スイス

世界一急な勾配の登山電車も! スイスの面白乗り物4選

世界一急勾配の登山電車、世界初の回るロープウェイ、世界初の2階建てオープンデッキ付きロープウェイなど、スイス中央部、ルツェルン周辺には面白い乗り物がたくさんあります。旅の土産話にも最適!

和田 憲明

執筆者:和田 憲明

スイスガイド

スリル満点! 世界一急勾配の登山電車(ピラトゥス山)

ピラトゥス登山電車

麓駅と山頂駅の間を登り30分、下り40分で結ぶピラトゥスの登山電車 Photo:Switzerland Tourism/Robert Boesch


ピラトゥス山頂へのロープウェイ

山頂駅からアルプスと湖のパノラマが広がる Photo:Pilatus-Bahnen/Urs Wyss

ルツェルンの背後にある山、ピラトゥスは、世界一急勾配の登山電車で有名です。麓駅のアルプナッハシュタートから山頂駅まで、最大勾配48%の急斜面を這い上がるように登り、満点のスリルを味わうことができます。なお、48%とは、100m進む間に48m上がることを意味します。

登山電車では2本のレールの間にもう1本歯状のレールを加え、落下しないよう車両に絡ませて登っていきます。この登山電車が開通したのは1889年。ロッハーという人物が、レールの歯型に独自の工夫を加えて急勾配を克服。ついに山頂駅まで開通させました。通常の2本のレールの場合、100m進む間に頑張っても7m程度なので、いかに3本目のレールの役割が重要かがわかります。

急斜面を避けるため、最初は斜度がより緩やかな迂回ルートで計画されました。しかし今の倍の距離になる関係で予算が大幅に膨らみ、断念。そこで麓から山頂まで直通のルートに変更されたのですが、当時はこの奇想天外なロッハーの構想を誰もが一笑に付したそうです。

登山電車が開通するまでは、山頂に上がるには屈強な男二人に神輿のような乗り物を担いで運んでもらうか、ラバに乗って上がるしか方法がありませんでした。しかし今は登山電車のおかげで、誰もが手軽に山頂まで上がることができます。

山頂からスイス中央部の雪に抱かれたアルプスの峰々が続き、反対側は遠くドイツの黒い森まで見渡すことができます。登山電車が通る反対の斜面からゴンドラとロープウェイを乗り継いで山頂に上がることもできるので、ルツェルンを拠点にぐるりと周遊するのがおすすめ。山頂には2軒の山岳ホテルやレストランもあります。


ロープウェイが回る!? 世界初の回転ロープウェイ (ティトリス)

ティトリス・ロッテール

ルツェルンからユングフラウ地方への移動の途中に立ち寄るのも良い

中央スイス地方の最高峰、ティトリス山(3239m)は世界初の回転ロープウェイで有名です。麓の村エンゲルベルグから、まずゴンドラに乗って中間駅シュタントへ。そこからティトリスの山頂駅までが回転ロープウェイの区間です。キャビン自体がぐるりと回りながら上がるので、乗客は同じ場所に立ったまま360度の景観を楽しむことができます。

回転と言ってもオープン当時はロープウェイの床が回るだけでしたが、2015年に新型のキャビンに付け替わり、キャビン全体が回るようになりました。エンゲルベルグ(麓駅)からシュタント(中間駅)までのゴンドラも新しくなり、今まで30分かかっていた所要時間も16分と大幅に短縮されました。

エンゲルベルグ

ティトリス山の麓、エンゲルベルグはドイツ語で「天使の山」の意味

この回転ロープウェイが世界で初めて導入されたのは1992年。当時としては想像もつかない画期的な乗り物として人気を集めました。ルツェルンから麓駅があるエンゲルベルグまで列車で1時間とアクセスも良く、今ではアジア各国を含めて世界中からの観光客で賑わいます。山頂ではスイス中央部の壮大な山岳景観を楽しんだ後、スノーチューブなど使って雪遊びを楽しむことができます。



ロープウェイの屋根に乗る!? 世界初、オープンデッキのロープウェイ「カブリオ」(シュタンザーホルン)

カブリオ

上層と下層の間を2本のケーブルで挟んでキャビンを支える


カブリオ

「カブリオ」はオープンカーで有名な「カブリオレ」と「ケーブル」に由来

シュタンザーホルンは、ルツェルンから手軽に行ける山として地元の人にも人気です。そしてこの山頂に上がるロープウェイは、なんとオープンデッキ付き。その名を「カブリオ」と呼びます。車のオープンカーならぬ、「オープン・ロープウェイ」というわけですが、スイスの製造会社が極秘で開発したそうです。

キャビンは2階建てで、1階は屋根と窓付きの60人乗り。階段で2階に上がると30人乗りのオープンデッキです。2階の乗客は屋根の上に乘ったような状態で上り下りしながら、360度の景観と新鮮な空気を味わうことができます。

完成は2010年。オープンデッキ付きのロープウェイは世界初ということで当時はスイスでも大いに話題になり、記念切手も発行されました。眼下に広がる緑の牧草と青い湖を眺めながら、珍しい体験をすることができます。

アクセスはまずルツェルンから列車でシュタンスへ。そこからケーブルカーに乗り換えて中間駅のケルティへ。そして最後がシュタンザーホルン山頂駅までのロープウェイ「カブリオ」の区間です。シュタンザーホルンの標高は1900m。山頂にはレストランがあり、スイス中央部の山と湖の景観を楽しみながらランチをとることができます。

断崖絶壁をエレベーターで昇る!?(ビュルゲンシュトック)

ハメットシュヴァントのリフト

ビュルゲンシュトックにはソフィア・ローレンの別荘もあった Photo:Switzerland Tourism/Lucia Degonda


ルツェルン湖畔の隠れ家的リゾート、ビュルゲンシュトック。ルツェルン湖畔の断崖の上にホテルが2軒あるだけの、プライベート感を満喫できる場所です。ここにはオードリー・ヘップバーンが結婚式を挙げた小さなチャペルもあります。

ビュルゲンシュトックへのアクセスは、ルツェルンからタクシー、シュタンスシュタートからバスなど複数の方法がありますが、知る人ぞ知る乗り物がエレベーター! 地元では「ハメットシュヴァントのリフト」と呼ばれています。ルツェルンから船で湖を渡り、エレベーターで断崖絶壁を登ります。なお、エレベーターは冬期の間は運休となります。

ハメットシュヴァントリフト

ルツェルン湖岸の断崖をエレベーターで結ぶ発想が面白い

屋外のエレベーターとしては、ヨーロッパで一番高い地点まで上がります。標高差は152.8m。30階から40階建てのビルに相当する高さを、わずか1分足らずで運んでくれます。

アクセスはルツェルンから湖船でケールジッテン・ビュルゲンシュトックへ(所要約45分)。そこから湖岸沿いの散策道を徒歩約25分で乗場へと到着。エレベーターで上がると、ルツェルン湖とアルプスの壮大な景観が広がります。

ビュルゲンシュトックは現在も数年に渡る再開発の最中ですが、2016年時点で既に2つのホテルがオープンしています。ルツェルンからの湖船は冬期運休。本数は一日2~3便と少ないので時刻表をチェックの上、計画を立てましょう。



※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。

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