切手は切符手形とも呼ばれていた
「切手」はギザギザした目打に沿って手で切るという意味ではありません!切手という言葉の歴史は意外と古く、もともと切符手形(きりふてがた)と同義で、 金銭受け取りの証拠となる書き付けや金券を意味したものです。今でも小切手という言葉にその名残をみることができます。江戸時代にも切手があった?
江戸時代に流通していた商品券の中には、酒切手や米切手、 鰻切手などと呼ばれるクーポン券も存在したほか、 藩札(当時の紙幣)のことを切手と呼ぶこともあり、 切手という言葉は一般的に使われていたことが知られています。 また、関所の通り手形も切手と呼ばれることがあったほか、 人や馬を手配するのに使う切符、乗船券などにも切手と呼ばれるものがありました。日本切手の誕生秘話
日本最初の郵便切手を発行することが決まったのは、明治3年6月2日(1870年6月30日)のことでした。郵政博物館(東京都墨田区)には『正院本省郵便決議簿』(明治三年)という資料があり、ここには「賃銭切手」の雛形が記されていて、当初から切手という言葉が使われています。これは江戸時代からの言葉の使用を受け継いだものでした。明治4年3月1日(1871年4月20日)に発行された日本最初の竜文切手はギザギザした目打もなく、手で切ることはできませんでした。郵便局職員の切手さん?
興味深いのは、岐阜県などに「切手(きって・きりて)」 という名字が存在することです。 2009年夏の甲子園で活躍した切手孝太選手(日本文理高校) が有名ですが、 名字の「切手」は河川や土地を切り開いた田畑を意味することが多いようです。 実際に郵便局にも「切手」姓の職員の方がいて、 ちょっとした話題になったこともあります。英語では「ラベル」と呼ばれていたことも!
さて、英語で切手のことをスタンプ(Stamp)と呼ぶのは周知のとおりです。しかし世界最初の切手ペニーブラックがイギリスで1840年5月1日に発行 された時点では、「ラベル」(Label) として発売されていました。実際にペニーブラックのシートの隅には、「 ラベル1枚につき1ペニー」 という文言が記載されています。しかし「 ラベル」や「糊付きラベル」(Adhesive Label)はあまり定着せず、「スタンプ」 という呼び方が一般化しました。なぜ英語で切手は「スタンプ」と呼ばれるの?
「スタンプ」といえば、ハンコやゴム印のようなものを想像しませんか。ここに示す手紙は1839年、つまりイギリスで切手が導入される1年前のものです。郵便物に赤いスタンプ(手押し印)を押すことで、郵便料金を支払った証明にしていました。この赤いスタンプが翌年に紙の切手に代わったのですが、その流れで切手もスタンプと呼ばれるようになったわけです。 いかがでしたでしょうか。19世紀中頃から世界各地へ広まっていった近代郵便制度は「切手」や「スタンプ」という言葉に新しい意味を与えたことがお分かりになると思います。それはちょうど「ネット」という言葉がインターネットという新しい意味を持ったのと同じことなのではないでしょうか。【関連記事】