ライブハウスのドリンク代はアリ?ナシ?
「営業上必要な制度」というが
この制度、ライブハウスが「飲食店」として保健所に届け出をすることから自ずと慣習化したものです。1ドリンク500円~700円を入場時に支払いドリンクチケットを受け取り、場内のドリンクカウンターで好きな飲み物を注文。会場によっては飲み物によって金額が異なる店舗も。そもそもライブハウスを開店するためには保健所に営業許可の申請をする必要がありますが、その際「興行場許可」だとハードルが高いため「飲食店営業許可」での申請をする店舗が大半を占めています。
飲食店ということは、飲食サービスの提供に対して対価を支払うのは当然。ファミレスやカフェに入って席に座り、何の注文もせずに何時間も居座ることはできないですよね。これと同じ理屈になるので、ライブハウスでドリンク代を支払うのは当然、ということなのです。
とは言え、この「ライブハウスのドリンク」は、一律に金額が決まっている店が多く、ソフトドリンクとアルコールが同じ価格になっていたり、店舗によってはペットボトルが500円で売られていることも。さらには2010年代に入ると「2ドリンク1000円」を予め徴収する店舗が増えてきました。
「最近のお客さんはブッキングライブだとお目当てのバンドだけ観てすぐ帰ってしまう人が多い。少しでも長く滞在してもらい、新たな音楽との出会いを後押しするため」という理由で2ドリンク制を取り入れたという店舗もありましたが、不況の煽りを受けて、経営上の理由という店舗が多いようです。
音楽ファンは否定的…客離れの一因に?
それに対して音楽ファンの反応は一様に否定的なものばかり。都内の某店舗でヒアリングしたところ、観客からは「ライブハウスを運営していくためにはやむをえないのだろうけど、チケットと別に1000円も取られるのは違和感」「お通しが2人分出てくるようなもの。暴利だ」など、一様に否定的な声が聞かれました。ライブハウスのドリンク代、音楽ファンは否定派が多数
「うちはハートランドをサーバーから、キンキンに冷えたグラスで提供しています!」という優良店の店長が、匿名を条件に取材に応じてくれました。根幹にある問題として「飲食店という届け出は形骸化しており、『ライブハウスは音楽を聴く場。飲食は二の次』という意識を持つ店が多いのだと思います。ドリンク代は払うのが当たり前になっているから、そこに驕りがあるのは事実ですね」と話します。
前述の店長は「話のついでに」と、ソフトドリンクの原価についても言及してくれました。多くの店舗ではアルコールとソフトドリンクが同じ「1ドリンクチケット」で引き換えられる、すなわち同額で販売されていますが、ウーロン茶などの原価はナント35円程度といいます。これはもはや、ボッタクリの領域??
美味しいお酒が飲めるライブハウスもあります!
本稿で、筆者はライブハウスの知られざる実態!ドヤ!なんて悪口を言いたいのではありません。ごくごく一部にこうした店舗があるために、ライブハウスに対してネガティブなイメージがついてしまっている……そこに、一石を投じたいのです。出演バンドが減っていて、集客も苦戦している。満足いく人件費も確保できないので、ドリンクカウンターは受付と兼ねて1人で切り盛りしていたり、アルコールの作り方や接客の研修もないままに立たされている学生アルバイトが応対していたり……といったケースが少なくありません。
そこにクオリティを求めるのも無理な話。「美味しいお酒が飲みたいなら、お客さんがもっとお金を払って」というのが本音といったところでしょう。
美味しいお酒を出すライブハウスも実はたくさん!
都内だけでも、例えば……ビールサーバーが2本あり、ギネスも常備の下北沢「440」とか、料理の品数とクオリティが都内随一の「青山 月見ル君想フ」とか、ビールの種類だけで5種類もある吉祥寺「ROCK JOINT GB」とか、消費税8%増税の際になぜかドリンク代値下げを決行した高円寺「ShowBoat」とか……枚挙にいとまがありません。
HPを見て、ライブハウスに足を運ぼう
このページをご覧になっている皆さんも是非、実際に足を運んで、注文してみてください。もし事前に「美味しいお酒を出すライブハウス」を知りたいという方へ。見分けるポイントは、ビールの種類が複数あるところ。ホームページにドリンクメニューを掲載していない店舗は、アタリの可能性が少ないと言って良いでしょう。ライブハウスは音楽を楽しむ場。でも、美味しいお酒や料理が傍にあれば、いっそう音楽を楽しむことができますよね。美味しいお酒や料理の存在が、音楽が生まれる最前線、ライブハウスシーンの隆盛を手助けし、経営的にも好転してくれれば……そんなことを、切に願っています。