受験勉強のほんとうの意味
私は会社経営を30年経験し、過去に新入社員の採用、面接、育成もしてきました。毎日のように報告、提案を受けメールをして、礼状も書き、事業計画書も作り、決算書をみて時に原稿文を作って人前でスピーチもします。その時にいつも痛感するのが「あ~学生時代にもっとしっかり勉強しておけばよかったなぁ」です。子どもの受験勉強(特に頭が柔らかい中学時代)の学習は、希望の高校、大学に入学するのだけが目的でなくて、もっと先の自分の人生を謳歌するために必要な準備が詰まっています。
受験勉強は、いろいろ役に立っている
例えば、礼状を書く時や企画書を作る時には、国語の文章校正力と、読解力、理解力、漢字力は必要不可欠です。また仕事上、敬語と丁寧語の使い分けも重要です。将来、英語を話す仕事がしたいと思ったら、中学英語の文法と3000語程度の基本的な単語を習得することで、誰でも日常英語はできます。私も中学の時に暗記した英語の文法と単語のおかげで、海外で日常会話しています。現代の国際社会での活躍や海外旅行などでも大きく役立つでしょう。
また数学の足し算、掛け算以外にも、簡単な方程式やグラフ、座標の分析方法などは、仕事の実績データーを見る上で役に立ちます。社会の日本史も、商談の会話が盛り上がるきっかけになったり、地理は仕事の出張時に役に立ったりします。公民も(業種によって)意外と役立ちます。
社会人になるとわかりますが、営業マンもエンジニアも受験の5教科は知らず知らずに活用しているのです。
社会人に必要な5つの力
社会人になって役立受験勉強
理由は、この2つの力がないと仕事の成果が出にくいからで、受験勉強ではとにかく、この2つが強化されるのです。だから必然的に学歴社会になったのかもしれません。
それでは、5つの力を簡単に紹介しましょう。
1.認識力
人の話、提案、メール、電話の内容などから相手の希望や言い分を正しく認識する力。これができないと何事も前に進みません。認識する力はすべての物ごとの始まりでとても重要です。
2.記憶力
たくさんある情報を認識した後、そこから今の自分に必要なものだけを記憶する力。これは人間づきあいの基本の信頼を作ります。例えば自分が話した内容や自分がした約束を忘れたら誰も相手にしてくれません。記憶力は実はとても大切です。
3.判断力
人は、日々たくさんある情報から必要な事を認識してそれを一旦記憶します。その記憶の中から取捨選択して今の自分に必要なものだけを処理する能力が判断力です。
重要だがすぐしなくていいものもあれば、重要でないがすぐしないといけないものもあります。来月までの報告書は今すぐ始めなくてもいいですが、カップラーメンにお湯を注いだなら3分後に食べないと(何日も置くと)悲劇になります。
4.行動力
必要なものを判断してそれを実際に行動に移す力。これは社会人では必要です。例えば上司から仕事を指示された場合、正しく認識して自分なりの記憶力を使い(手帳に書くなど)、最良の方法を判断して計画をたてて行動、遂行する力こそ実践力として評価されます。
5.達成力
社会人は結果を求められます。その仕事を目的に達成するまで完遂できる力は重要です。「できる人」「成功者」とは、得たい結果を出せる人です。
仕事が多様化する中で今の社会は、学歴社会から学力、人間力社会になっています。しかしそれでも、この認識力と記憶力は最低条件です。受験では、認識力は、設問の意味を正しく理解できているかどうかで、記憶力は数学や物理の計算以外で試されるのです。(公式を覚えるのにも記憶力が必要ですが……)
私の知り合いで標準的なレベルの高校出身でも飲食店で自分の才能を活かしている成功者もいたら、誰もが羨ましがる高学歴の大学卒なのに、あるとき自己嫌悪になって自信を無くしている人もいます。
だから、いかにいい高校・いい大学に行くかだけでなく、大学を卒業した22歳前後から80歳までの60年近くを自分らしく充実して生き抜くのための大切な準備と考えてください。
5教科すべてが将来、活かせる最高の武器
認識力、記憶力が役立つ
将来の仕事が、会社勤めであれ、公務員であれ、フリーランスであれ、最低限の数学と英語、これに理科や社会で学んだ情報を無意識にミックスして使えると大きな武器になります。
文章を書く、読む、話す、聴く、など国語力は仕事にとって基本中の基本。受験勉強期間はたった1年ですが、それを使える期間は一生ものだと、子どもに自分の経験談を踏まえて話をしてあげてください。