ベトナム最後の楽園「コンダオ島」
いまや“秘境”といえる場所も少なくなりつつありますが、ベトナム南部に浮かぶコンダオ島は、数少ないホンモノの秘境リゾートのひとつ。ホーチミンから、わずか45分のフライトという近さにも関わらず、とびっきりの秘境感! それでいて弾丸なら週末プラス有休1日で行ける気軽さは、アジアのビーチリゾートならではです。今回はそんなコンダオ島を紹介します。コンダオ島の魅力は素朴な人と自然!
ホーチミンから約230kmの南の海に浮かぶコンダオ島。ベトナム最後の楽園とも称され、2013年には旅行ガイド『ロンリープラネット』で「世界でも最も神秘的な島トップ9」に選ばれるなど、圧倒的な自然美が人々を魅了し、じわじわ注目を集めています。ただ、ベトナム人にとって、「コンダオ=ビーチリゾート」というイメージは、まだそれほど高くないようです。というのも、実はこの島はフランス統治時代の1861年に刑務所が作られ、ベトナム戦争時代まで100年以上ものあいだ、流刑地だった歴史があるのです。大きな開発が進むこともなく、今でも手つかずの自然が残っているのもそのためでした。
ちなみに日本では「コンダオ島」と呼ばれることが多いので、この記事でもそう記していますが、正確には16の島からなる“諸島”です。そのうち最も大きく、人が住んでいる唯一の島がコンソン島で、空港やホテルなどもここにあります。最も大きいといっても広さは約52平方キロメートルしかなく、住民はわずか7500人。それでも、小中高校や市場、銀行、病院など一通りの街の機能はそろっており、人々の素朴な暮らしが営まれています。
コンダオ島は80%以上が国立公園で、海洋保護区にもなっています。 観光地然としたところはなく、人も素朴。マングローブの森が広がる島は海藻や美しいサンゴに囲まれ、ジュゴンの生息地でもあります。また、シーズンにはウミガメの産卵を見ることもできるなど、大自然の神秘や美しさに思いっきり浸れる島なのです。
コンダオ島への行き方
コンダオ島へは、ベトナム南部のホーチミンからわずか45分のフライトで到着します。ちなみに日本からホーチミンは約6時間。現状は乗り継ぎの関係で、日本出発日にコンダオ島まで行くことができず、初日はホーチミンで1泊する必要がありますが、それでも弾丸なら最短4日でOK。しかも4日目は早朝に日本に着くので、ちょっと大変ですが、そのまま会社に直行すれば、週末プラス有休1日で行けちゃいます。【スケジュール例】
1日目 午前:東京(成田)発、ホーチミンへ。到着後ホーチミン観光(ホーチミン泊)
2日目 午前:ホーチミン発、コンダオへ。コンダオ滞在(コンダオ泊)
3日目 午前:コンダオ滞在、午後:コンダオ発、ホーチミンへ。深夜:ホーチミン発、日本へ
4日目 早朝:東京(成田)着
このスケジュールだと、コンダオには約1日半滞在が可能。もちろんこれは、あくまで最短・弾丸の場合のスケジュール。お休みがとれるなら、コンダオ島にあと何泊かできるとよいですよね。
ホーチミンからコンダオへの定期便は、VASCO(ベトナムエアサービス)のみが飛ばしています。2016年10月末からの冬季スケジュールでは、ホーチミンからコンダオは、往復共に6便ずつ運航しており、そのうち5便がデイリー(毎日)、1便は火曜を除く週6便の運航です。
なお、VASCO便の予約は電話でする必要があるのですが、ベトナム航空の子会社なので日本にあるベトナム航空各支店へ電話して予約が可能です。日本からホーチミンまでをベトナム航空のウェブサイト、ホーチミンからコンダオまでのVASCO便を直接現地に電話……とバラバラに予約するよりも、日本からすべて通しで電話予約したほうが運賃も安くすむのでおすすめです。
コンダオ島の見どころ、アクティビティ
コンダオ島の一番のお楽しみは、なんといっても大自然を満喫すること。風や波の音を聞きながらビーチやプールサイドでのんびりするもよし、美しい海でダイビングやシュノーケリングを楽しむもよし。基本的に年中マリンアクティビティは楽しめますが、ダイビングやシュノーケリングのベストシーズンは、波がおだやかで海がきれいな3~5月ごろ。といっても、私が取材に訪れた11月でも十分きれいな海でシュノーケリングが楽しめました。もうひとつ、コンダオ島ならではのアクティビティがウミガメの産卵を見ること。こちらのシーズンは6~8月ごろ。ホテルのツアーデスクなどで手配できます。
