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「子どもの将来の夢」との付き合い方

「子どもの夢を応援したい」と思うのは親心。でも、子どもの夢というのは結構流動的。親はどのように「子どもの夢」とつきあえばいいのでしょうか。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

親はどのように「子どもの将来の夢」とつきあえばいい?

紙飛行機

かわいい我が子には、夢を叶えて望み通りの人生を送ってほしい。そう思ってしまいますよね。

 
「子どもの夢を応援したい」「最善の道を選ばせてあげたい」と思うのは親心。そろそろ「お受験」や「中学入試」の願書提出の季節でもありますね。親はどのように「子どもの将来の夢」とつきあえばいいのでしょうか。

 

子どもの夢を集計してみた

何年か前の地域の小学校のPTA新聞に、卒業生の将来の夢が載っていたので、集計してみたことがあります。(☆は男子、★は女子)

<法曹系>
弁護士          ☆☆
検察官          ☆
裁判官          ☆
国会議員         ☆

<会社員系>
社長           ☆☆
成功したビジネスマン   ☆
銀行員          ☆
会社の受付嬢       ★

<公務員系>
海上保安庁の潜水士    ☆
海上保安官        ☆
消防士          ☆
公務員          ★

<選手系>
野球選手         ☆
剣道選手         ☆
陸上選手         ☆

<キラキラ系>
テレビに出る人      ☆
俳優           ☆
ファッションデザイナー  ★★
アナウンサー       ★
歌手           ★
芸能人          ★
声優           ★
作曲家          ★

<医療系>
医師           ☆★
薬剤師          ★★
看護師          ★★
心理カウンセラー     ★

<専門資格系>
設計士          ☆
馬の調教師        ☆
美容師          ★★★★
パティシエ        ★★★
トリマー         ★★
保育士          ★★
調理師          ★
ドッグトレーナー     ★

<その他>
お金持ち         ☆
家業を継ぐ        ☆
漁師           ☆
困っている人を助ける仕事 ★
ラーメン屋        ★

地域によっても、年代によっても違いがあるでしょう。また名門私立小学校だと全然違う結果になることでしょう。分類も筆者が勝手にしたものですが、なんとなく「傾向」が見えてきますよね。

パッと見て思ったのは、男の子の方が「選ばれた人しかなれない」ような大きな夢を、女の子の方が、地道に努力すればなれる確率の高い、身近な職業を選んでいるなということ。

それには、それぞれの職業に実際に就いている人の男女比が影響しているように思いますし、「男らしい職業」「女性に向いた職業」といった、親の思いや社会の価値観も反映されているように感じます。


子どもの夢は、親の希望を反映する

子どもが「こんな大人になりたい」という情報を仕入れるのは、親をはじめ、周りの大人がメインではないでしょうか。職業モノのテレビドラマやマンガから、というのもあるでしょうが、子ども自身が「この仕事かっこいい!」と憧れるよりも、親がこぼした「こういう仕事についてほしいな」というひとことの影響の方が大きいように思います。

ちなみに、筆者の小学校1年生の時の夢は「スチュワーデス」でした。おそらくその頃、飛行機に乗る機会があったのでしょう。髪をシニヨンに結い上げ、キリリと制服を着こなし、やさしく笑いかけてアメ(紅茶味の純露)をくれたスチュワーデスさんが、「仕事をする女性」の象徴のように感じてときめいたのを覚えています。そして、小学校で「将来の夢」について作文を書く宿題が出たときに、スチュワーデスへの熱い思いを原稿用紙にしたためたのでした。

しかし、それを読んだ祖母からダメ出しが入りました。「かわいげがない」と。そして、作文の最後に、「でも、かわいいお嫁さんもいいなと思います」と書き足せと。

サービス精神旺盛だった筆者は、祖母の言う通りにし、結果、作文は大人たちに絶賛されたのでした。「特に、最後の一文がいい」と。子ども心に、ザラリとした違和感が残りました。

このエピソードで筆者が学んだのは、「仕事をバリバリしている女性に憧れるより、お嫁さんに憧れる女の子の方が、大人ウケがいい」ということでした。


親自身の「仕事観」を見直してみよう

今思えば、筆者の実家は自営業だったため、母も「仕事をする女性」であり、80過ぎまで現役で農業をしていた件の祖母も「仕事をする女性」だったわけです。でも、自営業も農業も専業主婦も、女性がしている報酬の発生しない仕事は、仕事として認識されていなかった。それは親の価値観であり、当時の社会の価値観でもあったのでしょう。

子どもの夢は、親の価値観を反映します。子どもに将来の夢を聞くと、その子の家庭環境や親の育児方針が透けて見えるような気がするのは、そのためではないでしょうか。

親である自分自身は、どんなふうに仕事と向き合っているでしょうか。生活の中に、仕事をどのように位置づけているでしょうか。今の仕事は、どんな思いで選んだものですか。仕事のどこにやり甲斐を見出していますか。子どもと夢の話をする時には、そんな「生身の仕事人」としての話もできるといいですね。


話半分で、生温かく見守ろう

周りを見渡してみると、子どもの頃の夢を叶えた人もいるにはいるけれど、ごく少数なのではないでしょうか。あなた自身はどうでしょうか。夢を叶える難しさを感じてきた人ほど「我が子には、夢を叶えてほしい!」という強い思いを持つこともあるでしょう。しかし、親が先走らないことが大切なように思います。子どもの「夢」と、親の期待が一致している場合はなおさら。特に、親が叶えられなかった夢が「子どもの夢」になっている場合は注意しましょう。

子どもには「親の期待に応えたい」という気持ちがあるものです。親が望む自分にならないと、愛してもらえないんじゃないか。そんなふうに思っている子どももいます。

我が子といえど、別の人間。子どもの世界は、身近な大人を足がかりにして広がっていきますから、子どもと「仕事をすること」について話し合ったり、色々な職業の人と接する機会を増やしたりして、子どもの選択肢を増やしていけるといいですね。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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