最近は「地方創成」が叫ばれ、「東京一極集中是正」も大きな課題とされていますが、そのためには大都市への流入人口を減らすだけでなく、大都市から地方都市や農山漁村へ移住する動きを活発にすることも必要でしょう。

内閣府ではこれまで何度か「都市住民の農山漁村への定住願望」などについての世論調査を実施しています。平成26年6月調査のものは「農山漁村に関する世論調査」、平成17年11月調査のものは「都市と農山漁村の共生・対流に関する世論調査」となっていました。

平成26年の調査結果によれば、都市住民のうち農山漁村地域への定住を希望する人は20歳代が最も多く38.7%に達しています。前回(平成17年)調査のときは30.3%でしたから、3割近く増加していることになります。

前回調査でも20歳代の定住願望が最も高く、30歳代や40歳代以上を大きく上回っていました。

ただし、20歳代の「定住実現の時期」はおよそ半数が「20年以上先」であり、すぐに移住の動きへ結びつくものではありません。それに対して50歳代以上では「すぐにでも」「5年以内」「10年以内」が6割を超えるため、やはり定年を一つの区切りとして考える人は多いのでしょう。

その一方で、平成26年調査において農山漁村への定住を望む男性が36.8%だったのに対し、女性は26.7%と大きな差があることにも興味をひかれます。

以前、「定年後の住み替え」に関する別の民間調査でも、「男は田舎へ、女は都心へ」という傾向が出ていたように記憶していますが、年齢を重ねてもアクティブに生きたい女性が多いのかもしれません。

それを裏付けるかのように、「農山漁村地域に定住して過ごしたいこと」の項目では、「地域の人たちとの交流・ふれあい」「自然観察(星空、ほたる、山野草、ホエールウォッチング、イルカウォッチングなど)」を挙げる女性が、男性よりも圧倒的に多く、逆に男性のほうがかなり多いのは「農林漁業(主な所得源として)」です。

さらに、農山漁村地域の居住者が考える「都市住民が定住する際の問題点」では、「買い物、娯楽などの生活施設が少ない」「地域内での移動のための交通手段が不便」を挙げる女性が、男性よりもかなり多くなっています。

逆に男性のほうが女性よりだいぶ多く挙げるのは、「介護施設、福祉施設が少ない」でした。

老後の生活拠点を考えるときでも、女性のほうが外交的でアクティブな視点を持っているといえるでしょう。

一時期は、定年を機に郊外の一戸建て住宅を売却して都心のマンションに移り住むような動きも見受けられたのですが、最近は都心部における住宅価格の値上がりも目立っており、当分は郊外から都心への買い替えは難しいかもしれません。

そのぶん、地方都市や農山漁村への移住も現実的な選択肢として考えたいところですが、まずは夫婦間における考え方の違いを調整することが大きな壁になりそうです。「移住する、しない」が熟年離婚の原因にならなければよいのですが……。

農山村の住宅

農山村で暮らしていくにはそれなりのメリットもデメリットもある


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2007年10月公開の「不動産百考 vol.16」をもとに再構成したものです)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。