仕事が速くて稼ぐ人は、既成事実の作り方がうまい
ビジネス上では、既成事実を作ってしまえば承認するしかない、という場面はよくあります(他人に損害を与えたり悪意を持ってやることは除きます)。仕事が速くて稼ぐ人は、この既成事実の作り方がうまいものです。営業でも、「すみません、この値引きで契約取ってきちゃいまいました」と事後報告します。その値引き額も会社から見て「仕方がないな」と思わせるレベルでうまく落としています。これなら上司も、その営業マンに注意はしても、撤回はできないでしょう。
私が出会ってきた優秀な営業マンはたいていこのタイプで、事前に承認を受ける場合でも「この金額でいいですよね、ね、これですぐ契約してくれると先方も言ってますから。ねっ!」と私の目の前で携帯電話越しにねだっていました。(もしかすると演技だったのかもしれませんが)
もちろん値引きをするのが必ずしも良いということではなく、会社によってはスタンドプレーになったり業務規定違反になったり、問題になる場合もあるでしょう。それに会社としてはやはり利益の確保は重要ですから、これはあくまでも一つの例に過ぎません。しかしこの例に限らず、彼らは「こうするべき」と思ったら、まず結果を出して、その実績を引っ提げて自分の要求を押し通そうとします。
私の知人が経営する注文住宅を請け負っている工務店での話です。その社員の一人が、資料請求してきた顧客のフォローのため「ダイレクトメールを送りたい」と言ってきました。文章も自分で作るといいます。そしてこうも言われたそうです。
「印刷や発送の費用も全部僕が自腹を切ってやります。でも、もしこれで1件でも成約したら、あとでその費用を精算してもらっていいですか」
結果は3件成約し、その成果に気をよくした社長はもちろんそれらコストを精算しました。そしてこのDM手法はその後の会社の主要な販促手段となっています。当の本人も、自分の好きな「手紙を書く」ことを自分の仕事にすることができ、趣味の延長なような感じで楽しんでいるそうです。
私が以前勤めていたコンビニでも同じような人がいました。
優秀な人間ほど、本部に「なんとかしろ」と要求するのではなく、たとえば自腹で販促グッズを買ってきたり、POPを作ったりして加盟店に配っていました。そして売上が上がるなど効果が出たものについては、本部から全店に配布されるようになりました。
商品開発部に「東急ハンズでこういう商品を見つけたんだけど、ウチでも商品化できないか」という提案をするときのサンプルも、自腹で買っていました。このうちのいくつかは実際に商品化され、店頭に並んだものもあります。
これは先ほどの営業の話と同じですが、値引きをするのが良いということでも、自腹でやるのが良いということでもありません。仕事が遅い人は、「やるべき・変えるべき」と思っても、自分がやらずに「会社がやれ」「あの部署がやれ」と他人に押し付けようとします。
会社の会議でもたくさんの「やるべき論」が出るし、生意気な新入社員が「こんなのはおかしいから変えるべきだ」と言い出すこともあるでしょう。
しかし「言うだけ番長」では誰も動いてくれない。
まずは自分がやって実際に成果を出すことです。そうやって既成事実を作ってしまえば誰も反対はできないし、当初反対していた人だって変わらざるを得なくなります。それこそが変革のきっかけであり、自分がやりたい仕事のスタイルを作ったり、自分が成果を出しやすいように会社を動かす第一歩となるのです。
参考文献:『仕事が速いお金持ち 仕事が遅い貧乏人』(学研プラス)