日経平均が下がっても決して割安とは言えない理由
3年続いたアベノミクス相場ですが、円安が継続しなければ、このまま終了する可能性があります
ところで、2015年12月には2万円を付けていた日経平均が1万6000円前後まで下落してきたところで値頃感も出てくる頃です。しかし、現時点では決して割安と日経平均を見ることはできないと思います。どうしてかというと、為替が円高に動いていることで、日経平均の2016年3月期や2017年3月期以降の予想利益は切り下がり続けているためです。全般に言えば、2015年7-9月期までは前年同期比で円安に動いていたので、それだけで輸出企業の利益は拡大していました。同じものを同じ値段(ドル建て値)で売るだけで利益が増えていたのです。しかし2015年10-12月期はまだ前年同期比で若干の円安ですが、ほぼ為替メリットはなくなります。そして、2015年1-3月には既に1ドル=120円前後で為替が推移していたことから考えると、仮に2016年1-3月期が116円台の為替水準で推移すれば、為替は逆に減益に作用するようになります。つまり、ここまで企業業績は拡大基調となっていたわけですが、為替の方向性が変わったことで状況が一変してしまったわけです。
円安が続かなければ3年続いたアベノミクス相場は終了
これを防ぐ目的もあって、1月末に日銀はマイナス金利の導入を発表したわけですが、すぐに発表前の円高水準に戻ってしまいました(マイナス金利導入の効果がすぐに消えてしまった理由は日銀バズーカ不発!理由は?をご参照下さい)、マイナス金利導入発表前日の日経平均が1万7041円であり、2月5日のCME日経平均先物が1万6,565円まで下がった事を踏まえると、株価的にも、1月29日の日銀はマイナス金利の導入効果は消えたものとなりました。過去に日銀が量的緩和政策や追加緩和を行った際には半年、1年と効果が持続しましたが、今回の限定的なマイナス金利導入策は非常に中途半端となった模様です。これまでのところ、マイナス金利導入発表がもたらしたものは、日本の長期金利を0.2%から0.02%に10分の1へ押しやり、銀行株と保険株を収益悪化懸念から大幅に下げてしまったことぐらいです。何より「日銀出動でも(株価対策に)効かなかった」という心理的な落胆は今後の市場心理に効き続けると思います。
相場の長期的な趨勢はチャート的にも、また、業績見通し(為替の動向)的にも下落トレンドに入り込んでいると思います。外部環境的にも、ドルインデックスが急激に下がり、米国の長期金利は急低下しており、米国の利上げはこのまま継続されないのではないか?という懸念を市場は急速に織り込んできているように見えます。当然ながら米国の利上げが行われなければそれを見込んで進んでいたドル高が修正され、これは円高ドル安につながります。
むろん、米国の利上げの中止が示唆されれば、2008年春頃に見られたような3ヶ月程度にわたる、世界的に急激な株価反発も期待できると思われ、そこまでたどり着ければ、リスク志向によって一時的に円安傾向が復活し、日経平均も反発する可能性があります。しかし、最終的に、円安に傾ける中央銀行のアクションなどが起こらなければ、その急反発も2009年春同様に、50日移動平均線や200日移動平均線などではじき返されて再び下落トレンドに向かい、3年続いたアベノミクスという長期上昇トレンドは、終焉したことになります。もっとも、過去のように100円を割るような円高に向かっていくことも考えにくいので、下落する余地も限られると現時点では考えますが、世界的に長期的なリスクオフ志向が鮮明になれば、一時的に予想以上の下落となる可能性もあるので注意が必要です。
参考:日本株通信
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