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猫は貴重な研究パートナー? 猫にも多い2型糖尿病(2ページ目)

家族の一員としても愛されている猫の中には、2型糖尿病の発症率が普通のイエネコの4倍も高い血統があります。室内で飼い主と同じ環境で生活し、運動不足や肥満を共有しながら仲良く(?)2型糖尿病になる猫は、貴重な研究パートナーでもあります。意外にも似ている猫と人間の2型糖尿病についてご紹介します。

執筆者:河合 勝幸

ネコは糖尿病研究の貴重なパートナー

バーミーズ

バーミーズ

2型糖尿病の進行中に起こる病理学的、生理学的または生化学的変化を明らかにして、予防や治療に役立たせるためには動物実験が欠かせません。そのために遺伝形質を操作したり、同系交配を繰り返したネズミが利用されてきました。しかし、ネズミはいくら太らせても自然には2型糖尿病にはならないのです。

ところがネコはマンションの室の中で飼い主と同じ環境で生活して運動不足や肥満を共有しながら仲良く(?)2型糖尿病になり、合併症へと進みます。ネコの「時間」は同じように2型になる霊長類よりも速く進むので、発病から病期の進行、治療や予防法の研究、更に実験用のネズミでは真似できない、ある程度の年月をかけて悪化する合併症の研究までできる利点があります。また大きな実験モデルなので、小さなネズミより病状を診察するのも生理学的な研究をするのも容易で大いに役に立っています。

1回の出産で生れてくる6匹前後の遺伝情報が微妙に異なる仔ネコ達は、糖尿病の遺伝因子を研究する上でヒトではとても真似できない多くの情報を与えてくれます。また、ネコを太らせて耐糖能障害やインスリン抵抗性を調べる「前向き試験」も数多く発表されて私達の糖尿病理解に役立っています。肥満ネコは理想体重のネコに比べて3.9倍も2型糖尿病になりやすいという発表もありますし、ネコの体重が1kg増でインスリン感受性が30%低下したという論文もあります。

私達が2型糖尿病と診断される時は、いったん生じた高血糖状態によってインスリンの分泌不全と作用障害が更に悪循環を起しています。これを糖毒性と言いますがベータ細胞が壊われ始めて現われる症状です。しかしながらインスリン治療で血糖コントロールを改善すればインスリンから離脱できることがあります。これを寛解(かんかい)と表現しますが、ネコの糖尿病も治療が早ければ同じことが期待できます。もっといいことは、ネコでは尿糖が現われる血糖値240~270mg/dl以下に維持できればインスリン分泌が回復すると考えられているのです。この目標値ならインスリン治療の低血糖の不安から解放されると思います。尿糖検査はとても簡単だからです。一安心ですね!

今回は私達から見たネコの糖尿病の一端を紹介しました。ネコの糖尿病については、その体質的背景や治療法、血糖値の測定などお伝えしたいことがたくさんあります。機会をみてご紹介しましょう。

ペットの糖尿病、犬は1型糖尿病がほとんどです
All About 猫ガイド

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