ビギナー向けの外貨預金も投資である
外貨預金の注意点
よく投資ビギナーで勘違いするのは、外貨預金。銀行で取り扱っているうえに「預金」と名がついているため、気軽に始められると思いがちですが、れっきとした投資商品です。仕組みを理解していないと、「安全」だと思っていた外貨預金でソンをすることになりかねません。円預金のように、金融機関が破たんした場合の預金保険の対象ともなっていません。
ここ直近では円高傾向に加えて、日銀のマイナス金利政策によって、銀行の預貯金金利が低下。お金の預け先として、高金利キャンペーンを実施している「外貨定期預金」に注目が集まっています。しかし、外貨定期預金の金利キャンペーンの多くは、期間1カ月のみ、6カ月のみの高金利で、年換算をするとそれほど高い金利ではないことや、満期時の為替レートによってはソンが出ることも理解しておかなければなりません。
外貨預金の魅力は、日本の金利と外国の金利差によるインカムゲインと、為替差益によるキャピタルゲインの2つを狙える点にあります。しかし、現状は、米国で利上げがあったとはいえ、日米の金利差はそれほどありません。ひと昔前、高金利通貨として人気のあった豪ドルも、現在は2%を切っている状況です。さらに、為替差益についても、株価同様に現在は乱高下している状況で、投資のタイミングが難しく、満期のある「外貨定期預金」への投資は、一か八かの賭けと言っても過言ではありません。
外貨預金は預けるときも引き出すときも、為替手数料がかかる
日本円で銀行の定期預金をつくる際に、なんら手数料は発生しません。外貨定期預金は違います。まず円を外貨に換えて預けるので、その際に為替手数料がかかります。満期、解約で日本円に戻す際にも為替手数料がかかるのです。米ドルの外貨預金の場合、一般的には1米ドルにつき1円かかります(ネット銀行などでは手数料が安いところもあります)。米ドル以外の通貨では、2円、3円とかかる通貨もあります。単純に、金利がゼロで円ドルの為替が動かなかったとして、米ドルの外貨預金をすると、預けて、引き出すだけで2円ソンするのです。まずは、目先の金利ではなく、こうしたコストについて、よく理解しておきましょう。
金利が高くても為替コストをカバーできないことも
外貨預金をする際に大事なポイントは、金利や為替の変動によって、為替手数料のコストがカバーできるかどうかという点になります。日本円10万円を米ドルの外貨預金に以下の条件で預けたとします。
◆為替手数料 片道0.5円(往復1円)
◆金利 年1.0%(税引き後0.7968%)
◆1米ドル=114円(仲値)
◆1年後に為替レートに変動がなかったものとする
1)10万円を米ドルに交換
10万円÷114.5円=873.36米ドル
2)1年後の米ドルの受取利息
873.36米ドル×0.7968%=6.96米ドル
3)1年後の受取総額
873.36米ドル+6.96米ドル=880.32米ドル
4)米ドルを円に交換
880.32米ドル×113.5円=9万9916円
いかがでしょうか。為替手数料が一般よりも安い往復1円の場合で、金利も高めの年1.0%の設定だとしても、1年後に為替が同じだと、元本割れになるのです。現在よりもさらに円高が進めば、損失はさらに膨らみます。これが1円でも円安になれば、800円程度の利益となります。
金利と為替の損益分岐点を確認しておこう
では、金利がいくらで、為替レートがどうなるトクになるのでしょうか。損益分岐の考え方を理解しておきましょう。<基本の計算式>
投資した時点の為替レート÷将来の元利合計=損益分岐のレート
仮に、年利1.0%の米ドル預金(満期1年)に預けたとき、
投資時点の為替レート=114円
将来の元利合計=1.0%×0.7968=0.7968%(税引き後)
0.7968%×1年=0.7968%
つまり、1年後の元利合計は1.007968倍に
1年後の損益分岐レート=114円÷1.007968倍=114.9円
※この計算式では、為替手数料は考慮していない
114円の時に外貨定期預金に預けて、1年後に114.9円になっていればトントン。それ以上円高が進んでいれば元本割れということです。それぞれ為替レート、金利、投資期間を入れ替えれば、どの通貨でも、どの外貨商品でも損益分岐レートを計算できます。
外貨預金で特に注意が必要なのは、満期時点でしか解約できない、ということです。満期時点で損失が出ていたら、円に戻さず外貨普通預金に預ける、他の外貨商品に投資をするなど、お金の行く末も考えておくべきでしょう。
くれぐれも、目先の金利の高さだけにとらわれず、為替の動向にも注意をしてほしいものです。また外貨投資をするなら機動力のある「外貨普通預金」や「外貨MMF」を利用するなど、他の商品にも目を向けるべきでしょう。