思春期だけではない! 20~30代の受診も多いニキビ
ニキビは、正式な医学用語では「尋常性ざ瘡(英語名はAcne)」、または「ざ瘡」と言います。こちらの記事内では親しみやすいと思うので「ニキビ」という呼び方を使います。ニキビといえば思春期に出るイメージをお持ちだと思いますが、大人になってからニキビに悩まされる人も少なくありません。クリニックを訪れる患者さんはむしろ20~30代の方が多いです。
ニキビの原因は大きく4つに分けられます。
1. ホルモンの作用による脂腺(毛穴の横にある皮脂を出す場所)の異常な増殖
2. アクネ菌(P. acnes)の毛穴での増殖
3. 毛穴における皮膚の異常な増殖と分化(分化とは皮膚の細胞の形態が表面にいくにつれ変化していく過程 )
4,炎症
思春期にニキビが増えるのは、1のホルモンの影響です。
自然治癒を待つのは危険? ニキビ跡に悩む前に知っておくべきこと
ニキビというとたいした病気ではなく、自然に治るのを待つ、もしくは市販薬で対応する、という方も多いと思います。ここで問題になるのは、ニキビを放っておいてしまい、長期間ニキビのある状態が続くと、「瘢痕」という皮膚にできる凹んだような跡が残ってしまうことです。よく頬がボコボコしていて目立つ方がいますが、これはほとんどの場合、若い頃のニキビの影響だと考えられます。また、「炎症後色素沈着」という、ニキビだけでなくヤケドや湿疹を起こしたあとにも起こる、皮膚が黒ずんでしまう現象も起こしがちです。特にクレーターのように凹んでしまった部分、逆に盛り上がってしまったケロイド状の傷痕は、後で治すことが非常に難しくなります。そのため、なるべく早めに治療し、ニキビを長引かせないことが大切です。炎症を起こして赤くなったニキビが長引くと、写真のように凹んだニキビ痕ができてしまう。写真はhttp://www.atlasdermatologico.com.brより使用。
また、早めに治療を開始すると同時に、塗り薬にせよ飲み薬にせよ、2週間以上、長めに薬を続けることが大切です。個人差はありますが、私の診療経験では、2~4週間続けて処方薬を使えば、ほとんどの方に効果を実感してもらえました。ニキビの薬は湿疹と異なり、2~3日で効果が出るというものではありません。すぐに治らないからといってやめてしまうのではなく、ニキビが治った自分の顔を想像し、モチベーションを保ちましょう。
ニキビに市販薬は効く?
市販薬もありますが、販売されている市販薬の成分を見ると、処方薬のほうがニキビに関しては圧倒的に治療効果が高いと考えられます。規制により、処方薬に含まれる有効な成分は市販薬では使うことができないからです。実際にドラッグストアで買った市販薬が効かないといって来られる患者さんを多く診察しましたが、処方薬に切り替えて見違えるように治ったケースを多く経験してきました。市販薬で自己治療したものの改善せず、皮膚科を受診する患者さんを多く経験してきました。ニキビは長引くと皮膚の凹みや黒ずみの原因になるので、早めに皮膚科を受診して治療しましょう。
2016年現在のニキビの最新治療法
ニキビ治療の基本は、ぬり薬です。2015年からベピオゲルとデュアックという2つの新しいぬり薬が処方薬に加わり、治療しやすくなりました。ベピオゲルもしくはディフェリンゲルのいずれか一剤、あるいはそれにダラシンなどの抗菌薬のぬり薬を加えて二剤を同時に使うのが基本です。ぬり薬による治療がニキビ対策の基本です。最近処方薬によるニキビ治療の選択肢は増えてきました。2~4週間ほど毎日塗ることで、効果を実感できることでしょう。
私が多くの患者さんを診療してきた経験では、治療に対する反応にはかなりの個人差があるようです。人によって最適な治療薬のコンビネーションが違うので、効果が上がらない場合にはいくつかの治療を試す必要があります。現在は多くの治療の選択肢があるので、ほとんどの場合には自分に合った治療を最終的に見つけることができます。信頼できる皮膚科の先生を見つけて、自分に合った治療法を探していきましょう。
ベピオゲルは過酸化ベンゾイルというアクネ菌を殺す作用がある薬で、アメリカでは市販薬として薬局で販売されています。私も最近ニキビができた時に使いましたが、効果は良好です。特に最初に少し刺激感がありますが、次第に慣れてきます。
デュアックはこのベピオゲルの成分をクリンダマイシンという抗菌薬と混合して、一回塗るだけで二種類のニキビ治療薬を使えるようにした優れものです。寝る前に毎日一回塗るだけで高い効果が期待できます。
ディフェリンは「レチノイド」というカテゴリーの薬で、美容のクリニックで自費処方されているトレチノインに類似した薬です。トレチノインはシワとシミの両者に効果があることが実証されていますが、ディフェリンにも同様の作用があります(研究のデータはトレチノインよりは少ない)。そのため、長く使うことで、ニキビの予防・治療とともに、肌の質も改善できるのです。
ニキビは抗菌薬のぬり薬で治療すると聞いたけれど?
日本ではダラシンとアクアチムという抗菌薬が以前から使用されてきましたし、ゼビアックスという抗菌薬もごく最近に認可されました。世界的に広く使われているのはダラシンですが、実は抗菌薬を単独で長期間使うことは皮膚科医の間では推奨されていません。耐性菌と言って、抗菌薬が効かないアクネ菌が出現してしまうからです。ベピオゲルやディフェリンゲルは刺激を強く感じてしまう人がいるため、医師としてダラシンを単独で処方することも度々あるのですが、できればベピオゲルやディフェリンと併用、もしくは最初から混合されたデュアックを使用することをオススメします。ぬり薬以外にはどんな治療がある?
ぬり薬で効きが悪い場合、ニキビの数が多い場合には、最初から飲み薬を同時に使うことがあります。ビブラマイシン、ミノマイシン、ルリッドといった抗菌薬の飲み薬がよく使われますが、これらは抗菌作用だけではなく炎症を抑える作用をもっていて、これがニキビに効きます。内服の抗菌薬が中等度以上のニキビにはよく使われますが、抗菌効果ではなくその炎症を抑える作用がニキビに効くとされています。
「ざ瘡」という病名で適応が通っているのがルリッドのため、この飲み薬がよく処方されますが、実際に世界的に推奨されているのはビブラマイシン(ドキシサイクリンという成分)の方です。ルリッドが効くケースも多いですが、ルリッドの効きが悪かったけれどもビブラマイシンに変えて症状が改善したという例を実際に診てきました。2~4週間ほど使っても効果が上がらない場合には、治療を切り替えましょう。なおミノマイシンもビブラマイシンに似た効果はありますが、副作用がより少ないビブラマイシンを使ったほうがよいです。
また、ニキビの特効薬と知られるのが、ビタミンA類似の飲み薬で、イソトレチノインやアキュテイン(Accutane)と呼ばれる飲み薬です。妊娠中や妊娠前に内服すると奇形を起こすリスクがあることもあり日本では認可されていませんが、海外では重症型ニキビに対する特効薬として使われています。
さらには、LEDライトによる赤や青の波長の光による治療、マイクロニードルという極小の針を刺して高周波を放つ治療など、機器を使った治療法に関しても研究成果によって有効性が示されてきていますし、自費診療のクリニックでは実際に使われています。
アメリカでは認可されているものの日本では未承認の薬もいくつかありますので、今後さらに処方薬が拡充されていくことでしょう。皮膚科のクリニックでは多数のいい処方薬がありますので、ニキビ痕を残さないためにも、早めに受診するようにしましょう。