欧州からの訪日旅行の現状と課題
ここ数年欧州からの訪日旅行者は着実に増えていますが、それでもまだ全体の6.3%にあたる124万人(2015年)ほど。欧州からアジアへの渡航者のランキングを見ると、中国やタイと比べて日本は半分にも満たず、アジアの中でも5位にすら入っていないのが現状です。その原因としては、費用がかかることや言葉や距離の問題などの物理的なハードルに加え、そもそも日本の情報に触れる機会が少なく、何を体験できるのかがわからないという心理的なハードルがあることが挙げられます。一方で、実際に日本を旅行した欧州の方々の声を聞くと、満足度も再訪意向も約90%と非常に高く、2週間くらいかけて各地を巡りながら旅を満喫しています。このギャップを埋めることが、欧州からの旅行者を増やすための大きな課題として考えられています。
欧州から日本に訪れる旅行者は全体の6.3%ほど
欧州を横断的に捉えた初の取り組み
2016年11月、JNTOは訪日旅行促進(ビジット・ジャパン)事業の一環として、欧州における訪日旅行の需要喚起プロモーション「JAPAN―Where tradition meets the future」を開始しました。動画などにより訪日旅行を促進するもので、欧州の15もの国で統一キャンペーンを展開するのは、2003年の事業開始以来初めてとなります。このキャンペーンでは、日本人の感性と欧州人の感性を融合させることを狙い、クリエイティブエージェンシー・猿人|ENJIN Inc. が、累計再生回数200万回を超える「In Japan -2015」を手掛けたドイツ人映像作家 Vincent Urban(ヴィンセント・アーバン)氏とコラボレーションし、東京・京都・熊野・伊勢など全45ヶ所に及ぶシーンを3分間の動画に凝縮。「伝統」と「革新」と「自然」が渾然一体となった日本の魅力を、鮮やかに描き出しています。
ドイツ人映像作家 Vincent Urban(ヴィンセント・アーバン)氏
内側と外側両方の視点で描かれた映像
動画は、東京スカイツリーや東京タワーといった日本の現代を象徴するランドマークから始まり、和歌山県・瀞峡の雄大な自然、奈良県東大寺の歴史刻まれる大仏殿の威容、秋葉原のゲームセンターや日本未来科学未来館のロボット、茶道や弓など伝統を受け継ぐ人々の儀礼、ドン・キホーテや横丁という現代の日常生活など、喧騒と静寂が混然一体なった映像が展開されています。日本のコントラストを表現する交通広告
欧州の国々の傾向を知る大きなチャンス
私自身、アーバン氏の動画「In Japan -2015」を見てすごい!と思い、以前から注目していたので、再び彼の作品を見ることができてとても嬉しいです。単純な観光動画ではなく、自然や世界遺産、最先端技術、伝統、クラブやゲームセンターなどいろいろな視点から捉えた日本がテンポ良く合わさり、現代的な面白い映像に仕上がっていますね。欧州は国によって文化的背景が異なるので、今回の統一キャンペーンを成功させることは決して容易ではないでしょう。しかし、こういったスタイルの動画がどの国で評判が高く、どの国であまり受けなかった、この国ではどういう方法でのアプローチが好まれた、などリサーチのチャンスであることは間違いありません。実際、All About Japanでこの動画をシェアしたところ大きな反応があり、各国の方々の様々な意見を広く知ることができました。
今後は季節性を持たせたり、地域を変えたりし、多様な日本の魅力が伝わる動画がもっと増えればいいなと思います。