情報弱者はお金を失ってしまう
情報格差を縮めるためには
たとえば一口に「咳が出る」といっても、カゼによるものだけではありません。咳という症状が出る病気は10種類以上あると言われており、医師は問診や検査で病名を突き止めようとします。これは多少の医学知識を持つ程度では、なかなか見分けがつかないでしょう。
しかし税金でも法律でも医療でも、人による能力差があるのはどの世界でも同じです。従事する全員が完璧な知識と技術を持っているわけでもなければ、全員が最新技術や最新情報の研究・習得に熱心なわけではありません。
つまり、一般人と医者との間にある情報格差だけでなく、医者と医者との間にも、巨大な情報格差があると考えられます。
現実にも、ある病院での検査では問題ないという診断結果だったのが、別の病院に行くと重大な病気が発見されたということもあるでしょう。医者も完璧ではありませんから、見落としたり、勘違いすることもある。医師の主観や価値観もある。
法律や制度といった人間が作った枠組みの中でのプロフェッショナルサービスならある程度の正解は導けるかもしれませんが、医療、もっと言えば生命と健康に関してはもっと不確実であり、わからないことはたくさんあります。
エビデンスや根拠があるものもあれば、ないものもある。効果があると認められた治療法や健康法が、後年に別の研究によって覆されることはよくあり、その逆もあります。
にもかかわらず、「医者にかかればなんとかなる」「検査をすれば原因がわかる」「医者の言うことはすべて正しい」「薬を飲めば治る」という、医療業界にお任せ的な消費者意識の欠如は、情報の非対称性にさらに拍車をかけることになります。
供給者の論理に飲み込まれてはいけない
もっと顕著なのが医療機関以外で供給される健康食品や健康法です。情報の非対称性を放置すれば、供給者の論理に飲み込まれ、本当は効果効能がないものでも高いお金を出して買わされることになりかねません。たとえば私たちが何か商品やサービスを買うとき、性能やらスペックやら効能をよく調べてから買うと思います。情報を集め、比較したり裏を取ったりします。
それが賢い消費者になる一つの方法であり、医療や健康にも同じことが言えるはず。
しかし実際には、特に健康に関してはそれをやらない消費者が多いからこそ、健康ビジネスが一大産業になっているわけです。
そして世の中で販売されている健康食品、サプリメントの類のほとんどは、医学的に効果効能は証明されていない、ただの食品に過ぎないことがわかっています。
しかしインターネットが発達した現在、検索すれば、医学論文すら閲覧できます。素人でも簡単に専門知識にアクセスできますから、私たちの意識改革と行動改革によって、医療や健康に関する情報の非対称性は、もっと小さくすることができます。
他人の情報を鵜呑みにして特定の健康法を妄信するのではなく、自分の価値観を後押ししてくれる情報しか見ようとしないのではなく、あふれる膨大な健康情報の中から、自らの冷静かつ論理的な思考を通じて考え、実践する。
そして自分の体調に敏感になり、合わないと思ったら軌道修正し、自分だけのベストな健康法を体得していく。
これは、投資やビジネスでも同じことではないでしょうか。
参考文献:「資産5億円を築いた私の お金が増える健康習慣」(アスペクト)