観光スポットとしてはとくに目立った場所はありませんが、地元の人の生活を知るなら、こぢんまりしたコンダオ市場やお寺を周るのもおすすめです。
また、かつての刑務所跡地などを巡り、悲しい歴史に思いを馳せるのも、ベトナムへの理解を深める意義深いものとなるでしょう。島には若くしてこの地で処刑された英雄的女性ボーティサウさんのお墓もあり、彼女の写真を使った土産物は島のあちこちで見かけます。ホーチミンには彼女の名前をつけた通りもありますね。
コンダオのホテル
コンダオにはホテルは少なく20軒程度。外国人観光客によく利用されるのは、唯一の5つ星ホテルであるシックスセンシズ コンダオ(Six Senses Con Dao)、そしてコンダオリゾート(Con Dao Resort)など数軒の3つ星ホテル。あとはかなりカジュアルな1つ星、2つ星です。おすすめはやはり、シックスセンシズ コンダオ。ほぼ無名だったこの島が有名になったのは、2010年にこのホテルがオープンしたのもきっかけのひとつ(それから同ホテルにブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーがお忍びで泊まったことも!)。
大小さまざまな全50のヴィラがあり、すべてのヴィラがオーシャンビューでプライベートプール付き。インテリアは竹や木を使ったナチュラルテイスト。風通しがよい造りで、シャワーはなんと外にあり、自然の風が心地よく感じられます。
シックスセンシズといえば、豊かな自然環境に最大限配慮した自然派ラグジュアリーブランドとして有名ですが、同リゾートでも二酸化炭素排出削減につとめ、エコを推進しているそう。部屋のミネラルウォーターも市販のペットボトルではなく、ホテルでボトリングしたものが置かれていました。
ダイニングも、カジュアルなベトナム料理レストランから、ワインと料理のペアリングを楽しませてくれるシェフズテーブルまで多彩。島の名物はシーフードです。また、日頃のストレスを癒してくれるスパもおすすめです。
アクティビティも多彩で、シュノーケリングやウミガメ産卵を見に行くツアーのほか、カヤックやハイキング、クッキング、島内ツアーなど、数えきれないほど多くのプログラムが手配可能。キッズクラブもあり、子供向けアクティビティも充実。高級リゾートでありながら、とってもファミリーフレンドリーです。
喧噪のホーチミンとの対比も刺激的!
日本からコンダオ島に行く場合、乗り継ぎの都合上、1日目と3日目にホーチミン市内での滞在時間があります。ベトナム最大の都市、ホーチミンシティは、新旧入り混じった喧噪の街。コンダオとのコントラストが強烈ですが、これもまたベトナムの姿です。観光なら、フランス統治時代のおもかげを残す建物を見るのも楽しいひととき。「東洋のパリ」ともいわれるホーチミンには、美しいコロニアル建築がたくさんあります。ショッピングなら、市場やかわいい雑貨店へ。食べ物ならカシューナッツやチョコレートもおすすめ。チョコレートは最近日本にも入ってきた「MAROU(マルゥ)」というブランドが有名です。
レストランもよりどりみどり。古風な建物の中で伝統的なベトナム料理を食べられる「アン・ヴィエン(An Vien)」のような落ち着いた店もあれば、プロパガンダアートを壁いっぱいに描いたオシャレな店「プロパガンダ(Propaganda)」のような個性的な店も。ベトナム南部の名物、生春巻きやバインセオもぜひ試したいところです。
最終日(3日目)のホーチミンステイですが、ベトナム航空のホーチミン発日本行きは深夜フライトです。3日目のコンダオからホーチミンへ戻るフライト時間にもよりますが、手頃なホテルのデイユース(夕方までの一時利用)を手配しておくと、荷物を預けられてラクですし、最後にシャワーを浴びられてすっきりします。もしくは、スパでロングコースの施術をうけて(スパならシャワーも浴びられるので)、ちょっと素敵なレストランでディナーをとるなど、ゆっくり過ごすのもありですね。
癒しのコンダオ島とはまったくちがう刺激的なホーチミン。合わせて楽しむと旅の楽しさも2倍になります。ベトナム最後の楽園の名にふさわしいコンダオは、開発が進まない今のうちにぜひ訪れてみてほしい場所です。
(取材協力:ベトナム航空)