睡眠

結局、何が正解なの?理想の睡眠時間の正しい答え

世の中には短時間の睡眠で頑張れる人もいれば、長時間眠らなければやっていけない人もいます。健康的に過ごすために必要な睡眠時間の答えは、結局のところ何時間が正解なのでしょうか? 今回は、科学的におすすめできる「理想の睡眠時間」をご紹介します。

坪田 聡

執筆者:坪田 聡

医師 / 睡眠ガイド

睡眠は何時間とればよいのか?

理想の睡眠時間

日本人の睡眠時間は、この50年間で1時間も短くなりました

昔は一般的に、8時間睡眠が良いと考えられていました。ところが最近は『8時間睡眠のウソ。(日経BP社:Amazonへリンク)』という本もあるくらいで、どのくらい眠ればよいのか悩んでいる人も多くいます。

日本人約10万人を約10年間にわたって追跡調査した疫学研究では、死亡の危険率がもっとも低い睡眠時間は6時間半~7時間半でした。睡眠時間がそれより短くても長くても、死亡の危険率が高くなることがわかっています。

アメリカやヨーロッパで行われた大規模な調査でも、同じように7時間前後眠る人がもっとも死亡の危険率が低くなっています。これらのことから、多くの人に当てはまりそうな答えとして考えると、7時間前後眠ることがもっとも長生きできそうです。

病気のかかりにくさでも、7時間前後の睡眠時間が良いようです。高血圧や糖尿病、脂質異常症(これまでの高脂血症や高コレステロール血症など)は、7時間前後眠る人が一番なりにくいことが知られています。また、睡眠時間が長すぎたり短すぎたりすると、これらの病気が重症化しやすくなります。

寿命や病気と睡眠時間の関係を踏まえて、厚生労働省も6時間以上8時間未満の睡眠が必要ではないかといっています。

ただし、歳をとるにしたがって、「睡眠力」は衰えてきます。日本人の夜間の睡眠時間は、10 歳代前半までは8時間以上、25歳で約7時間ですが、45 歳では6.5 時間、65歳では 6時間と短くなってきます。ですから、中高年以降は7時間睡眠にこだわらないほうがよさそうです。

私は理想の睡眠時間を、「自分にとって必要十分な睡眠時間」だと考えています。目安は7時間前後あるいは6~8時間ですが、年齢や性別、状況によって変わってくるでしょう。朝は自然に気分よく目覚め、昼食後のひとときをのぞいて眠気を感じなければ、今のあなたにとって理想的な睡眠がとれているのではないでしょうか。

理想の就寝時間は? 何時ごろに眠ったら良いのか

以前は「午後10時から午前2時は睡眠のゴールデンタイム」と、一部でいわれていました。これはまったくの間違いではありませんが、あまり正確でもありません。

深いノンレム睡眠(脳の眠り)のときに、成長ホルモンがたくさん出ます。成長ホルモンは子どもでは成長をうながし、大人では体のメンテナンスを行ってくれます。成長ホルモンがたくさん出る時間を午後10時から午前2時と思いこんでいたため、この時間帯が睡眠のゴールデンタイムと呼ばれるようになったのでしょう。

実際には、成長ホルモンがたくさん分泌される深いノンレム睡眠は、「寝ついてからの約3時間」に多くあらわれます。それは、真夜中をはさんだ4時間とは限りません。「時刻」よりも「寝ついてからの経過時間」に、関係が深いのです。

とはいえ、全くの間違いでもありません。睡眠には脳の眠りであるノンレム睡眠と、体が眠って脳が活動しているレム睡眠の2種類があります。ノンレム睡眠のうち特に大切な深いノンレム睡眠は、寝ついてから早い時間帯に現れ、時間がたつにつれて浅いノンレム睡眠が増えてきます。一方、レム睡眠は早朝以降に現れやすくなります。

普通はノンレム睡眠とレム睡眠がバランスよく現れて、グッスリ眠れます。ところが遅い時刻、たとえば午前3時から眠ったとすると、寝ついてからすぐに現れるノンレム睡眠と、早朝に現れやすいレム睡眠がけんかするため、睡眠のリズムが狂って睡眠の質が悪くなります。

これらのことを考えて、私は「一般的な大人の方は、ひどい夜型でなければ午後10時~12時には眠るようにしましょう」とお話しています。

昼寝は何時間が限度? 適切な仮眠時間

日本では仮眠の研究が盛んです。仕事の効率を上げて、ミスや事故を減らすためには、眠気をコントロールする必要があるからです。これまでの研究から、昼寝は午後3時までに若い人で20分、高齢者で30分以内にとどめておくことが良いことがわかっています。

夜の睡眠は深く眠ることが大切ですが、昼寝にグッスリ眠ってしまうと、目覚めにくくなり、起きてから頭がきちんと働くまで時間がかかってしまいます。若い人では20分を超えて眠ると深い睡眠になりやすいので、20分までの昼寝が勧められています。高齢者は眠りが深くなりにくいので、30分まででもOKです。

「午前の仮眠は前夜の睡眠不足を補い、午後の仮眠はその夜の睡眠を先取りする」といわれています。ですから、午後の遅い時刻に昼寝すると、夜の睡眠に悪影響が出ます。これらのことから、午後3時までに20分(高齢者は30分)の昼寝が勧められています。

効果的な二度寝の活用法・スッキリ目覚めるコツ

早く起きなければいけないと思いつつも、惰眠をむさぼってしまう「二度寝」。あとで後悔するにしても、こんなに気持ちが良いことは他にあまりありません。しかしこれまで睡眠医療の世界では、二度寝はしてはいけないものとされてきました。二度寝すると浅い睡眠が続くだけで睡眠の価値が少なく、睡眠の効率も落ちてしまうからです。

私は気持ち良い二度寝を広めようと活動しているのですが、最近、力強い味方を見つけました。広島大学の研究では、一度しっかり目を覚ましてから20分間の二度寝をすると、眠気が減り気持ち良く起きられるそうです。昼寝は20分がお勧めですが、二度寝も20分がキーワードのようです。くれぐれも、二度寝が三度寝、四度寝とならないように注意してください。

理想的な睡眠の基本についてもっと知りたい方は、過去記事「睡眠のメカニズムとリズム」「パワーナップ! 午後は20分の昼寝から始めよう」「5分間の二度寝が1日を幸せにする」も合わせてご覧ください。

▼参考サイト
健康づくりのための睡眠指針 2014 厚生労働省(PDF)


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