2014年あたりから大都市の中心部などで地価の上昇が顕著になり、建設費や人件費の上昇なども相まって新築マンション価格もだいぶ高くなりました。

不動産経済研究所のまとめによれば、首都圏では2016年5月まで新築マンション価格が単価、総額とも12か月連続で上昇しています。その後、前年同月比で下落する月が何度かあったものの、2017年1月および7月は平均価格が6,000万円を超えています。

2008年9月のいわゆる「リーマン・ショック」前にも同じように新築マンション価格の上昇時期があったのですが、その当時に起きていた問題を少し振り返っておくことにしましょう。

新築マンション価格の上昇傾向は2005年あたりから表れ始め、その後2007年頃になると「新価格」「新新価格」などといわれるような販売価格の引き上げが目立つようになりました。

その背景には不動産ファンドなどの資金により投資目的で一棟丸ごと買い上げる動きもあり、それ以前にはなかったようなトラブルも生まれていたのです。

大規模マンションや超高層マンションなどは工期が長く、1年前あるいは2年前に売買契約を締結して買主が手付金を支払っているものの、引き渡しはまだ済んでいない、というケースも少なくありません。ところが、その間に周辺の相場がかなり上昇していることもあります。

それを不動産ファンドが買収しようとして高値を提示すると、マンションの売主業者は各部屋の買主に手付金の倍額を支払ってそれぞれの契約を解除したうえで、不動産ファンドに一括売却したほうが、差し引きで儲かるというケースもありました。

契約を解除される側の買主からすれば、「手付金の倍返しを受けて儲かった」などと喜ぶわけにはいきません。その間の周辺相場の上昇で、代わりの物件を新たに探そうとしても資金計画が大きく狂ってしまうだけだったでしょう。

このような売主業者からの契約解除を「不法行為」だと考える人がいるかもしれませんが、意図的な契約解除や他者への再販などを制限する法律はなく、残念ながら売主業者のモラルの問題でしかありません。

「わざと契約を解除する権利」を保護するのが手付解除の規定でもあるため、「モラルのない会社」として批判されるリスクを冒しても、目先の利益を優先する不動産業者が存在することは否定できない事実でしょう。

もともとは買主の保護を目的に、手付金が少し低額に抑えられる傾向も強かったのですが、このような事態が起きると、手付金の額が少ないことがかえって買主には不利な結果となってしまうこともあります。

その当時に、不動産業者を監督する立場の役所に勤める人から、「買ったマンションを売主から解約された。どうすればいいんでしょう?」と個人的なご相談もいただきましたが、現在のマンション価格上昇のなかでこのようなことがあまり起きないことを願うしかありません。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年8月公開の「不動産百考 vol.14」をもとに再構成したものです)


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