ドクターやナースに不妊治療について取材していると時々、ぽつりと話されることがあります。「不妊治療で来られている患者さん達は身体の事だけではなく、そこには様々な人間模様があるんだよ」と。

そこで本日はある夫婦のケースを取り上げてみます。


不妊をきっかけに離婚へ

PCO
不妊治療において夫婦同士の会話は必須です。
Aさんは結婚5年目の35歳、大手の電機メーカーに勤める女性です。Aさんの旦那さんも同じ職場結婚と言うことで、違う部署ですが可能な限り一緒に出勤していました。

Aさん自身は結婚当初から子供が欲しいと思っていたのですが、旦那さんはその会社の海外との折衝窓口ということで海外に行くことも多く、忙しいのでなかなか家に帰れない日々が続きました。

そんな忙しい旦那さんを説き伏せて、近くの不妊専門クリニックへ通うようになりました。そして検査をしたところ、両方に不妊の原因があることがわかりました。旦那さんは乏精子症、Aさんは卵管の閉塞と子宮筋腫で両方とも治療をしていく必要性があるとの診断でした。

しかし、旦那さんは自分の治療に消極的で、Aさんのみの治療が開始されました。そして、Aさんの身体の問題は治療が進むにつれて徐々に解決されたのですが、肝心の旦那さんは忙しい事も影響して、治療を嫌がり、なかなか進まない状況でした。

そしてAさんはクリニックでその悩みを打ち明けて、気持ちを高めて、なんとか旦那さんに理解をしてもらうと努力をしましたが、遅々としてその試みはうまくいきませんでした。そして、不妊治療をきっかけにだんだん夫婦仲がうまくいかなくなってきて、検査から1年後、最終的に別れる事になりました。

別れたいとAさんが話をした段階になって旦那さんは事の深刻さを理解したようですが、もう時すでに遅しという状況でした。そして、旦那さんもクリニックに訪れて、そこでAさんの治療やカウンセリングの話を聞いて自分の不妊治療に対する無知を悔いたそうです。

PCO
結婚の時はこんな事を考えることは予想もつかなかったそうです。
クリニックでは旦那さんに聞いたそうです。なぜ、もっと早くAさんの希望通りにしてあげられなかったの?と。

旦那さんはその時、ちょうど大きなプロジェクトのリーダーを任されていて、会社として失敗が許されない状況だったそうです。Aさんには少し待ってもらって、うまくいけば頑張ろうと思っていたそうです。

でもAさんとしては35歳という区切りなので早く欲しいという気持ちが強かったのと、仕事が忙しいのはわかっているので、嘘でもいいから努力をする姿を見せて欲しかったそうです。最後は思いつめた上での決断でした。


次のページでは不妊治療と夫婦の形を考えます。