原因になります。冬で湿度の低い時期は、加湿器で湿度を保つようにすると乾燥肌を防ぐことができます。加湿器の湿度設定を45~60%にすると、室内の湿度を10%以上に保つことができます。

■ポイント2:エアコンの温度設定は20度に
エアコンのつけすぎは乾燥の原因になります。暖かく心地がいいと感じられる最低の温度に設定するようにしましょう。20度に設定すると、室内の湿度を下げすぎずに済みます。

■ポイント3:お風呂はぬるめに設定、入浴は1日1回で十分
熱すぎるお湯に浸かると、乾燥が悪化するといわれています。お風呂の温度は、ぬるま湯程度の温かさにすると乾燥が防げます。また、1日に何度もお風呂に入ると、皮膚の保湿成分がとれてしまい乾燥が悪化するため、お風呂は1日1回、もしくはそれよりも少ない回数で十分です。石鹸でゴシゴシ洗いすぎると乾燥の原因になりますので、乾燥肌の方はタオルやスポンジではなく、石鹸を泡立てて手で洗うと良いかもしれません。
 

保湿剤の種類は? 軟膏、ローション、クリームの選び方と塗り方

脚の保湿

保湿の基本は1日2回、お風呂あがりと朝に塗ることです。お風呂あがりには水分を保つようできるだけ早めに塗りましょう。脚や腕など服から外に出やすく乾燥しがちな場所には特に念入りに塗ってください

冬の乾燥にかかせないのが保湿剤です。角層の細胞(corneocyte)と細胞間の脂質が、水分を逃がさないバリアのはたらきをしています。そして、保湿剤はこの角層の脂質を補う役割をしています。

保湿剤には多くの種類があります。どれを選べばいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。保湿剤のタイプには軟膏、クリーム、ローションがあり、べたつきが強く、保湿力が高いのが軟膏、さらっとしているが保湿力は低めなのがローション、その中間がクリームになります。

全身に塗るには軟膏はべたつきが強いので、冬の乾燥が強い時期にはクリーム中心に保湿をするといいでしょう。目の周りや唇の周りも乾燥しやすい場所ですが、クリームやローションは目にしみることがあり、口の周りではとれやすいので、この場合、ワセリンなど軟膏の保湿剤を使うと良いかもしれません。顔など、べたつきが気になる場所には若干保湿力は落ちますが、冬でもローションを使ってみても良いでしょう。

保湿剤は1日に何度塗っても大丈夫ですが、基本は1日2回、朝とお風呂あがりに塗るとよいでしょう。お風呂あがりにはできるだけ早く、遅くとも3分以内に保湿剤を塗布することで、水分を保つことができるといわれています。手は保湿剤を塗っても手洗いですぐにとれてしまうので、手が乾燥している方は2回といわず小まめに塗るようにしましょう。

クリーム、ローションといった保湿剤のタイプや成分で保湿力に差は出ますが、結局は毎日塗れることが一番大事です。使いやすく気に入った製品を見つけ、それを毎日欠かさず、1日2回ほど継続して塗ることが肌の乾燥を防ぎながら冬を乗り切るコツです。
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