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日経平均下落も、東証マザーズ指数は10年来高値を更新

円高が進み、日経平均は1万6000円前後まで下落しています。しかし、東証マザーズは10年来高値を更新している状況で別世界です。どうしてこのような差が出るのか、今回はその真相に迫ります。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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日経平均下落も、東証マザーズ指数は10年来高値を更新

日経平均が年初来安値が視野に入ろうとしている一方で、東証マザーズ指数は10年来の高値を更新。その背景にはバイオ銘柄の躍進がありますが、この動きは今後も続くのでしょうか?

日経平均が年初来安値が視野に入ろうとしている一方で、東証マザーズ指数は10年来の高値を更新。その背景にはバイオ銘柄の躍進がありますが、この動きは今後も続くのでしょうか?

円高が進み、日経平均は1万6000円前後まで下落しています。チャートを見ると、50日移動平均線を下に突き抜けました。もっとも、短期間に急落しているものの、テクニカルに売られ過ぎというサインはまだ出ておりません。ファンダメンタルズ的にも日経平均のPERは14.8倍ほどと、割安感までありません。今後、企業業績の下方修正により、EPSが下落すればPERは割高にもなっていきます。業種別では水産・農林、食料品、石油・石炭などが比較的マシであり、年初来ではREIT、通信も健闘しています。一方、銀行、保険、海運、証券が最も大きなダメージを受けており、ディフェンシブ株優勢の模様です。16年5月6日(金)までの年初来騰落率は▲15.4%安と大幅にマイナスです。

一方、マザーズ市場は別世界の様相であり、年初来+33.1%高と、突出した動きとなっています。東証マザーズ指数は2006年以来という、10年来の高値を更新しているところです。しかし、同じ東証マザーズでも、マザーズ・コア上場投信(1563)を見ると年初来▲5.0%安とマイナスに沈んでいます。マザーズ・コア上場投信(1563)は東証マザーズCore指数(東証マザーズCore指数は、東証マザーズ市場に上場する内国普通株式のうち、時価総額、売買代金、利益及び配当状況等を考慮して選定する15銘柄により構成される指数)を対象指標とする上場投信(ETF)です。これはどういうことなのでしょうか? 実は東証マザーズの構成銘柄に占める構成ウェート上位銘柄は大きく様変わりしています。日本取引所グループのHPを見るとマザーズCore指数の定期選定は2015年10月7日に公表されており、銘柄は下記のようになっています。
マザーズCore指数の15銘柄は2015年10月7日公表されたもの(日本取引所グループのHPより)

マザーズCore指数の15銘柄は2015年10月7日公表されたもの(日本取引所グループのHPより)

バイオ銘柄が急激に上昇

ところが、2016年5月6日(金)時点の東証マザーズ指数の構成ウェート上位10銘柄を見てみると、下記の通りとなっています。上位10銘柄のうち、バイオ銘柄が6銘柄も占めています。
2016年5月6日(金)時点では東証マザーズ構成ウェート上位10銘柄のうち6銘柄がバイオ銘柄に!

2016年5月6日(金)時点では東証マザーズ構成ウェート上位10銘柄のうち6銘柄がバイオ銘柄に!

2016年の日本株相場展望と注目のテーマはコレ!でご紹介したとおり、一部のブロックバスターを持つ製薬会社の業績が良くなり始めたり、上市(発売)が迫る新薬を抱えるバイオ銘柄が増えてきたため、バイオ銘柄が全般的に注目されたのです。たとえば、構成ウェート1位のそーせい(4565)は安定的収益基盤持ちながら、売上規模1000億円を超えるブロックバスター候補薬をいくつか持っています。結果として、そーせい(4565)は年初来で2.46倍となっていますし、前述の記事でご紹介したペプチドリーム(4587)も年初来で1.62倍、2016年はバイオの当たり年!次の有望銘柄は?でご紹介したメディシノバ・インク (4875)が年初来で1.69倍となるなどしています。

世界的には金融相場継続でリスク志向続く

では、なぜ日経平均は下がっているのに、これらのバイオ銘柄は上昇しているかと言うことですが、これは世界的には金融相場が続いていることが理由と思います。つまり日経平均は円高の影響で下がっていますが、世界的には金融相場が継続しており、成長が期待できそうなものには資金が流入する地合いとなっているのです。

2015年12月に米国FRBは9年半ぶりの利上げを実施しました。しかし、利上げにもかかわらず、米国の長期金利は下がり続け、反対にニューヨークダウやS&P500は過去最高値に迫り、新興国株や資源も息を吹き返しました。これは利上げによって2016年1-2月に世界的な株価急落を招いたことから米国の利上げ観測が後退したことや、日本や欧州が金融緩和を継続しているため(日欧ともにマイナス金利)、利下げ圧力が米国にもかかり、長期金利が下落しているのだと思われます。金利が低い状態であればリスク資産に資金が流れやすくなります。
利上げをしたにもかかわらず下落する長期金利

利上げをしたにもかかわらず下落する米国長期金利

このように世界的には金融相場継続でリスク志向が続いているのですが、今回は同時に、米国の利上げ見通しが後退したため、高金利通貨として上昇していく筈だった米ドルの下落を招き、結果として円高やユーロ高が起こり、その余波を受けて、海外売上比率の高い大手を多く構成銘柄に持つ日経平均や、欧州の株式市場は下落しているわけです。ドル安や米国の金利低下の恩恵を受ける資産が上昇し、悪影響を受ける資産が下落しているのが現状だと思います。その流れで、リスクを求める資金が為替の影響を受けず、将来の業績拡大が期待できるバイオ銘柄(や一部のIT銘柄)に流れ込んだのだと思います。

問題は今後どうなるか?ということですが、バイオ銘柄も相当、株価が上昇してきたところですので、警戒すべき段階に入ってきたことは間違いありません。「バイオ株で億以上を稼ぎました」というような声がちらほら聞こえてきているあたりもそろそろ天井を示唆するところとも思います。また、東証マザーズ指数は50日移動平均線から40%程度上方乖離すると警戒圏に入りますが(2013年はそのあたりが天井になった)、現在は既にその圏内に入っています。むろん、必ずそこで反落するというわけではなく、2003-2004年のケースですと、一旦反落するものの、その後反発してさらに高値を追っていきました。他方、世界的な低金利傾向は今後も続きそうですが、株価の下落しやすいセルインメイ期間(5-10月)に入ったところでもあります。たとえば、セルインメイ期間(5-10月)に世界的な株価下落となれば日本のバイオブームも終焉に向かう可能性が高くなると思います。ともあれ、どちらに振れても大丈夫なように、警戒しながら高値を追っていく期間であるように思います。

□参考記事
セルインメイで日経平均は更に下がる?

参考:日本株通信

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