2016年4月に発生した「熊本地震」では数多くの家屋が倒壊し、たくさんの尊い命が失われました。そのときのテレビ報道などをみて気になったのは、「ここで大きな地震がくるとは考えていなかった」という住民の話です。

震源となった「布田川断層帯」では、今後30年以内の地震発生確率が「ほぼ0~0.9%」とされていたため、ほとんど地震が起こらないと感じられていたのでしょう。「地震が起こりそうにないから」という理由で阿蘇に移り住んだ住民の方も紹介されていました。

少し遡ると、2007年3月に大きな被害をもたらした「能登半島地震」の際も、震度6強が観測された輪島市や穴水町など能登半島のあたりは「今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率」が0~0.3%程度とされてきた地域でした。

そのときも「予想外」という声が多くあったようですが、これらはいずれも地震発生確率の相対評価で「やや高い」と分類されるのだそうです。

この確率表示が誤解を招く一因になっているとして、政府の地震調査研究推進本部は活断層の長期評価方法を見直し、今後は「Sランク(高い)」「Aランク(やや高い)」「Zランク」「Xランク(不明)」の4段階に分けて公表するとのことです。

それでも、存在が知られている約2,000の活断層のうち、評価対象となっているのは100前後にとどまり、それ以外に未知の活断層も無数にあるとされていることを考えれば、日本中のどこであれ、いつ大きな地震が起きても不思議はないでしょう。

そのため、古い家屋などでは耐震改修工事の実施も急がれるのですが、地震調査研究推進本部が以前に名古屋と松本で実施した調査では、79%の人が自宅の耐震性に不安を感じているのにも関わらず、実際に耐震診断を受けた人は5%程度に留まるという結果も出ていました。

2016年4月時点で全国の市区町村のうち84.3%で耐震診断への補助制度、82.1%で耐震改修への補助制度が整備されていますが、わずか数件程度の利用実績しかないケースもあるようです。

国土交通省がまとめた2016年3月末時点のデータでは、耐震性が不足するとされる約900万戸の住宅のうち、耐震診断実績累計は約108万戸、耐震改修実績累計は約20万5千戸にすぎません。

耐震診断や耐震改修が進まない原因はさまざまですが、「耐震診断を受けても、その後の耐震改修ができない」という世帯の存在を十分に考えなければならないでしょう。

また、多様な人が暮らすマンションでは、「耐震診断をして、耐震性がないというレッテルを貼られたら困る」と考える人も少なからずいるはずです。

国や自治体が単に耐震診断や改修費用の一部を助成したり、耐震改修特別控除でわずかな優遇税制を講じたりしても、なかなか目標とするような改善は実現できそうにありません。

次の大地震が起きるまでに対策が少しでも前に進むことを願うばかりですが、「日本のすべての地域にリスクがある」と一人ひとりがしっかり意識しておくことが大切です。


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(この記事は2007年4月公開の「不動産百考 vol.10」をもとに再構成したものです)


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