耐震・免震・制震という三つの地震対策
まず、災害に強い住まいづくりの基本について改めておさらいします。私たちが一番に考えなければいけないのが、「地震の揺れに対して安全」であることです。これについては、東日本大震災大震災以前から、ハードとしての対策は既に確立されていました。大きく「耐震」「免震」「制震」の大きく三つの技術があります。このうち「耐震」は1995年に発生した阪神淡路大震災以降に著しく進歩した技術で、これは地震の揺れに建物自体が耐えられるようにするものです。柱や梁に集成材と呼ばれる木材を使用するほか、それぞれを金具でしっかりと固定するなどということが行われるようになりました。
また、建物が基礎から浮き上がらないように強固に固定するためのアンカーボルトといったものも採用されるようになりました。これらは現在、新築住宅ではほぼ全ての建物に採用されている、最も基本的な地震対策です。
次に「免震」ですが、これは基礎と建物の間に、地震の揺れを伝えにくくする装置を設置するもので、種類としては油圧ダンパーを用いたもののほか、円形の皿のような鋼板の上に鋼球を組み合わせたものなどがあります。
問題点はコストが非常に高いことと、地盤や建物の形状の関係で設置できないケースがあることです。ただ、地震対策としては最も有効的な技術であるとされ、震度6程度の揺れを震度2~3程度に抑えられるため、家具などの転倒や飛散を防ぐことができ、人や財産を守るのに適しています。
最後に「制震」についてですが、これは地震の揺れによる建物のダメージを少なくするための技術です。木造軸組住宅でいう筋交いの代わりに、高減衰ゴムや油圧ダンパーなどといった素材を組み込んだ装置を1棟あたり二つほど取り付けます。建物自体には揺れの力は伝わるためそれなりに揺れを感じます。
メリットは設置コストが平均的な2階建て住宅1棟あたり50~100万円ほどと、免震(1棟300~400万円)と比べ安価であることで、大手ハウスメーカーなどでは標準採用しているケースもみられるようになっています。
火災と軟弱地盤への対策も重要
念のために申し上げておくと、「免震」と「制震」は「耐震」による基本構造があってこそ成り立つもの。個別に存在するものではないのです。違う表現をすると、地震で倒壊しないことが最も大切なわけです。制震装置の事例で、ミサワホームが木造軸組住宅向けに開発したもの。一般的な2階建て住宅なら建物の内壁に2ヵ所ほど取り付けられる。金属の構造部分の中に高減衰ゴムが取り付けられており、それが地震の揺れのエネルギーを熱に変換し、建物の変形を抑えダメージを吸収する(クリックすると拡大します)
後者では、主に耐火性の高い外装材(外壁材や屋根材など)を採用することが重要。近年では、これらの採用などがあり、都市の中心部でも木造住宅の3階建てや4階建てなどがずいぶんと建てられるようになりました。
このほか、地盤の補強も重要な要素。千葉県浦安市などで地盤の液状化による不同沈下が発生するなどしたことは記憶に新しいことです。ただ、これについては土地選びの段階で、しっかりと地盤の善し悪しを確認しておくことがまず大切になります。
このあたりは東日本大震災以前にもある程度、取り入れられていたことで、まさに「ハード」。それ以降に登場した「防災住宅」の技術としては「スマートハウス」があります。一般的に省エネ住宅というイメージがありますが、当初から災害時のエネルギー確保が大きな役割とみられてきました。
また、スマートハウスの登場あたりから、「ハード」+「ソフト」による災害への備えが住まいの中に積極的に導入されるようになってきました。次のページでご紹介します。