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災害時に身を守ってくれる住まい「防災住宅」最新事情(2ページ目)

災害に強い住まい、いわゆる「防災住宅」というと、一般的に大地震発生時でも倒壊などをしないという点で安心・安全な住まいとしてイメージされます。しかし、東日本大震災以降は、エネルギーの確保や食糧や水の確保により、日常住宅に近い暮らしができるようにする技術やアイデアが盛り込まれるようになってきました。東日本大震災から5年目の節目でもあるため、この記事では今一度、防災住宅に関する動きを整理、紹介します。

田中 直輝

執筆者:田中 直輝

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東日本大震災が私たちに突きつけたものは、災害時に地震や津波で住まいが失われるということのほか、エネルギーや水・食料などといった生活に欠かせないものが、手に入りづらくなるということでした。水・食料については後ほど触れ、最初にエネルギーの確保について、住まい分野でどのような取り組みがあったのか確認します。

災害時にエネルギーの確保ができるスマートハウス

まず、太陽光発電システム(以下、PV)の設置が震災以降、大きく増えました。これは「再生可能エネルギー固定買取制度」が設けられたのが最大の要因ですが、加えて災害時の電力確保も重要なポイントになりました。PVの設置だけでは発電電力の一部しか使えませんが、それでもテレビで情報を集めたり、お湯を沸かしたりできるため、震災当時、大変活躍しました。

V2H

V2Hにより住宅と電気自動車の間で電気のやりとりをしている様子。住宅の電気が足りない時は電気自動車から、電気自動車の電気が足りない際には住宅(PV)から電気を供給する(クリックすると拡大します)

PV発電電力をより活用できるようにしたのが、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)。その登場はその後に普及が始まった家庭用家庭用蓄電池や家庭用燃料電池などとの連携で特に威力を発揮し、大容量のPVと蓄電池を組み合わせることで、停電中も数日間、普段と同じレベルに近い生活を可能にしました。

現在は電気自動車やプラグインハイブリッド車と連携する新たなスタイル「V2H」(ヴィークル・ツゥ・ホーム)も確立。震災時にはガソリン不足となり移動が制限されました。住宅からクルマへ電力が供給されるシステムが出来上がったことで、エネルギー確保のみならず、この問題をある程度解消できるようになったわけです。

さて、スマートハウスに関する動向は、防災住宅のハードとソフトが混在したような分野です。以下ではソフトに限定してみていきます。これから住まいづくりをする方々には取り入れていただきたいと思います。

まず、エネルギーにからむところを考えてみましょう。「明るい住まい」にすることも、災害への備えとして重要です。明るい南向きのリビングにするほか、そうできない場合でも開口部を大きくする。そうすることで単純に採光のおかげで、電気をできるだけ使わずにすむようにできます。

「家族が集まりやすいリビング」とすることも同様です。家族が一箇所に集まれば電力消費が少なくなります。これらは普段の暮らしにも大いに貢献するはずです。

収納を工夫することも災害対策に役立つ

次に水や食料不足に関すること。「備蓄をしておくように」といわれますが、実はそれだけでは不十分です。というのも、蓄えていてもいつの間にか消費期限をオーバーしていて口にできない、備蓄したものがどこにあるか分からない、などということがあるからです。

収納

キッチンの横にこのようなストックスペースを設け、ここに大量の水や食料、備蓄品を収納しておき、減ったものを買い足すことで、いざという時に困らないようにすることも大切だ(クリックすると拡大します)

こうしたことを避けるには、収納の仕方を工夫することが有効。具体的には「ローリングストック」という収納のあり方があります。これは、回転(ローリング)させながら蓄えておくこと。多めに蓄えた備蓄品を日常的に食べ、新しいものを補充するというものです。

これを可能にするには、単に収納量を確保するだけでなく、日頃からどこにあるかわかりやすい場所、つまりキッチンの近くに大きな収納スペースがあった方がいいわけです。それでしたら、残りの分量がわかりやすいというメリットもあります。

また、カップ麺などは別として、災害保存食はどんな味であり、どんな食べ方があるのか普段は知らないことが多いと思います。例えば、幼児にどのように食べされたらいいかとか。そんなことに普段から慣れておく、といったこともローリングストックを通じて理解することができるはずです。

このほか、インテリアのトータルコーディネートも有効です。これは、一つひとつ独立した家具を用意するのではなく、作り付けにするということ。家具の転倒を防ぐことができるため、より安全な住まいになります。

要するに、間取りや収納の工夫することは、災害時にあってもできるだけ普段通りに生活することにつながるわけ。言葉を換えると、家庭用蓄電池など高額なハードを採用しなくても、やりようによっては誰にでも可能な災害への備えなのです。防災住宅のこのようなソフト面は事業者間で提案力にまだずいぶん差があるため、依頼先選びの材料ともなるはずです。
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