数千万円の損を、コツコツ積み上げ型のトレードで取り返す
AさんがFX取引を始めたのは、2000年頃でした。当時の手数料はまだ高く、スプレッドも広かったため、今のように気楽に取引できる環境ではありませんでした。しかも、為替に関する分析や有効な取引手法などの情報も手に入りにくく、Aさんと同じように「値ごろ感だけで取引していた」トレーダーは多かったようです。「大きな損ばかりしていました。例えば、リーマン・ショックの時は1000万円を損切りしました。それよりもひどかったのがアベノミクスの時で、2000万円を損切りしました。どちらも、『そろそろ止まるだろう』と思って、逆張りしたのが敗因。アベノミクスの時は、100円あたりで円安ドル高が止まるだろうと思って、指値を入れていました。まさか、125円台まで円安が進むとは、夢にも思っていませんでした」と、Aさんは話します。
Aさんが大きな損から得た教訓は、「利益が出たら、細かく決済すること」。
「1000円でも2000円でも利益は、利益です。利益を確定してから、新たにポジションをとる方が心に余裕がもてます。これまで欲を出してよかったことは一度もないですから。出かける時、車を運転する時など、値動きを見ていられない時は、できる限り、ポジションは決済するようにしています。細かい利益でも、トレードを繰り返して、利益を積み重ねればいいのです」。
超長期のトレンドに沿って、損をしても我慢できる金額で取引する
Aさんのトレードのもうひとつの特徴は、 「損切しないこと」。 多くの専門家が「素早い損切りが大切」だと教えていますから、Aさんの取引に疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。 もちろん、一切損切りをしないというわけではありません。間違えたと判断したときは、潔く損切りますが、Aさんは「FX取引を始めて10数年、今にして思えば、値段が戻らなかったことがないんです。ドル円ですら、一年に10円から20円は動きますから」と話します。ただし、この手法が成り立つのは、ある大前提があるからです。
それは、「超長期のトレンドに絶対に逆らわず、損をしても我慢できる金額で取引しています。ナンピンも決してしません。損を抱えながら、さらに損を上塗りするような無理をしないことがルール」です。トレンドに逆らわず、低いレバレッジを保っているからこそ、持ちこたえられているのですね。
エントリーのポイントはとてもシンプル。移動平均のみ
さて、Aさんの具体的なトレードをご紹介しましょう。 Aさんが見ているテクニカル指標は、とてもシンプル。「移動平均線3本だけ」です。「移動平均がクロスする時(ゴールデンクロス・デットクロス)にエントリーするのですが、クロスする時の『角度』がとても重要です。角度をもって、勢いよく交差する場合は、値動きの幅が出る可能性が高いですから、決済する幅も広めに考えます。角度があまりない場合は、ダマシを疑う必要もあるでしょう」
ただし、Aさんも多くのトレーダーと同じように、仕事や家事などに追われて、一日中値動きを見ていられるわけではありません。
そこで、「自分がエントリーしたいと思う値段に、指値を入れておきます。例えば、日足チャートで見て、中期移動平均線(20本線)が、短期移動平均線(5本線)より下にある場合、その時のレートが移動平均線から大きく下にかい離していたら、いったんは戻す可能性を考えて、中期移動平均線あたりに売り指値を入れておきます。ポイントは、100%ではなく、80%くらい戻ったところに指値を入れること。
多くの人が『ここまで戻るだろう』と思ったところまでは、なかなか戻らないからです。『頭と尻尾はくれてやれ』という相場格言がありますが、全くその通り。決済する場合も同じで、80%の利益で十分だと思うようにしています。最近では、アルゴなどの影響もあり、レートが思った以上に走ることもありますから、有事の時にスプレッドが広がりにくく、成行注文がしっかり執行する会社を選ぶ必要がありますね」と、トレードのコツを教えてくれました。
最近では、スマートフォンアプリを活用することで、トレードのチャンスも広がったそうです。
FXは人生の余裕であり、世界とのつながり
Aさんは、FX取引で毎月300万円ほどの利益をコンスタントにあげています。だからといって、散財することはなく、堅実な生活を心がけています。「主人のお給料だけで生きていければ、私に仕事がなくなっても生きていけますよね。だから、家のお金には一切手を付けずにトレードしています。生活するためのお金でFX取引をしてしまうと、冷静な判断が出来ませんから。最初の元金も、働き始めた頃にしていた、当時5%~6%くらいの金利があった定額貯金で増えた分だったんですよ」。
男性は野性的、女性は堅実派と言われるトレードの違いがここに感じられますよね。 では、Aさんは、なぜFX取引をするのでしょうか。 ひとつは、「親が子供にあたえられるのは教育だけ」だと考えているからです。子供が望む挑戦を、あきらめることなくさせてあげたいという親心です。 ふたつめは、将来の余裕のためです。
Aさんは、家を建てた時、FXの利益を還元しました。それは、ご主人が驚かれたほどの金額だったそうですが、「現金で買った家と田んぼさえあれば、将来は、畑仕事をしながら、FXができる。FXの利益は、人生の余裕です。また、為替を通して世界とつながっていると感じられるのも、FXの魅力ですから」と話してくださいました。 多くの人が、将来に不安を抱えて生活しています。
リスクを理解したうえで、FXを味方にすることができたら、違う未来が見えてくるのかもしれません。
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