不妊症

内科的視点から支援できる不妊治療とは

今回はこの4月27日に横浜市で開業されるホリスティッククリニック横浜院長の井上宏一先生に取材をさせて頂きました。井上先生は内科・小児科専門の医師です。不妊治療は通常婦人科が専門で行うものですが、実際にこれまでの井上先生の外来を受診した不妊の患者さんが、妊娠されているのだそうです。詳しくお話を伺ってきました。

執筆者:池上 文尋

今回はこの4月27日に横浜市で開業されるホリスティッククリニック横浜院長の井上宏一先生に取材をさせて頂きました。

井上先生は内科・小児科をご専門にされている医師です。通常、内科や小児科と婦人科である不妊治療とは専門が違うので結びつきはありません。しかし、実際、今までの井上先生の外来に不妊の患者さんが来て、妊娠をしています。

なぜそのような事が起きるのでしょうか? 詳しく伺ってきました。

内科的視点から不妊治療を見ることの意味とは?

私は通常、内科診療を行っていますから、不妊治療をされている方を選んで診ている訳ではありません。しかし、風邪をひいたり、腹痛を起こされたりすると内科に診療に来られるので、その時に不妊治療をしているというお話を聞く事があります。

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院長の井上先生です。

私の診療は患者さんの背景や生活スタイルをじっくりと聞くというスタイルなので、そういうこともお話し頂けるのかもしれません。

そこで、不妊治療をされている方が意外と多い事に気づきました。そして、その方々には共通点があることに気づきました。

それは不妊治療をされている患者さんの意識は婦人科診療における「子宮や卵巣の疾患や生殖医療、特にホルモン治療や高度生殖医療について」に意識が集中しており、その内容と結果に一喜一憂している方が多いということです。

しかし、内科医から見るとちょっと待って!という見逃せない事実もいくつかありました。

例えば、食事をきちんと摂っておらず、血液検査で調べると栄養失調になっているケース、ストレス状態が続いており、副腎疲労を起こしているケース、アレルギー状態が継続的に続いているケースなど、妊娠・出産に向けて基本的な土台であるカラダづくりが出来ていない方が多いのです。

そこで、何人かの不妊治療の患者さんに内科的なアドバイスとサポートを提案してみました。

皆さん、患者さん側としては初めての内科医からのこのような提案だったので驚かれた様子でしたが、自分のカラダの不調は感じておられたので、一様にぜひやってみたいということで各患者さんに合わせたカウンセリングと治療を開始しました。

それで妊娠される方がちらほらと出てきたのです。これは内科的な治療が直接的に効果を発揮したのかどうかは分りませんが、何年も不妊治療をされてきた方々が妊娠に至ったということで、非常に喜ばしい事だなと思いました。

内科的不妊治療を新しいクリニックでやろうと思ったきっかけは?

今年の1月に友人の勧めでNPO法人Fineの代表である松本亜樹子さんの出版記念講演会に参加することになりました。Fineは不妊治療の患者さんを支援するNPO法人です。

松本さんは『不妊治療のやめどき』という本を出版され、その出版記念講演会でした。

その会場には日本の不妊治療の第一線の現場で活躍されるナースや胚培養士の方、ジャーナリストの方が来られていました。

テーマはかなりシリアスな内容でしたが、和気藹々と患者さん達をどのようにサポートしていくのかというテーマに沿って話が進んでいきました。

その中で内科医の意見を話させてもらったり、懇親会で自分の不妊治療に対する考え方をお話ししたところ、皆さん一様に「それはぜひやって頂きたい!」と言って頂きました。

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入口の様子です。

婦人科と泌尿器科がメインの不妊治療だけではなく、「違う観点からも治療をしていくことは患者さんのQOLにも妊娠率向上にも有用なのではないか」と言って頂きました。

ということで、自分でクリニックを作る時にはその外来を作ろうと思った訳です。

実際、どのような診療、検査を考えられていますか?

