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日本政府がカジノ合法化を目指す本当の理由とは

トランプ氏の大統領戦勝利でTPPをはじめ日本にも影響が出ている中、山場を迎えているのがカジノを含む統合型リゾート施設整備推進法案、通称「カジノ法案」だ。 カジノは世界140以上の国や地域で合法化され、教育や福祉財源とするなど活用されているギャンブル。日本が導入に舵を切る理由は何か。

松井 政就

執筆者:松井 政就

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日本政府がカジノ合法化を目指す本当の理由とは?

トランプ氏の大統領戦勝利でTPPをはじめ日本にも影響が出ている中、山場を迎えているのがカジノを含む統合型リゾート施設整備推進法案、通称「カジノ法案」だ。
カジノは世界140以上の国や地域で合法化され、教育や福祉財源とするなど活用されているギャンブル。日本が導入に舵を切る理由は何か。

日本政府がカジノ合法化を目指す本当の理由とは?(写真はマカオのカジノ「ギャラクシー」)

日本政府がカジノ合法化を目指す本当の理由とは?(写真はマカオのカジノ「ギャラクシー」)


カジノは欧米で最もポピュラーなゲーム

カジノとは、ブラックジャックやポーカーなどカード(トランプ)を使ったゲームやルーレットなどのテーブルゲームにお金を賭けて遊ぶゲームだ。近年はスロットが急増しているものの、本来は上のようなテーブルゲームが中心だ。

特にカードを使ったゲームは世界でもっともポピュラーで、日本における囲碁や将棋のように子供の頃から家族で楽しむのが当たり前だ。

ゲーム上の駆け引きで社会を学ぶ欧米の子供

むろん、表向きは子供はお金を賭けないことになっているが、実際はわずかなお小遣いを賭けて真剣にやるのがならわしで、それがいわば自分の責任で決断を下すトレーニングともなっている。

そんなわけで、欧米人にとっては幼少時から馴染みもあり、各国でカジノが普及しているのもいわば当然の話と言えるだろう。

G8でカジノ禁止は日本だけ

一方の日本は、パチンコを筆頭に競馬や競艇など様々なギャンブルが行われているが、これほどのギャンブル大国であるにもかかわらず、世界で最もポピュラーなカジノは禁止されている。カジノが非合法なのはG8の中では日本だけである。

計画しているのは「IR型カジノ」

話の流れ上、日本が想定しているカジノについて前もって説明したい。

それはIR(Integrated Resort)と呼ばれるタイプのカジノで、施設の中心部にカジノを置き、世界各国の料理を出すレストランや世界一流のショーをはじめ、ショッピング、美術館、そして大きなコンベンションセンターなどを併設した統合型リゾートだ。

シンガポールに奪われたビジネスチャンス

でもなぜ、日本はカジノの導入を進めるのか?
カジノがないことでビジネスや観光客の奪い合いで不利が生じているからだ。

とくにシンガポールにカジノが出来てからはその違いがはっきりしている。日本に来てもおかしくない国際イベントや大規模研修ツアーなどがシンガポールに奪われているのだ。

カジノの収益で大規模イベントが運営可能

カジノがビジネスチャンスを呼び込むのは、イベントや娯楽の質や規模が根本的にアップするからだ。

シンガポールには東京ドーム2.6個に相当する広さの約13万人が収容できる巨大イベント会場がある。そんなものは日本では不可能だが、シンガポールで可能なのはカジノの収益で費用を賄えるからだ。

IR型のカジノでは、心臓部となるカジノが稼ぎだしたお金を他の施設に回せるため、単独では難しい事業が可能となるのだ。

子育てなど福祉の財源にもなる

カジノは税収面でもメリットがある。
富裕層が使ったお金が税収として社会に再分配されるのもカジノの機能の一つだ。

日本では保育園の不足など福祉における問題が山積しているが、カジノの収益を回すことで、増税せずに財源の一部を賄うことも可能である。

他国でもカジノの収益は福祉に活用されており、たとえばカナダでは校舎の修繕やスポーツ施設の建設など、地域の教育や文化に投資されている。

私が取材したブリティッシュコロンビア州コキットラムでは、カジノが計画された当初は反対が多かったが、出来た後は福祉の財源が豊かになり、犯罪も増えず、今では批判的な声は全く聞かれない。

合法カジノ設置で違法カジノを撲滅する

ところで、カジノの合法化といっても、パチンコ屋のように街のあちこちにカジノが出来るわけではない。あくまで政府が限定した場所にIRを作り、その中で合法カジノの営業を許可するというものに過ぎない。

つまりカジノ合法化と言うよりも「合法カジノの設置」と言ったほうが誤解が生じない

そんな合法カジノの設置にはもう一つの重要な目的がある。違法ギャンブルの撲滅だ。

いま東京都には200~300軒の違法な裏カジノがあるといわれている。大半がマンションやビルの一室にあるため取り締まるのは困難で、壊れたモグラ叩きのようで何年やってもキリがなく、その売り上げは闇から闇へと流れていく。

実はこれと同じことがかつて他国でも起きていた。
一例がイギリスだ。

ロンドンでの成功例

かつてイギリスでも同様の問題が深刻で、ロンドン市内には100を超える違法カジノがあった。しかし今ではゼロである。合法カジノを設置したことで誰も違法カジノには行かなくなったからだ。

同じ手法が各国でとられ、合法カジノを設置した国では違法ギャンブルは激減した。

つまり違法行為をやめさせるには取り締まりを厳しくしても効果は薄く、合法的な受け皿を作ったほうが有効であることは、こうして世界で実証されている。

民進党などの反対で審議が足踏み状態

以上、ざっと説明してきたようにカジノ合法化および合法カジノの設置が急がれるが、実は民進党などの反対によって法案の審議が足踏み状態となっている。

もちろん党内にも、現実をよく理解し、合法化に賛成している議員も大勢いるが、デメリットを過剰に問題視する声にかき消されてしまっている。

彼らの主張はカジノがギャンブル依存症の元凶になるというものだが、実はいま日本で起きているギャンブル依存症の約95%はパチンコやパチスロといった単純作業を繰り返すマシン系ギャンブルによるもの。

逆にカジノで採用されているテーブルゲームは依存症になる危険性が低い上、カジノ合法化によりパチンコも含めた依存症対策が行えるようになるため、冷静に見れば問題はむしろ解決に向かう。

反対する議員は事実誤認をきちんと認め、福祉への貢献などメリットも正当に評価するなど、良識ある対応に努めるべきだろう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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