秋はセンチメンタルでさみしい? 秋に気持ちが落ち込むのはなぜ?
秋から冬にかけて気持ちが落ち込みがちになる人は多いもの。不足しがちな日照量を積極的に補うことも冬季うつへの効果的な備えです
日照時間が短くなるに連れて、気持ちまで沈みすぎてしまわないよう、知っておいていただきたい精神医学的なアプローチ法を詳しく解説します。
うつ傾向を自分で止めたい……気持ちの落ち込みを止める3つの方法
冬季うつに限らないことですが、気持ちの落ち込みを感じるときは自分の本当の気持ちを正しく知り、心を揺さぶっている重圧について認識する必要があります。避けたいのは、気持ちが落ち込んでいるのに、対処の必要性に気付かないことです。例えば、気持ちの落ち込みは自分が弱いせいだ、といった観念が強い方の場合、気持ちの落ち込みが深刻化していても、なかなかそれを認められず、対処が遅れてしまうことがあります。抑うつのレベルが軽ければ、自分でできる心理療法的なアプローチで充分対策できます。まずは対処の必要性を見極めるためにも、気持ちの落ち込みの有無とそのレベルをしっかり見極めたいところです。秋の気持ちの落ち込みや冬季うつ病予防には、以下の3つの方法が有効です。
- 秋から冬の日照量不足を補う
- 日常的なストレス対策を強化する
- 抑うつ思考にストップをかける
秋から冬の日照量不足を補う……日常的な外出・アウトドアの薦め
冬季うつ病の原因の一つは、秋から冬にかけての日照時間の短さにあります。詳しくは「冬季うつ病の特徴・症状」をご覧いただきたいのですが、これから日照時間は日増しに短くなっていきます。気持ちの落ち込みが深刻化してしまった冬季うつ病に対しては、短い日照時間を補うために人工光を浴びる「光療法」が効果的な治療法になっています。治療を受けるほどではないという方も、気持ちの落ち込みの自覚がある状態で、陽の光を浴びない生活を続けていると、それが長引いていく可能性があります。一日中屋内で仕事をしている方も、昼休みはちょっと外へ出て日光を浴びるなど、できる限り屋外に出るよう心がけることが大切です。
日常的なストレス対策を強化する……対人スキルUPも効果的
毎年この時期は気持ちが落ち込むという方も、多くの場合は日常生活には支障がないレベルでしょう。しかし他に深刻な問題を抱えている場合、気持ちの落ち込みが例年以上にひどくなってしまう可能性もあります。実際、精神症状はストレスの影響を強く受けます。心身に掛かるストレスが増せば増すほど、精神症状は増悪しやすい傾向があります。多くの人のストレス要因として、対人関係上の問題があり、問題の状況やレベルはさまざまですが、それを解決したり未然に予防するために大切なのが「コミュニケーションスキル」です。
心の健康を損なってしまった患者さんが発症前の生活レベルに戻るためにも、とても重要なこのスキル。簡単に言えば、対人状況で自信をもって堂々と振る舞うことができるようにする訓練プログラムも、心理社会的治療法の1つです。一般的なプログラムでは、考えられる対人状況をいくつかのパーツに分けて、それぞれのシーンでの理想的な振る舞いをひとつひとつ患者さんが反復練習することで身に付けていくことになります。スキルの習得法としては、お手本とする人物の振る舞いをひとつひとつ真似て、その人に近づいていくことに類似点があります。
気持ちを落ち込ませる要因は多々ありますが、対人関係が苦手で気持ちが落ち込みやすい人は、対人スキルを上げることも、気持ちを楽にするために有効なアプローチ法なのです。
カウンセリングや治療という形で受けなくても、対人スキルが上手な誰かをお手本に、ひとつひとつ(こっそり?)真似ていくことで、その人に近づいていく……といった方法が、コミュニケーションの訓練プログラムと類似していて有効だということも、ぜひ覚えておいてください。
抑うつ思考にストップをかける……嫌なことは意識的に考えないようにする
気持ちの落ち込みに対しては、認知行動療法的なアプローチもかなり役に立つはずです。特に、気持ちが暗くなるような事ばかり考えてしまう状況では、認知行動療法はかなり効果的。「嫌な事は考えない」ということも、認知行動療法的に正しい方法なのです。なぜなら悲観的な思考は必ずしも現実を正確に反映していません。他人から見れば過剰に悲観している場合も少なくありません。認知行動療法を通じて現実認識が正確になってくると、かなり楽になるはずです。
認知行動療法はさまざまな精神症状に対処します。抑うつ症状に対しては、その引き金になった思考、あるいはそれを増幅させるネガティブな思考の流れにストップを掛ける事が重要な治療目標です。
もっとも一旦悲観的な思考の流れに入ってしまうと、気持ちがさらに落ち込みやすくなってしまうことは、多くの方が日常的に気付いていることでしょう。嫌な事が頭に浮かんだときには、半ば無意識のうちにそれから逃れるべく、何か別の事をするようにしているという方もいるかもしれません。例えば、何か嫌な事があって気持ちが冴えないときに、誰かに電話したくなるのもそうです。誰かと話すことで気持ちが楽になったなら、何もせずに悲観的な思考の流れに入ってしまうことを見事に防いだとも言えます。
寒くなるにつれて何となく気持ちがしんみりしてしまうこと自体は、もちろん異常なことではありません。但し、何だか落ち込んだ気持ちになっても、暗い気持ちに拍車がかかるようなことは考えないことが第一。ついつい考えこんでしまったら、それにストップをかけられるような具体的な対処法を用意しておくことは、立派な認知行動療法的な対策法といえます。
以上、冬季うつの対策として、まずその原因となる日照量不足への対策、そしてストレス対策の重要性、さらには抑うつ思考にストップをかける意義などを詳しく解説しました。秋の夜長は何かをじっくり考えるには最適でしょうが、くれぐれも健康を害するような抑うつ思考に浸ることがないようにご用心ください。