当院の治療スタイルは患者さんの過去をさかのぼって聞いたり、日常の様子を質問して、どのように考え、どのような生活をされてきたのか伺うことにより、なぜ病気になったのかを一緒に読み解いていくことを得意としています。

例えば、通常、クリニックに行くと症状は?と聞かれ、
「1週間前から胃が痛いんです。」というと
「あ~そうですか、じゃあ胃の薬を出しておきますから、何か問題があるようなら3日後に来てください。」
と言う感じでさらりと流れていくのではないかと思います。

でも、私の場合、こうなります。
「1週間前から胃が痛いんです。」
「1週間前に胃が痛くなるような出来事とか、何かありませんでしたか?例えば、夫婦げんかしたとか、上司に怒られてへこんだとか?」
「えっ、そんなことでこんなに長く痛くなるんですか?」
「ありますよ。」
「実はうちの嫁と姑がけんかしまして、その間に入って大変なんです。」
「それは大変ですね。ひょっとしてそのストレスで暴飲暴食とか、お酒飲みすぎたとかありませんか?」
「はい、うっぷんがたまるのでお酒の量も増えています。」

と言う感じで、原因の本質に徐々に近づいていきます。そこで、原因となることの解消と身体的症状の緩和の両方を考えて、治療をスタート致します。

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受付の様子です。

よって、お話しする時間が長くなるケースが多いので、自由診療の枠を確保して、一人一人の患者さんとしっかりと向き合って治していくスタイルを取っています。

保険診療ではそういう事が点数で認められていないので、自由診療になるという訳です。

実際の治療については患者さんのカラダの状態をきちんと検査し、その上で、いまどのような状態なのか?そして、どの部分を改善すると健康をよりよく維持できるのかをチェックします。

具体的に言うと一般的な内科の検査はもちろんのこと、下記のような検査も行います。
  • 酸化ストレス測定(d-ROMs)・抗酸化力測定(BAP)…体の中で活性酸素ができやすい状態、またそれらを中和する能力を見る指標、あらゆる病態の背景にある異常の程度をみるスクリーニング検査
  • 毛髪ミネラル検査重金属検査・重金属の蓄積の診断
  • 唾液中コルチゾール測定副腎疲労症候群の診断  
  • 遅発型フードアレルギー検査遅発型フードアレルギーの診断  
  • 有機酸尿測定吸収不良、腸内毒素を調べ消化機能の異常、腸内酵母の異常増殖の診断します

たぶん、通常の内科では見る事のない検査だと思いますが、欧米のアンチエイジングクリニックなどでは当たり前の検査となっています。

といっても、これらの検査は決して不妊治療の方のためのものではありません。今の現代社会を取り巻く子どもから大人まで、あらゆる有害物質や体質に合わない食べ物が体内に取り込まれ病気の大元を作っています。それらの原因を調べる検査なのです。

これらの検査により、ストレス度、未知のアレルギーチェック、腸内の状況、抗酸化力などが分かります。

今まで、なぜ自分の調子が悪いのか?なぜ様々な病院に行っても治らなかったのか?という不安を抱えていた方がこれらの検査を受けて、明らかな原因を見つけたケースも多く、不妊治療を受けられている方にも有効なケースがあると思います。

ただ、自由診療でコストもかかるので、むやみやたらにするようなことは絶対に避けないといけないと思っています。お話を伺った上で、その原因をきちんと知りたいという希望があって初めて検査していくものかなと思っております。

お話の中で問診をさせて頂き、検査をさせて頂いた上で、どのような治療や指導をしていくのかを決定します。

それもこちらが一方的に押し付けるものではなく、このような選択肢とこのような効果があるということをお伝えし、話し合いの中で治療を選択していくスタイルになるかと思います。

また、心理的なサポートや生活習慣の指導を同時にさせて頂く事になるかと思います。

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