ひじきには比較的にヒ素の濃度が高い
鉄製の鍋で調理することで鉄分補給に役立つのかも。
我が国では、伝統的に海藻類や魚介類を摂取する食習慣があるため、諸外国と比較して多くのヒ素を食事から摂取しています。ひじきを食べることで、健康上のリスク(危険性)について、厚生労働省では次のようにまとめています。
一方、WHOが1988年に定めた無機ヒ素のPTWI(暫定的耐容週間摂取量)は15μg/kg体重/週であり、体重50kgの人の場合、107μg/人/日(750μg/人/週)に相当します。FSAが調査した乾燥品を水戻ししたひじき中の無機ヒ素濃度は最大で22.7mg/kgでしたが、仮にこのひじきを摂食するとしても、毎日4.7g(一週間当たり33g)以上を継続的に摂取しない限り、ヒ素のPTWIを超えることはありません。
また食品安全委員会によれば、通常の食生活における摂取で健康に悪影響が生じたことを明確に示すデータは現在のところありません。ただし、「一部の日本人で無機ヒ素の摂取量が多い可能性があるため、特定の食品に偏らず、さまざまな食品をバランスよく食べることが重要」としています。
ひじきの無機ヒ素を低減する調理のポイント
農林水産省のサイトでは、干平成26年度に家庭内でひじきを調理するときに、無機ヒ素を減らすための有効な方法を調査しました。ひじきには、比較的高濃度のヒ素が含まれていますが、注意が必要なのは無機ヒ素です。無機ヒソは水に溶け出す性質があるので、「水戻し」で5割程度減り、乾燥ひじきを直接ゆでる「ゆで戻し」でも8割程度減ります。また、さらなる有効な方法として、水戻し後にさらにゆでる「ゆでこぼし」を行うと、9割程度まで減りました。
詳しい戻し方の方法は、「乾燥ひじきのヒ素を減らす調理法の調査結果」をごらんください。
その際に戻し汁は調理に使わないことが勧められています。また鉄分は、そのように戻しても7割以上残り、カルシウムはほとんど変わらず、食物繊維も8割以上残ることが示されています。こういう戻し方をすることで、鉄分はやや目減りするということもあります。
鉄分は意外に少なくなったということはありますが、カルシウムや食物繊維も含んでいますから、幅広い食品を食べる選択肢として、たまにお献立の副菜として適量食べる分には心配ないということでしょう。
日本食品標準成分表は、あくまで標準ですから、あなたの今目の前の食品がそのまま同じ栄養価であるとは限りません。どれくらい取れているか、バランスはどうなのか、ということの目安にするということです。
数字にばかりとらわれて、何か不足しているのではないかと、安易に健康食品などに頼ることは、別のリスクがあるかもしれません。多様なものをほどほどにいただく食事が、健康のためには基本的な、また大切なことだと思います。
参考/
・第3章 資料 藻類 日本食品標準成分表2015年版(七訂)(文部科学省)
・ヒジキ中のヒ素に関するQ&A(厚生労働省)
・食品中の ヒ素に関するQ&A(農林水産省)
・ヒジキに含まれるヒ素の低減に向けた取り組み(農林水産省)