注文住宅/家づくりを始める前に・心構え・トレンド

家づくりは「プラスチック化した言葉」に騙されるな

週末に新聞折り込みに入ってくる住まいのチラシをみるといろいろな言葉がキャッチフレーズとなって書かれています。たとえば「光と風に満たされる家」「住まいはやがてハーモニーとなる」などです。しかし住宅分野にはこんなあいまいな言葉で表現していることが他にもたくさんある気がします。つまり言葉がプラスチック化しているのです。

佐川 旭

執筆者:佐川 旭

家を建てるガイド

具体的内容をイメージさせないキャッチフレーズ

週末に新聞折り込みに入ってくる住まいのチラシをみるといろいろな言葉がキャッチフレーズとなって書かれています。たとえば「光と風に満たされる家」「家をつくって無限の幸せをつかむ」「住まいはやがてハーモニーとなる」などです。

実のところ具体的な内容はそれ程ないと思います。又読む側も何となく書いてあるなといった程度でそれほど気にもしません。

しかし住宅分野にはこんなあいまいな言葉で表現していることが他にもたくさんある気がします。つまり言葉がプラスチック化しているのです。


プラスチック化している言葉とは

プラスチックワードとはドイツの言語学者ペルクゼンが提唱した概念で、意味があいまいなままに自由に形を変え、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉のことです。

つまりプラスチックでできたレゴはいろいろな形に組み合わせることができるが、中身は空っぽということです。

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すべてはお客様のために?

物を販売するメーカーはお客様のために新しい商品をつくり出したり、便利な機能を付けたり、又コストを下げたりします。物を売るためには当然でしょう。しかし医師、弁護士、建築士は単にお客様のためというひとつや二つの視点でとらえた解決策では、おそらくお客様を満足させられないでしょう。

なぜなら「なおす」「かいけつ」「つくる」にはお客様の生き方や考え方など人生の物語が背景にあって、背景にあるものを拾い集めて対話を重ねて解決していく職業だからです。

だから単に、その場だけで患者のため、相談者のため、施主のためと言うことはできません。どれだけ寄り添うことができるかが問われる職業でもあるのです。だから言葉を大切にしなければなりません。


施主が用意するもの、それは覚悟、そして信頼

よりよい住まいをつくるには、設計する人(建築家など)がどれだけ施主の想いに近づき、その想いや考え方を知って形にまとめるかです。その際建築家はこれまでの、そしてこれからの人生観を質問するかもしれません。

そんな時ただ単に部屋の広さやキッチンの形式、収納スペースの話しだけではレゴブロックを組み合わせた間取りしか生まれてきません。

つまり自分達家族がここに居を構えるという覚悟をもつことが大切です。それはその地域で生きる覚悟、夫婦として仲良くやっていく覚悟、家族と暮らす覚悟、そしてやがて子ども達の郷里になるという覚悟です。

覚悟とは危険なこと、不利なこと、困難なことを予想してそれを受け止める心構えをすることです。だからこそあいまいな言葉では受け止める心構えができないのです。これができれば信頼も生まれてくるはずです。


家づくりは物語ではなく「ものがたり」をつくること

一般に物語とは特定の事柄の一部始終を語ること、あるいは古くから語り伝えられた話をすることです。物語は英語でストーリーです。しかし海外では会話で物語を伝えることはストーリーではなく「ナラティブ」という単語が使われ、厳密に区別されています。これは医療の世界では使われていて、患者や家族がその経験について語る体験者自身の物語を話すことです。

家づくりはまさに物語(ストーリー)ではなくものがたられる(ナラティブ)家づくりをすることです。選んで手に入れた家は物語かも知れません。しかし自分の体験や想いを込めてつくりあげた家は、ものがたりをつくることだと言っていいのかも知れません。


家を建てるガイド 佐川 旭のメッセージ

医者と対談する機会があり「命といのち」の違いが話題になりました。「命」は生命体としての命、「いのち」はどういう生き方をしてきたのかものがたられるいのちです、と話されていました。

これは家づくりにも同じようなことが言えると思います。個人住宅は個人の価値観、つまり自分で体験したことをふまえ、その上でその人しか伝えられないことがあります。それを活かしてこそ満足度の高い家づくりができるのです。

しかし実際はまだまだ何となくわかったような言葉を並べてまとめていく、比較して優位性を組み合わせるなどプラスチック化している言葉にいつの間にか騙されているのです。施主自身も建築士と「腑に落ちる」言葉を重ね合わせることで自分らしい住まいが完成していくのだろうと思います。
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