食と健康

干しひじきは、思ったより鉄分が取れていないかも

2015年の12月末に日本食品標準成分表が改定され、ひじきの鉄分がこれまでと比べて減ってしまいました。最近は海の栄養が少ないためひじきが貧弱だから…というわけではなく、製法の変化が原因とのこと。また食べ合わせによって、食べているのに吸収されにくい状況もあります。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

干しひじきは鉄鍋かステンレスかで鉄分が10倍変わる

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ひじきは、鉄分が豊富な食品として知られていましたが、その製法によっては従来考えられていた量よりも少なくなることがわかりました。

2015年の12月末に、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」が文部科学省より公表されました。「日本食品標準成分表」は、健康を維持するための栄養指導や食事療法などを行う上で、日本で常用される食品の栄養価を可食部100gあたりで示したものです。
 
今回は、収載食品数が300食品増えています。日本の伝統食を代表する刺身や天ぷら、また健康志向を反映して、発芽玄米や五穀、あまに油などが加わっていますし、アレルギーに配慮して玄米粉や米粉パン、米粉麺に、中食利用が多いことから唐揚げやトンカツなどの調理済み食品も加わりました。
 
詳しくは、「日本食品標準成分表の改定について」お読みください。

今回の改定のなかでも特に話題になったのが「干しひじき」の鉄分含有量についてです。

これまで「干しひじき」は、鉄分が豊富なことで知られていました。その豊富さの秘密は製法にあり、原料となる藻を蒸し煮して乾燥させる際に、鉄の釜で長い時間加熱する過程で鉄分が含まれることが理由だと考えられています。

しかし、最近ではステンレス製の釜がよく利用されるため、両方の製造方法で鉄分が分析されることとなりました。

その結果、鉄釜の製品では干しひじき100グラム当たり鉄分が58.2mg、ステンレス釜では同6.2mgと、約10倍も異なりました。
 
昔の人も、鉄鍋で料理すると鉄が補うと経験的に伝えていましたが、こういう分析が公となることは少なく、大変興味深いことです。成分表はあくまで目安ですが、10倍にもなるということはやはり影響が大きいということです。今後は、干しひじきに、「鉄鍋製」を訴求する商品も出てくるかもしれません。

鉄分は食品の取り合わせでも吸収を影響される

国立健康栄養研究所の「健康食品の安全性・有効性情報」では、鉄分の吸収について次のようにまとめています。

食品に含まれる鉄の大部分は非ヘム鉄ですが、肉や魚のミオグロビンやヘモグロビンに由来する鉄はヘム鉄で、非ヘム鉄の2~3倍の吸収率を示します。非ヘム鉄は、ビタミンCにより吸収が促進されますが、加工されていない全粉穀物製品に含まれる「ふすま」やフィチン酸、お茶や野菜類に含まれるポリフェノールなどは非ヘム鉄の吸収を阻害します。

ヘム鉄は二価鉄、非ヘム鉄は三価鉄と呼ばれます。三価鉄はそのままでは吸収できないため、ビタミンCや酵素で二価鉄に還元されて吸収されます。ですから非ヘム鉄は、ビタミンCやクエン酸と一緒にとる、またヘム鉄・非ヘム鉄ともに動物性タンパク質と一緒にとると吸収率が上がります。

フィチン酸は、玄米などに含まれており、ポリフェノールと同様に抗酸化作用があると考えられています。またふすまは食物繊維が豊富。しかし、非ヘム鉄の方が、ヘム鉄以上に阻害されてしまうとみられています。

ふすまや玄米、ポリフェノールなど、どれも健康に役立つと話題になっているものばかりですが、こうした食品をせっせと積極的に摂ることで、実は鉄分の吸収を阻害していたということがあるかもしれないのです。

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