2016年4月から始まる電力小売りの全面自由化を前にして、経済産業省による事前登録事業者数は210件(3月7日現在)にのぼり、審査中の99件を含めれば300社以上が小売電気事業への参入を計画しているようです。

すでに一部の事業者では1月4日から事前受付が始まっており、2月26日時点で27万4千件(電力広域的運営推進機関まとめ)の申し込みがあるようですが、これからさらに切り替えの動きが活発化していくことでしょう。

夜の一戸建て住宅

一般家庭を対象にした電力小売り自由化がいよいよ始まる

最も競争が激しくなる首都圏(東京電力管内)では、地域によって若干異なるものの、すでに概ね10社以上、20プラン以上から選べるようになっているほか、東北電力、中部電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力も「越境」して首都圏の市場へ参入する予定となっています。

その一方で、北海道、北陸、四国などは新規参入が少なく、沖縄はその特殊性(他地域からの送電ができないなど)から実質的に既存電力会社の独占状態が続くなど、地方によってかなりの温度差も生まれています。

ほとんどの人にとって電力会社の切り替えは初めての経験になります。電力の契約先を変更する場合に気をつけるべきことは何か、その主な注意点を確認しておくことにしましょう。


契約先の切り替えを急ぐ必要はない

「毎月の電気料金が安くなるなら少しでも早く切り替えたい」という気持ちは当然でしょうし、3月末までに事前申し込みをすれば「特典」を得られる事業者も少なくありません。しかし、長い目でみれば慌てずにじっくり選んだほうがよいケースが大半でしょう。

電力自由化は2016年4月1日にスタートしますが、必ずしもすべての「小売電気事業者」が4月に販売を始めるわけではありません。

しばらく経ってから参入を予定する事業者もあるほか、4月以降に新たな契約プランが発表されるケースも少なからずあるでしょう。「後出しジャンケン」的に、後から有利なプランが出てくる場合もありそうです。

いずれにしても「4月に契約先を切り替えなければならない」などといったことは一切なく、何も手続きをしなければ現在の契約がそのまま継続されるだけのことです。それによって特別な不利益を被るわけでもありません。


電力小売りの自由化で、電気料金が必ずしも安くなるわけではない

電力小売り全面自由化の目的の一つは、事業者同士の競争により電気料金の水準を引き下げることです。しかし、それによってすべての世帯で電気料金が安くなるとはかぎらないのです。

従来から節電を促す目的で、毎月の電気使用量が少ない世帯に対しては電気料金が割安になるように設定されています。それに対して、新規参入する「小売電気事業者」の主なターゲットは電気使用量の多い世帯であり、少ない世帯に対するフォローが十分だとはいえません。

また、これまで夜間電力プランやオール電化住宅プランなどによる割引サービスを受けていた世帯では、4月以降の新プランで割引幅が縮小されるケースもあるでしょう。

一定条件のもとでは、従来の契約プランを継続したほうが有利な場合も考えられます。しっかりと試算をすることは欠かせませんが、現契約を継続するのであれば何も手続きしなくてよいのです。4月以降に新規契約が中止される旧プランでも、既存契約者はそのまま継続が可能です。


切り替えの申し込みはWEBページ、電話、サービス窓口などで

電力会社の切り替え、あるいは同一電力会社内でのプラン変更申し込みは、各社のWEBサイトのほか、電話やサービス窓口、あるいは申し込み書類の郵送といった形で受け付けられます。手続きをするのは新しい契約先だけで足り、従来の契約先への届け出などは必要ありません。

手続き方法は「小売電気事業者」ごとにやや異なる部分もありますが、たいていはWEBサイト内に案内があるほか、電話での問い合わせに応じる場合もあります。事業者または販売代理店の営業窓口などへ行けば、分からないことも細かく教えてくれるでしょう。

申し込みにあたっては、従来の契約先電力会社における「お客さま番号」のほか、「供給地点特定番号」も必要です。「供給地点特定番号」は新たに付された22桁の固有番号で、2016年1月以降の検針票に記載されていますから、これを手元に用意しておきます。

また、WEBページから申し込む際には「重要事項説明」などと記載されたページに目を通し、その内容をしっかりと確認しておきます。とくに、契約期間や契約解除に関する規定には注意が欠かせません。

窓口などで手続きをして書面を渡された場合も、よく読んで確認しておくようにしましょう。


スマートメーターの設置は遅れ気味?

「小売電気事業者」への契約切り替えは、新電力計(スマートメーター)への交換が前提となるため、交換工事が必要な場合は申し込みから2週間程度かかり、すでにスマートメーターが設置されている場合は申し込みから4日程度で切り替えが完了するとされています。

「小売電気事業者」などへ契約の申し込みをすれば、スマートメーター交換工事の手配をしてくれますから、特段の手続きは必要ありません。

このとき、工事に関する連絡などをしてくるのは既存の電力会社(東京電力、中部電力、関西電力など)です。工事に関する問い合わせ先なども既存の電力会社となりますから、間違えないように注意しましょう。

しかし、自由化開始当初は工事が集中して切り替えが間に合わないケースも予想されるほか、切替日を「次回の検針日」まで待つように要請される場合もありそうです。

一部ではスマートメーターへの交換が終わらないままで契約先の変更に応じることもあるようですが、電気料金の請求をめぐって少し混乱が生じることがあるかもしれません。

なお、スマートメーターへの交換は原則として無料です。ただし、設置場所が特殊な場合などには、いくらかの工事費用がかかることもあるでしょう。

ちなみにスマートメーターとは、電気使用量を30分ごとに計測して使用状況の「見える化」を実現する機能を備えているほか、メーターそのものに通信機能を搭載していることが大きな特長です。これが設置されることで「小売電気事業者」が使用場所まで検針に行く必要がなくなり、電力小売りへの参入が可能となるのです。

スマートメーターの例

スマートメーターの通信機能で遠隔検針が可能になる



悪質な勧誘、強引な営業には十分な注意が必要

2016年1月から事前受付が始まったことに伴い、悪質な訪問販売などが増えているとして、経済産業省や国民生活センターが注意を呼びかけています。

電力会社を名乗りながら他の商品を販売した、携帯電話に関する契約のつもりが電気もセットになっていたなどの事例が挙げられていますが、4月以降は悪質な事例がさらに増えることもあるでしょう。

電気料金に関する虚偽の説明、付帯費用に関する説明不足、不要な商品のセット販売、不当な解約金設定や契約解除の申し出に対する嫌がらせなども懸念されています。

また、「◯◯と契約したら電気が不安定になったり止まったりするかもしれない」「すぐに契約しないと電気が止まる」などと嘘を並べて契約をせかす場合もありそうです。

訪問販売や電話勧誘によって「小売電気事業者」と契約した場合には、8日以内ならクーリングオフの対象となり無条件で解約することができます。また、契約トラブルなどが起きた場合は「消費者ホットライン(188)」で相談を受け付けることになっています。

しかし、インターネットなどの情報に接することのない高齢者世帯では、注意喚起が行き届かないことも多いでしょう。老親と離れて暮らしている人は、電話で注意を促しておくことが必要かもしれません。


関連記事

「電力小売りの全面自由化って何?」が分かる基礎知識
電力小売り全面自由化で、どの事業者をどう選ぶ?

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。