死別後に起きる住宅の問題
生活の基盤となる家をめぐる問題はけっこう頻繁に起きる
特に仲むつまじい夫婦の場合、パートナーの突然の死は受け入れることができずに、立ち直るまでに時間もかかります。でも、涙が乾かないうちに、色々なことが起きてしまうのも事実なのです。今回は、生活の基盤である住宅に関する問題について実際のケースをもとにしてお伝えしたいと思います。
家を出て行くように訴えられた!
彼女は45歳、中学生と高校生の男の子を持つ平凡な主婦でした。ある日突然ご主人が会社で倒れ病院に搬送され、慌てて駆けつけるとすでに息を引き取っていました。突然のことに驚き悲しみ、どうして夫の体の変調に気づかなかったのかと自責の念に苦しみ、この先子供をどうやって育てていくのかという不安に押しつぶされそうになったといいます。でも、その後にも生活があるので、泣いてばかりいられないと思い仕事を見つけて働き始めた矢先、亡くなったご主人のご両親から今住んでいる家から出て行ってほしいという訴状が届きました。夫の両親は隣に住んでいるのですが、何の話し合いもないまま突然訴えられたのです。しかも、隣に住んでいることもあって仲良くしていたので、この訴えはショックとしかいいようがありません。
住宅と土地の名義人が違う!
彼女が住んでいる家は、亡き夫のご両親の庭(土地)に建てたものでした。住宅は夫の名義ですが、土地は夫の父親の名義です。法律的には家を建ててもよいという承諾はありましたが、賃料も払っていなかったそうですし、賃貸借契約も結んではいなかったそうです。この場合、契約は一代限りになるので、契約者が亡くなった後は消滅するという法律があります。そのため、親御さんの申し立てには、従わなくてはなりません。結局、こういった訴えもあり、それ以上その家に住んでいるのも気持ちの上で我慢ができなくなったので、彼女は家を出て新しい場所で生活を始めました。
亡き夫の両親は生活のため土地を売る
もう一つの例を紹介したいと思います。ご主人が65歳、奥様が61歳でとても素敵なご夫婦でしたが、旦那さんが突然亡くなるという不幸に見舞われました。心労も快復しないうちに、地方に住むご主人の弟から「あの土地を売りたい」と話がありました。その土地は旦那さんの父親の名義でした。将来は長男である亡くなった旦那さんに面倒を見てもらおうと思っていたそうです。でも、長男が亡くなった今、自分たちの面倒を見てもらえることもないと判断した結果、土地を売ったお金で老人ホームに入居することを考えているということでした。
この女性の場合、旦那さんの両親とあまりうまくいっていなかったこともあり、親御さんとの同居も拒んでいました。かなりすったもんだをしたのですが、結局は彼女の両親の助けを得てなんとか話がまとまったそうです。ちなみに、彼女の両親は資産家でもあるので、お金の援助を得て新しい生活を始めたのだと思います。
明確な契約が必要
今回紹介した二つの例からわかるように、土地と建物の名義人が違う場合には、明確な賃貸契約を結んでおく必要があります。特に土地が夫の親の名義になっている場合には要注意です。土地の名義人からすると息子が亡くなってしまったら、隣に住んでいるのは他人になります。孫がいたら当然かわいいのですが、自分たちの将来の問題が出てきてしまうので、土地を売ってまとまったお金を得ようと考えるのは当然です。そのときに強みを発揮するのが契約書なのです。家を建てるときには万が一のことは考えないかもしれませんが、万が一は起こりえます。お互いに嫌な想いをしないためにも、しっかりとした契約をしておきましょう。